「怖い絵」著者・中野京子が読み解く!ゾクッとするハプスブルク家の絵画
東京ウォーカー(全国版)
馬に乗っているバルタザール君は、フェリペ4世とフランス・ブルボン出身の姫との間に生まれて健康に育ち、オーストリア・ハプスブルク家の従妹と婚約していました。ところが16歳という若さで急死、死因もはっきりしません。他に男児がいなかったため、4世はやむなく息子の婚約者だった自分の姪と結婚します。異様な伯父・姪婚はこれが初めてではなく、祖父のフェリペ2世もそうでした。

ちなみにスペイン・ハプスブルク家の血族結婚については昔から遺伝研究の対象になっていて、しゃくれた顎や垂れた下唇などが特徴と言われています。本展出品作のフェリペ4世とカルロス2世という親子像にも顕著にみられます。また近年、スペインの大学が近交係数を発表しました。カルロス2世の近交係数は0.254という驚くべき数値です。なぜなら、赤の他人同士の間に生まれた子なら、0。親子きょうだい間に生まれた子は、0.25なのです。それよりも大きい数値なのですから……。


――ハプスブルク家は、近親婚では子が早世するということを知っていながら、一族内の結婚を繰り返していたのでしょうか?また、ハプスブルク家のスキャンダルを、当時の平民はどのように感じていたのでしょうか?
科学が未発達とはいえ、血族結婚がよくないことはわかっていたと思います。でもどこの王室もそうですが、ふさわしい相手を見つけるのは大変でした。スペイン王家の場合カトリックですからプロテスタント国の王族とはできません。それに斜陽とはいえ大国意識があるので小国もだめです。よそから君臨した王なので、臣下のスペイン人などもっての他。となると、どうしても親戚筋のオーストリアか、フランスあたりになってしまうのですね。
王族は血族婚が普通だということは共通認識でしたが、それを同時代のスペイン人がどう思っていたかは、よくわかりません。表立って批難したり揶揄したりは、怖くてできなかったと思いますよ。少なくともフェリペ2世の時ヴァチカンは反対しています。それを強大な力でねじ伏せたのですから。平民に何が言えるでしょう。内心どう感じていたかは別として。
――最後に、本展に来場するにあたって、知っておくとよい背景や予備知識があれば教えてください
ぜひ「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」を読んでいただければ(笑)。スペイン・ハプスブルク家のこの凄まじい血族の相関は非常に衝撃的なので、誰もが興味を惹かれることと思います。
またそのあたりを知っておくと、なぜスペインの王族なのに金髪碧眼で肌も真っ白なのか、という謎が解けます。絵画で歴史を知る面白さ、歴史を知って絵画を見る面白さを、本展覧会でどうぞ味わってください。

平井あゆみ
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