「怖い絵」著者・中野京子が読み解く!ゾクッとするハプスブルク家の絵画
東京ウォーカー(全国版)
ハプスブルク家のコレクションを展観する、日本スペイン外交関係樹立150周年記念「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」が、5月27日(日)まで国立西洋美術館で開催中だ。スペイン・マドリードにあるプラド美術館は、スペイン王室の収集品を核に1819年に開設された、世界屈指の美の殿堂。本展では、同美術館の誇りであり、西洋美術史上最大の画家のひとりであるディエゴ・ベラスケス(1599-1660年)の作品7点を軸に、17世紀絵画の傑作など61点を含む約70点を紹介している。

17世紀のスペインは、ベラスケスをはじめ、リベーラ、スルバラン、ムリーリョなどの大画家を輩出。彼らの芸術を育んだ重要な一因に、歴代スペイン国王がみな絵画を愛好し、収集したことが挙げられる。
そんななか、スペインにおいて絵画芸術が到達し得た究極の栄光を具現したのが、宮廷画家ベラスケス。彼は、国王フェリペ4世の庇護を受け、王室コレクションのティツィアーノやルーベンスの傑作群から触発を受けて大成した画家だ。そのフェリペ4世の宮廷を中心に、17世紀スペインの国際的なアートシーンを再現したのが本展。プラド美術館のコレクションの魅力をたっぷりと体験させてくれる展覧会となっている。

今回は、この美術館展の魅力について語ってもらうべく、著書「怖い絵」シリーズや「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」で話題になった中野京子さんにインタビューを敢行。中野さんが特に興味を持つ作品などについて語ってもらった。
――今回の展覧会の感想を聞かせてください
ベラスケスの油彩画が7点も来日するのは初めてのことです。スペインの代表的画家であり、作品数もきわめて少ないので、なかなかまとまった数を貸してもらうのは大変だったと思います。プラド美術館と交渉した担当者さんの奮闘に頭が下がります。
膨大なコレクションをもつルーブル美術館やメトロポリタン美術館がデパートだとしたら、プラド美術館は高級専門店のようなもの。歴代王侯の趣味が色濃く反映し、独特の品ぞろえが見事です。今回はさらに国立西洋美術館が展示に工夫を凝らしてくれたので、多くの方々に楽しんでもらえるでしょう。
――ベラスケスの7点の作品の中で、中野さんが特に興味を持たれているのはどれでしょうか?その理由は?

「バリェーカスの少年」です。当時のヨーロッパ各宮廷には、こうした小人症の奴隷や道化たちが「慰み者」として仕えており、絵画に描かれることもよくありました。でも本作のような単独肖像画は珍しく、あったとしても上から見下ろし、頭部の大きさと体の小ささを強調しているのがほとんどです。しかしベラスケスは視点を低く取り、描く者と描かれる者の間に上下をもうけていません。さらに、彼らの肉体よりむしろ彼らの魂に深く関心を寄せています。「バリェーカスの少年」を見ると切ないような気持ちになるのは、そこからきているのではないでしょうか。
――「怖い絵」シリーズが大ヒットしていますが、今回の展覧会の作品でもゾクッとする部分はありますか?
はい、やはりスペイン・ハプスブルク家断絶が、血族結婚くり返しの果てという、理由が理由ですからね。今回、ベラスケス7点の中に、彼が仕えた主君フェリペ4世像とその息子(最初の結婚で生まれたバルタザール・カルロス王太子)の肖像があります。もう一つ、ベラスケスの死後に別の画家が描いたカルロス2世(4世の再婚相手との間に生まれ、王位を継いだ)も来日しているので比べてみてください。



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