磯村勇斗「剛さんがショーン・ペンに見えた」尊敬する先輩・綾野剛&役所広司の存在、そして自身が挑戦する理由
東京ウォーカー(全国版)
近年は映画『若き見知らぬ者たち』(2024年)、ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』(2025年)、『クロスロード 〜救命救急の約束〜』(2026年)、Netflixシリーズ『ソウルメイト』など話題作に出演し、地元・静岡で「しずおか映画祭」をプロデュースするなど幅広く活躍する磯村勇斗さん。
末澤誠也さん(Aぇ! group)とW主演を務めた『mentor』では、誤って火事を起こしてしまった罪の意識をアーチェリー競技に打ち込むことで封印し、オリンピック代表を目指す龍之介を演じている。
インタビューでは、『ヒメアノ~ル』などを手がけた𠮷田恵輔監督とタッグを組んだ本作の撮影秘話や役柄、“メンター”だと思える人物について、さらに最近刺激を受けた作品などを語ってくれた。
ストイックな役作りで挑んだ役柄「70メートルの距離を飛ばせるように、必死でアーチェリーの練習をしました」
――本作でご一緒する前は、𠮷田恵輔監督の作品に対してどんな印象をお持ちでしたか?
【磯村勇斗】今の世の中に訴えたい社会的なテーマを扱っている作品が多く、どちらかというと重い雰囲気の物語を撮っている印象でした。人物の切り取り方も独特で、人間の感情の揺れを見逃さないといいますか、そういった細かい部分にグッと迫るような描き方をする監督というイメージもあったので、ご一緒することが決まってからは撮影がすごく楽しみでした。
――アーチェリーのオリンピック候補選手である龍之介を演じるために、クランクインの1年ほど前から体作りとアーチェリーの練習をされたとうかがいました。
【磯村勇斗】アーチェリーには以前から興味があったので、役作りのための練習にしては熱量が高かったように思います。アーチェリーは精神のスポーツと言われていますが、射つ時にちょっとでも呼吸が乱れたり軸がブレると、矢が的から大きくズレたところに当たってしまうんです。なので、精神統一をしながら毎回練習していました。
――どのぐらいの距離まで射つ練習をされたのでしょうか?
【磯村勇斗】オリンピックでは最長飛距離が70メートルと決まっていて、撮影では実際にその距離の矢を飛ばす予定ではなかったので、もう少し短い距離で練習していたんです。ところが、アーチェリーの練習をしているシーンの撮影時に、監督が「実際の(オリンピック用の)距離で射っちゃおうよ」と突然仰って(笑)。そこから70メートルの距離を飛ばせるように必死で練習をして撮影に挑みました。
――アーチェリー選手の姿がとても様になっていてかっこよかったですが、そんな裏話があったのですね。
【磯村勇斗】矢を遠くに飛ばすためには、弓を引く力を一層強くしなければいけないなど、いろいろな調整が必要だったので大変でしたが、アーチェリー選手の姿が様になっていたと言っていただけて安心しました。
――少年の頃、龍之介と共に花火遊びをきっかけにアパートを全焼させてしまった拓海役の末澤誠也さんとは現場でどのようにコミュニケーションを取っていましたか?
【磯村勇斗】僕の地元である沼津でロケ撮影をした際は、「ここでこんなことをしていたんだよ」、「よくこの道を通っていたよ」みたいな思い出話をしたのを覚えています。埜本役の綾野剛さんがいるときは、末澤くんと三人で体作りの話をしていました。
――物語が進むにつれて龍之介と拓海の関係性が少しずつ変化していく展開に、心を動かされました。末澤さんとのお芝居で印象に残ったことを教えていただけますか?
