旭川近郊のアイヌ文化にスポットを当てる 日本で最も古いアイヌの資料館

2018年6月2日 11:00更新

北海道ウォーカー 市村雅代

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2016年で開館から100年を迎えた旭川の「川村カ子ト(かねと)アイヌ記念館」。開館当時は自分たちの文化を保護し、正しく知ってもらうことが大きな目的でした。現在も、その目的は変わらずありますが、記念館の役割は少しずつ変化。アイヌ文化が過去のものではなく、現代にも息づくものであるとわかるよう、近代以降の作品を増やしイベントも行っています。

この記念館を大正時代に作ったのは川村イタキシロマ氏。人格的にとても優れた人物で旭川エリアのアイヌ集落の長でした。地域に和人が多く住むようになりアイヌの集落を見学に訪れる人が増えたこと、そしてアイヌの子どもたちが偏見にさらされることが増えたためにアイヌの文化を正しく伝えられる施設を、と「アイヌ文化博物館」を開館しました。

その後、優秀な国鉄の測量技手だった息子のカ子ト氏(1893~1977年)が退職後に引き継ぎ、現在の名前に改称されました。現在はカ子ト氏の息子の兼一さんが館長を務めています。こうした私設の記念館は珍しく、特に地域と密着した活動に力を入れています。

外観は木彫家、砂澤ビッキ氏のデザインによるもの。カ子ト氏の測量関係の展示もあり

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館内では「アイヌがどう暮らしてきたのか」がわかるよう、儀式の際に使う道具や民具が並んでいます。

使われていた様子がわかる写真や説明イラストとともに民具を展示

1985年に行われたイヨマンテの写真とともに祭壇を再現

殺人などを犯した者に刑罰を与える際に使用した棒、ストゥ

しかし、「昔のものばかりでなく、現代の展示も少しずつ増やしているんです」と副館長の川村久恵さんは言います。木彫家の砂澤ビッキ氏(1931~1989年)の作品が並び、2017年の夏には旭川で木彫り熊を広めた松井梅太郎氏にちなんだ木彫り熊の展示も行いました。「こうしたイベントを行うことで新たな情報が入ってきたりするんです」と川村さんは言います。夏のイベントの際には新たに木彫り熊が持ち込まれたそう。2mほどの大きな壁かけが寄付されたこともありました。

旭川市出身の砂澤ビッキ氏の作品が並んだコーナー。アイヌ文様を発展させたオリジナルのデザインに注目

「アイヌ神謡集を出版した知里幸恵(ちりゆきえ)さんも旭川に住んでいたことがありましたが、『人』に焦点を当てた展示ももっとしていきたいと思っています。その人物が何をし、その結果、現在何が残っているのか。そういったことを次の世代に伝えていけたらと思っています」と川村さんは今後の同館の運営を思い描いています。

屋外にはササで作られたチセ(家)の展示もあります。その周囲には旭川在来種でアイヌにとっての有用植物約80種が植えられています。「旭川にこだわった見せ方を今後も考えていきたい」と川村さんは話します。

敷地内にあるササで作られたチセ。敷地には緑が多く、アオサギやハヤブサなどの野鳥を見かけることもあるとか

川村さんはアイヌ伝統歌の女性ヴォーカルグループ「マレウレウ」のメンバーでもあり、地元ではアイヌ語講座の講師も務めています。「今後はカフェを敷地内に作りたいんです。アイヌ料理に限らず、その調理法を生かした料理などを出せればと思っています」。地域のアイヌ文化の保全と伝承という開館時の目的はそのままに、時代に合わせた取り組みを行っています。

アイヌの文化を次世代に伝えるため、同館の副館長を務めながら様々な活動をしている川村久恵さん

川村カ子トアイヌ記念館 ■住所:旭川市北門町11丁目 ■電話:0166・51・2461 ■時間:9:00~17:00(7,8月は~18:00) ■料金:大人500円 中高生400円 小学生300円 ■休み:なし 

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