妻を突然失い思い出までモノクロに…傷ついた心に寄り添う3匹の白猫
東京ウォーカー(全国版)
日々の仕事に追われて職場と家を往復するだけの毎日、大好きな恋人との失恋、そして大切な家族との永遠の別れ。充実感のない日々や深い悲しみの中にいるとき、ふと世界から色が消えてしまったような空虚感を覚えることがある。そんな現代人が抱える心の痛みにそっと寄り添い、大きな共感を呼んでいる漫画がある。
作者は、SNSを中心に精力的に作品を発表している猫原のし(@nyan_boku)さんだ。SNSで3.7万いいね(第2話)を獲得するなど大きな話題となった感動作『ちびっこしろにゃんの色彩屋さん』の誕生秘話や、作品に込められた温かい想いについて話を聞いた。
※本作は著者の体験や創作に基づくコミック作品です。紹介している病状や経過には個人差があり、医学的な見解を代弁するものではありません。気がかりな症状がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。
日常に疲れた大人へ贈る「不思議な色彩シロップ」
本作の舞台は、現実世界で疲れ切ってしまった大人たちの前に現れる不思議な「色彩屋さん」だ。そこにいるのは、2.5頭身の愛らしい体型をした白猫のキャラクター「ちびっこしろにゃん」たちである。
彼らが精製する不思議な「色彩シロップ」によって、登場人物たちは少しずつ自分の人生の色を取り戻していく。
コロナ禍の不安から生まれた優しい世界観
猫原さんは本作を描いたきっかけについて、「第1話を描いたのは2021年の冬頃で、まさにコロナ禍の真っ最中でした。行動制限などで不安が広がり、文字通り『色を見失ってしまった』人も多かったと思います。実は私自身もコロナ禍の中で出産と育育を経験しており、少なからず不安や孤独を抱えていました。そうした人たちも含めて、たくさんの人に優しい色を届けられるような温かい作品を作りたいと思ったのが始まりです」と語る。
もともと描いていたお気に入りの白猫キャラクターを「数匹いた方がかわいいかも!」と3匹に増やし、無表情のようで見事に感情を伝えるチャームポイントを与えられたしろにゃんたち。彼らの存在が作品の温かさを一層引き立てている。
失意の底にあった心が取り戻す「世界の色」
物語はオムニバス形式で展開する。第1話では家と職場の往復で心が擦り切れた女性、第2話では元カノを引きずり深く落ち込む男性が登場する。そして特に読者の涙を誘ったのが、第3話に登場するくも膜下出血で突然妻を亡くした高齢の夫のエピソードだ。
「今までの人生を振り返っても、やはり『大切なものの喪失』というのは、世界から色を失う最大のきっかけだと感じます。心にぽっかりと開いた穴がどんどん広がって、すべてがモノクロに見えてしまう。第3話の彼は、現実世界だけでなく、楽しかったはずの過去の思い出や記憶の中でも色を思い出せなくなってしまっていました」と猫原さんは振り返る。
ラストシーンでは、カラフルに彩られた若い頃の夫婦の姿が描かれる。「現実世界で彼がどうなったかについては、読者の皆さんのご想像にお任せします」と猫原さんは微笑むが、思い出の中に再び鮮やかな色が灯ったその演出は、失意の底にいた夫の心が救われたことを優しく物語っている。
日常の忙しさや悲しみに心がモノクロになっていると感じるすべての人へ。どこか愛おしいしろにゃんたちが切り拓く「色のある世界」に、一度癒やされてみてはいかがだろうか。
取材協力:猫原のし(@nyan_boku)
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