スピルバーグが放つ”アトラクション”ムービー。VRワールドが本格映像化!!<連載/ウワサの映画 Vol.28>
東海ウォーカー
スティーブン・スピルバーグ監督…。当たり前のように第一線をひた走る映画の申し子だけに、もはや空気のような存在ですが(笑)、最新作「レディ・プレイヤー1」で改めてその偉大さをかみしめることに。VR(ヴァーチャル・リアリティ)世界と現実世界をインターカットしまくり、アニメやゲーム、映画に音楽などなど、現代に刺激を与え続ける1980年代カルチャーをアトラクション的に網羅した本作。社会派ドラマ「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」と並行して、こんな革命的SFを作っていたとは! 新しさと懐かしさが共存する、本格的に映像化されたVRワールドが想像以上にアツかった!

舞台は2045 年。人々が暮らす街は荒廃が進み、若者たちの希望はバーチャル世界〈オアシス〉のみ。そこでは、誰もが何にでもなれ、理想の人生を楽しめるのです。ある日、オアシスの創設者ジェームズ・ハリデーが亡くなり、彼の遺言が配信されます。“全世界に告ぐ。オアシスに眠る3つの謎を解いた者に全財産56兆円と、この世界のすべてを授けよう”…。プレイヤーたちの壮大な争奪戦が始まる中、オアシスが唯一の居場所である17 歳のウェイド(タイ・シェリダン)も参戦。やがて、オアシスで出会った仲間&謎めいた美女アルテミスと協力し勝ち残ろうと奮戦するウェイドの前に、世界支配をもくろむ巨大企業・IOI 社が立ちはだかり…。というお話。

デジタル・ユニバース〈オアシス〉に、今すぐ飛びたいっ! 実写からコンピューター・アニメまで多彩な最先端テクノロジーにより視覚化されたVR空間は、大好きなヒーローの姿にもなれちゃったりで、もうお祭り騒ぎ。そのセットは100%バーチャルのため、スピルバーグは自分のアバターを作ってセット内を歩き回り、最適な撮影方法を見極めたとのこと。VR上のキャラもわざわざモーションキャプチャーで表現するなど、リアリティへの執念がすさまじい!

2045年の設定ですが、オアシスを彩るのは創設者が謳歌した1980年代のあれこれ。よって、若者の間でも80'sカルチャーが根付いており(実際の若者がポカンとならないことを祈ります)、有名ネタがビッシリ。オアシスでいきなり登場する主人公の愛車は、…私の生涯ベスト1映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンではないかーっ⁉ 効果音まで採用とは、たまらん!(ちなみに「バック~」はスピルバーグ製作)。「シャイニング」ネタの恐怖ステージなんかもあり、スピルバーグの初期のホラーを思い出してすっかりお気に入りに。「機動戦士ガンダム」やら「AKIRA」やら、日本人歓喜のネタもモリモリですよ。 森崎ウィンくんが「オレはガンダムで行く!」(日本語で言う)と張り切ってます! あー、一時停止してアイテムをひとつひとつ確認したい。

私は全ネタをカバーできるほどオタクでもないので…、その分、ドラマのよさが堪能できました。貧困や過密人口により絶望感しかない現実から、好みのアバターを通して違う人生へと逃避する…。他者とのリアルなかかわりの希薄さも含め、現在の延長です。理想の自分になれるというオアシスの醍醐味の中で、主人公を現実の自分と向き合わせる物語が濃密。加えて、謎解きのスリルやゲームの興奮にも、退廃的背景なのに愛が満ちている。目を奪う派手なテクノロジーに頼るのではなく、登場人物とドラマで引っ張り普遍的なメッセージを伝える構成は、まさにスピルバーグ様式。

ちょっと(かなり?)盛ったバーチャル・アイデンティティでVR世界にログインし、複雑化した人間関係を楽しんでいるのかな、27年後には。SNSでその前段階にいる我々にとっては夢物語ではありませんね。でもでも、ゴーグルを装着した人々が街中にあふれ、空を切ってうごめいている光景はあまりに異様。「ゾンビ~!」と引いちゃう私は、時代に適応できない予感大で心配…。あっ!それ以前に、アクセス権や装備代やらで借金地獄を仕組まれるオアシスには、”貧乏人は気軽に遊べない問題”があったんだ。VR世界にも格差問題~(泣)。【東海ウォーカー】
【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは「いぬやしき」(4月20日公開)の木梨憲武!
おおまえ
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