韓国を代表する世界的ヒットメーカー、ヨン・サンホ監督の新作『顔 -かお-』の見どころを紹介。40年前に亡くなった女性の死を巡る衝撃のサスペンスミステリー作品!

東京ウォーカー(全国版)

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2026年8月28日より公開された『顔 -かお-』は、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督の最新作。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。

映画『顔 -かお-』のメイン写真(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


【ストーリー】
韓国で最も美しい判子を刻む盲目の篆刻家(てんこくか)イム・ヨンギュ(クォン・ヘヒョ)。息子ドンファン(パク・ジョンミン)にとって、父・ヨンギュは“奇跡そのもの”だった。

だがある日、40年前に失踪した母・ヨンヒの白骨遺体が発見される。しかも、それは“殺人”の可能性を秘めていた。顔さえ知らぬ母の死の真相を探るため、ドンファンは彼女を知る人々の証言を辿っていく。だが、語られるのは、「化け物のように醜い顔をしていた」という異様な言葉ばかり。

折しもドキュメンタリー番組を制作するため、ヨンギュへの密着取材を行っていたやり手のプロデューサー、スジン(ハン・ジヒョン)は、ヨンヒの謎めいた素性とその死因に興味を抱き、ドンファンに真相究明の調査を持ちかける。

二人は、1970年代にヨンヒ(シン・ヒョンビン)が勤めていたソウル・清渓川の縫製工場でヨンヒの同僚だった男女3人に会いに行くのだった。

【写真】美しい判子を刻む盲目の篆刻家イム・ヨンギュ(写真右クォン・ヘヒョ)と息子のドンファン(同左パク・ジョンミン)(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


人気俳優パク・ジョンミンが一人二役でサスペンスミステリーに挑む!

本作を手がけたのは、大ヒット映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2017年)やNetflixのオリジナル・シリーズ『地獄が呼んでいる』シリーズ(2021、2024年)、『寄生獣 -ザ・グレイ-』(2024年)などを世に送り出し、今や韓国のコンテンツ産業を牽引するヒットメーカーの一人として注目を集めるヨン・サンホ監督。

2018年に発表した自身初のグラフィックノベルを映画化した本作は、2025年の第50回トロント国際映画祭「スペシャル・プレゼンテーション」部門におけるワールドプレミアで大反響を巻き起こし、韓国を代表する映画賞の青龍賞では作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞など10部門のノミネートを果たした。

イム・ヨンギュの息子で、母の死をきっかけに真実を追い始めるドンファンと、視覚障がいを抱えながらも、判子を彫って誠実に生きる若き日のイム・ヨンギュの一人二役を演じたのは、パク・チャヌクやリュ・スンワンら名匠に起用され続け、ヨン・サンホ監督とは本作で3度目のタッグとなるパク・ジョンミン。

彼の出演映画で特に好きなのは、ヒョンビン演じるアン・ジュングン(安重根)とともにハルビンへ向かう深い信頼で結ばれた同志ウ・ドクスン(禹德淳:実在の人物)を演じた『ハルビン』(2024年)と、チンピラ役を演じた『密輸 1970』(2023年)、そして反抗的な少年を演じ、マ・ドンソクと共演した『スタートアップ!』(2019年)だ。

パク・ジョンミンがこの3作品で演じたのは脇役ではあるが、画面に登場した瞬間から目が離せなくなるような不思議な存在感で、観客をスッと物語に引き込む力を持っている。

彼は俳優として活躍するだけでなく、ムジェ(MUZE)という出版社を運営しており、2025年には、東京・神保町で開催された「K-BOOKフェスティバル」に参加していた。出版社を立ち上げるほど本が好きなところも、パク・ジョンミンの大きな魅力と言える。


ヨン・サンホ監督の『サイコキネシス -念力-』(日本未公開)や『地獄が呼んでいる』に出演しているパク・ジョンミンは、監督からのオファーを即快諾。さらに、父親の若かりしころの役は、自ら「演じたい」と申し出て、一人二役を演じることになったという。