【磯村勇斗】現場で監督に求められたことをすぐにトライする末澤くんの姿を見て、すごく素直で誠実な方という印象を受けました。そういう素直さって、芝居をやるうえでとても大事なことだと僕は思っていて。彼が演じたことで拓海というキャラクターがより魅力的になっていたように感じましたし、現場では末澤くんと役柄の相性のよさが溢れ出ていました。
メンター的存在の先輩俳優「誰に対しても優しくて気遣いもあって、お会いするたびに素敵だなと感じます」
――火事の被害者でありながら、拓海にとっての“メンター”的存在となる埜本を綾野さんが演じています。今回、綾野さんと久々にご一緒してみていかがでしたか?
【磯村勇斗】“剛さん、まだこんなに隠しているものがあるんだ!”と今回驚きました。
――“こんな表現もされるんだ!”という俳優としての新たな一面を発見したということでしょうか?
【磯村勇斗】もう…圧倒されました。剛さんがショーン・ペンに見えてしまうぐらい、本作の現場では強烈な表現の仕方をしてらっしゃったのがとても印象的で。偉大な先輩である剛さんとご一緒できた時間はとても幸せでした。
――埜本と飲みに行った龍之介が、ずっと隠してきた心情を話すシーンにグッと引き込まれました。
【磯村勇斗】あのシーンは、よく喋る𠮷田監督が珍しく言葉数が少なくて、とても緊張感のある現場だったのを覚えています。監督はご自身の過去の出来事を脚本に落とし込んでいるそうで、きっとあのシーンにも個人的な思い入れがあったのではないかと。
だからこそ、慎重に演出をされていましたし、綾野さんも「もっとこういう表現ができるんじゃないか」と提案しながらお芝居を作っていたので、いい影響を受けながら演じることができました。本当に豊かな時間でした。
――綾野さんが監督に「ハードルが高いオーダーをして欲しい」と伝えたとうかがったのですが、“こんな変わったお芝居のオーダーがあった”という演出があれば教えていただけますか?
【磯村勇斗】物語の後半、龍之介が一人で部屋の片付けをしているシーンがあるのですが、台本には「…」しか書かれていなかったので、自分なりに「…」を解釈して演じてみたんです。そしたら監督が「笑って、泣いて、怒って、悲しむという芝居を5秒ぐらいの間隔でパッパッパっと切り替えて演じてみてください」と仰ったので、“え?それってどういうこと!?”と少し戸惑いました。
でも、このシーンの撮影は割と後半に行われたので、なんとなく監督の意図を汲み取ることができ、無事にOKをいただきました。そんな感じで、すぐには理解できない演出が何回かあったのを覚えています。
――𠮷田監督のような演出をされる方はなかなかいなさそうですね。
【磯村勇斗】ほかの監督だったら「今のお芝居はちょっと目立つのでやめてください」、「無駄な動きなのでやめましょう」と指摘が入りそうなことを、𠮷田監督はあえて「やってみて」とリクエストされていたのが印象的でした。もしかしたら、俳優が“え?”と戸惑ってしまうようなお芝居にこそ、キャラクターの人間味というか、特徴が現れるという意識を持ってらっしゃるのかもしれないです。
――ちなみに、磯村さんにとってのメンターはどなたでしょうか?
【磯村勇斗】綾野さんは間違いなくメンター的存在ですし、役所広司さんも勝手にメンターだと思っています。役所さんと何度かお仕事をご一緒させていただいていますが、誰に対しても優しくて気遣いもあって、お会いするたびに素敵だなと感じます。キャリアがあって世界的に評価もされている方が、そういう姿勢で現場にいらっしゃると身が引き締まります。
――役所さんと共演された映画『八犬伝』(2024年)では親子役を演じられて、今年の5月に行われた「第1回しずおか映画祭」ではゲストとして役所さんが参加されていましたね。
【磯村勇斗】役所さんのお芝居を近くで見られるだけで、すごく贅沢な時間を過ごしていると感じますし、綾野さんや役所さんのような素敵な先輩方と出会うたびに、このお仕事を続けていてよかったなと実感します。
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