ヌルい日本を震撼させる、 生き残りをかけたアツい男たちの狂乱! <連載/ウワサの映画 Vol.32>

東海ウォーカー

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”広島×やくざ”といえば「仁義なき戦い」。このやくざ映画の金字塔なしには生まれなかったと原作者が語る”広島×警察×やくざ”な同名小説を、「仁義~」の生みの親・東映が「『東映実録シリーズ』再び!」の意気込みで映像化したのが「孤狼の血」です。怪しげな闇が残る昭和の雰囲気と、「じゃけぇ、じゃけぇ」の呉弁に反射的に血が騒ぐ~。遠慮せず、媚びず、気骨ある男たちの大暴れを活写し尽くした近年では絶滅危惧種の1本に、もう拍手しかありません! 正義の本質を追求するヨゴレ刑事・役所広司、理想に燃える新人エリート刑事・松坂桃李、忠義を貫く極道・江口洋介…。ずらりとそろったオオカミたちが、かっこええやないの~(呉弁風)。

原作は柚木裕子の同名小説。バイオレンス描写の名手でにある白石和彌により、往年の任侠ものの魅力を残した見応えあるエンターテインメントに!©2017 AI Film Entertainment LLC


舞台は昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島の架空都市・呉原。その地はいまだに暴力団が割拠しており、新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子(いらこ)会系の「加古村組」と、地場の暴力団「尾谷組」との抗争の火種がくすぶり始めていました。そんな折、「加古村組」関連企業の金融会社社員が失踪。この件を殺人事件とにらんだマル暴のベテラン刑事・大上(役所広司)と新人刑事・日岡(松坂桃李)は事件解決に奔走しますが、やがて、やくざ同士の抗争にのみ込まれていきます。警察組織のもくろみ、大上への黒い疑惑…。さまざまな欲望と思惑が交錯する中、暴力団と警察を巻き込んだ、血で血を洗う報復合戦が勃発しようとしていたのでした…。

大上とは懇意の尾谷組若頭・一ノ瀬役に江口洋介。ヤクザ役がめちゃめちゃハマってて、失礼ながら初めて「かっこいい」と思い、ホレてしまいました!©2017 AI Film Entertainment LLC


冒頭約1分が観客の運命の分かれ道です。スイッチオンで大興奮となるか、ドン引きして残り2時間怯えっぱなしになるか(笑)。いきなりエグいんですもん。「凶悪」などでもおなじみの、白石和彌監督のあいさつ代わりの凄惨シーンが。こんなのが全編で続いたらさすがに吐きますが、バイオレンス描写の生かし方を心得ている白石監督のさじ加減はやっぱり絶妙でしたね。今作はガラの悪い刑事が主人公ということで、悪徳警官が主人公だった白石監督作「日本で一番悪い奴ら」を思い出しますが…。果たして今回の”問題児”は、黒いのか、白いのか。

オール広島ロケを敢行した、リアルな空気感にもゾクゾクしますね~。「がばちたれ!」などなど、クセになる呉弁も小道具のひとつ!©2017 AI Film Entertainment LLC


破天荒な主人公を演じるのは、名優・役所広司。「警察じゃけ、何をしてもえーんじゃ」と拡大解釈も激しいダーティ刑事・大上(通称・ガミさん)は、警察組織からも暴力団からも一目置かれています。暴力と金と女なしには立ち行かない相当にヤバいオリジナル捜査を展開する彼ですが、意外にも確固たる信念に突き動かされているもよう。今作の役所さんは、「あんな怖い顔するんだな」「汚れ役でも魅せるねぇ~」と驚きの新&再発見の連続ですよ。こういった荒くれ者の役って、眉間にシワを寄せてスゴめばそれなりにキマるし、演技が横並びになりがちで良し悪しもわかりづらい。なので、そんな中に”巧い人”がいると目立つ、目立つ! ラストへの感動につないでいく重みと深み…、さすがです。

見かけも素行もワルすぎて、ふつうに試験受けて公務員になったことすら疑いたくなるガミさん(右、役所広司)。あなた、ほんとに刑事ですか?©2017 AI Film Entertainment LLC


やくざとの癒着がささやかれるガミさんとコンビを組まされるのが、県警本部から赴任した一流大学卒のエリート新人刑事・日岡です。好青年から”男”へと変貌を遂げる松坂桃李が見ものですよ。「善と悪はきっちりとは分けられない」というシビアな現実を前に、大上に異議アリだった日岡の”正義の定義”も改まっていく。ストーリーを追うごとに劇的に変化していくコンビの関係性と終盤の日岡の覚醒に、思いがけず「あれ?これ感動する映画だったっけ?」。

ガミさんを一撃でのしてしまう空手マスターの日岡(松坂桃李)。若さゆえの熱血ぶりが、時に殺気立っていて恐ろしいほどです©2017 AI Film Entertainment LLC


ドンパチ一辺倒ではなくて、それぞれの正義がぶつかり合うカオスを照らす”まっとうな魂”の存在が、救いとなり、最高の後味をもたらしてくれる本作。興行的にもギャンブルなこの手の大作を、よくぞ作ってくれました、東映さん(涙)。小学生の頃から「『仁義~』サイコー! 文太サイコー!」と吠えていた、コンプライアンスにも常々不満たらたらな私の渇望は完全に癒されました。まぁ、こんな女ばかりでもなく、周囲の女性は「猛烈に好き派」と「ムリっ!派」にきれいに割れたので、デートで観ようという男子諸君は心してお誘いくださいね。ムリ派女子が、石橋蓮司扮する五十子会会長の”お気に入りフレーズ”に凍り付く姿が目に浮かび…、ニヤニヤしちゃいます(笑)【東海ウォーカー】

竹ノ内豊が加古村組若頭・野崎役でご登場。「男は兵隊かやくざを演じりゃさまになる」とは役所さんの先輩の弁だそうですが、極道・江口に加え、極道・竹ノ内もステキ~©2017 AI Film Entertainment LLC


【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「ファントム・スレッド」(5月26日公開)のポール・トーマス・アンダーソン監督!

おおまえ

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