判子を彫って生計を立てる若き日のイム・ヨンギュを演じるために、実際に判子を販売する店を訪れ、篆刻の技術まで習得して役作りをするという徹底ぶり。クランクイン後は、白濁した特殊レンズを装着し、かつらを被って役に挑んでいる。また、撮影現場では、習得した技術を生かして監督や共演者らの名前入りの判子を作り、プレゼントしたというほっこりエピソードも。

イム・ヨンギュの強さと弱さ、心の揺れを、パク・ジョンミンは丁寧に体現している。

判子を彫って生計を立てる若き日のイム・ヨンギュ(パク・ジョンミン)(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


ほかキャストには、現在のイム・ヨンギュを、インディペンデントから商業映画、ドラマや舞台まで幅広く活躍するクォン・ヘヒョ、40年前に突然姿を消したイム・ヨンギュの妻チョン・ヨンヒをドラマ『賢い医師生活』(2020年)や『財閥家の末息子』(2022年)などでリアリティある演技を見せてきたシン・ヒョンビン、評判の良い縫製工場の社長ペク・チュサンを『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(2022年)で注目を集めたイム・ソンジェ、チョン・ヨンヒの死の真相を探り始めるドキュメンタリー番組のプロデューサー、キム・スジンを『ペントハウス』シリーズ(2020〜2021年)で注目を集め、『チアアップ』(2022年)、『FACE ME フェイス・ミー』(2024年)などで活躍するハン・ジヒョンが演じている。

(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


ルッキズムの醜悪さが生み出した悲劇、“心の醜さ”や“偏見”について考えさせられる作品

物語の序盤、自身が赤ん坊の時に亡くなった母ヨンヒの死の真相を探るため、ドンファンが母を知る人々から話を聞くと、ヨンヒの容姿について「化け物のように醜い顔をしていた」と証言するシーンがある。

正直、“みんな自分の顔を棚に上げて化け物とか醜いとか酷くない?”と、証言する人たちにドン引きしてしまい、モヤモヤしている間に物語はどんどん進んでいってしまった。

もちろん、“顔”が本作のキーワードとなるため、そういう描写は仕方ないのだが、絶縁状態にあったヨンヒの二人の姉や同僚たちの言葉が本当に酷いものばかりで、亡くなったあともそこまで言われるなんて、よほど人に嫌われる性格だったのだろうと思った。

ところが、証言の中には「ヨンヒは優しい性格で、他人の恨みを買うことはなかった」というものも。では一体なぜ、ヨンヒは夫と生まれたばかりの息子を残して消息不明になったのか…。

消息不明になってから40年後に白骨遺体で発見されたドンファンの母・ヨンヒ(シン・ヒョンビン)(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


物語は、約40年前、駆け出しの判子職人だったヨンギュと、縫製工場で働くヨンヒが出会った頃に移っていく。出会いのきっかけや交際へと発展していく様子は微笑ましく、結婚後は貧しくとも仲睦まじく暮らす二人の姿は幸せそうに見えた。

ところがある日、縫製師の女性が縫製工場の社長から性暴力を受けたところから、不穏な展開を見せ始める。正義感の強いヨンヒは、性被害に遭った女性に代わって社長を告発したのだ。

そして物語は再び現代へと移り、当時、社長からの性被害に遭った女性から母の話を聞いたドンファンは、母が社長に殺害されたのではないかという疑念を抱き、スジンと共に調査を進めていく。

製工場の社長ペク・チュサン(イム・ソンジェ)とイム・ヨンギュ(パク・ジョンミン)(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.

母の死をきっかけに真実を追い始めるドンファン(パク・ジョンミン)とドキュメンタリー番組のプロデューサー、キム・スジン(ハン・ジヒョン)(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


物語の終盤、ヨンヒの死の真相が明かされる場面で、本作が容姿の醜さではなく、人間の“心の醜さ”や“偏見”を描いていたことがわかる。観終わったあと、“善悪”や“美醜”“芸術とは何か”など、誰かと語り合いたくなること間違いなしの本作。

衝撃のサスペンス・ミステリーを描いた『顔 -かお-』を、ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。

(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.

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文=奥村百恵

(C)2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


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