小池都知事「グリーン水素の経済圏を作り出し、脱炭素化を目指す」山梨県にて国際会議「富士ハイドロジェン・サミット2026」が開催

東京ウォーカー(全国版)

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世界の水素の実証・実装の現場で培われた知見を共有し、各国・各地域が次の一歩を描くための議論を行う国際会議「富士ハイドロジェン・サミット2026」が、2026年10月19日~21日にかけて山梨県北杜市で開催。2日目の10月20日には、東京都知事の小池百合子さんと山梨県知事の長崎幸太郎さんによる知事対談をはじめ、さまざまな事例の発表、特別講演などが行われた。

東京都知事の小池百合子さんも登壇し、水素エネルギーの社会実装に向けて議論を交わした撮影:ソムタム田井


水素エネルギーの社会実装について議論が展開

水素エネルギーは、水素と酸素を化学反応させて電気や熱を取り出す、あるいは燃焼させて利用する次世代のクリーンエネルギー。利用時に二酸化炭素を排出せず、季節をまたぐエネルギー貯蔵や遠距離輸送も可能となっている。水、天然ガス、石油、バイオマスなど、さまざまな資源を原料にできることから、カーボンニュートラル(脱炭素社会)を実現するうえで必要不可欠なエネルギーとして、現在、多方面から注目されている。

そんな水素エネルギーの社会実装を進めるうえでは、技術だけでなく、人材育成や各国・各地域におけるルールの違いなど、さまざまな課題も存在する。本サミットでは、山梨県が水素の実装に取り組むなかで、長年の挑戦を通じて蓄積してきた知見や工夫を共有。国内外の行政・企業・研究機関と議論を重ね、実装を阻む課題を整理し、その成果を世界へ発信していくことを主旨としており、こうした議論を通じて「水素の実装加速の仕組みづくり」へとつなげていくことが最大の目的となっている。

知事対談「山梨と東京が描く水素社会の次のステージ」撮影:ソムタム田井


1日目(10月19日)は、国内外の識者が集い、それぞれの実装経験や議題を共有し、対話を通じて今後の協力やネットワーク形成の土台を築く「3つの分科会」を実施。3日目(10月21日)は、最先端の水素実証拠点を実際に視察し、水素の製造・貯蔵・輸送・利用に関する取り組みを体験する「エクスカーション(体験型学習・見学会)」が行われ、これらも好評を博した。

オープニングでは、書法家の望月大耿さんによる書道パフォーマンスも実施撮影:ソムタム田井


今回、取材で参加した2日目は、同サミットの「本会議」にあたり、世界各地の水素実験の現場で得られたさまざまなケーススタディや知見が共有された。国内外の産学官による事例発表・議論を通じて、優先的に取り組むべき課題を明らかにしていくプログラムになっており、まずは山梨県の長崎知事が挨拶に立ち、「世界は今、脱炭素とエネルギー安全保障という二つの課題に同時に向き合っています。再生可能エネルギーの電力から水素を作れば、エネルギーを外から買うのではなく、自らの地域で作ることができます。水素はこの二つの課題を同時に解く手段であります。

山梨県では再生可能電力から水素を作り、貯め、使うというP2Gシステムを、国の支援をいただきながら、官民で開発し、実証してまいりました。今その技術は、山梨県内の工場の熱利用で使われ、また、東京都と共同で開発した設備では、東京の都市の中でも水素を作り出すなど、実証の段階を終え、実装の段階に入っています」と、同県の水素エネルギーに関する研究開発の状況を報告。「本日の議論が未来につながることを期待しています」と語った。

【写真を見る】水素エネルギーの社会実装における取り組みについて話す、山梨県知事の長崎幸太郎さん撮影:ソムタム田井


小池都知事(東京都)×長崎知事(山梨県)が対談

続いて行われた知事対談「山梨と東京が描く水素社会の次のステージ」では、山梨県の長崎知事と小池都知事が水素実装のビジョンを語りながら、需要創出、供給基盤整備、人材育成などをどのように連携し、進めていくかについて議論を交わした。小池都知事は、水素エネルギーの実用にはいくつかの課題があるとし、作る、運ぶ、使う、つなぐという4つのフェーズを定義し、それらを以下のように説明した。

小池都知事(東京都)と長崎知事(山梨県)の、これまでの取り組みも紹介された撮影:ソムタム田井


「“作る”に関しては、現状、東京都の中央防波堤にグリーン水素(再エネ電力による水の電気分解で製造した、二酸化炭素の排出がゼロの水素)のプラント、製造拠点を設けていますが、これをもう1カ所増やして、製造効率を5倍に引き上げることを目指しています」

「“運ぶ”に関しては、これは“使う”にも通じるのですが、まずは何と言っても需要を作り出す必要があります。いくつか例を挙げますと、山梨県と連携して水素ステーションを多数設置し、2030年までに水素エネルギーを活用する商用モビリティ(FCバス、トラック、タクシーなど)を5000台ほど導入する予定です。また、水素の需要はモビリティだけでなく、街全体で作り出し、それを使っていくことで地域熱供給事業を推進していきます」

「そして“つなぐ”という点に関してですが、これから需要をさらに伸ばしていこうとするうえで、コストが定まっていないというのは大きなネックになります。値決めという観点では、2024年にグリーン水素トライアル取引に参加し、需要と供給の値幅、価格差を明らかにしておりますので、まずはそれを埋めながら、コストの確立を進めていきたく思います。生産地と需要地をつないで、山梨県と東京都で連携のモデルを作ることができれば。トライアルではありますが、市場形成を一歩前に進めようという、そういう動きに努めております」

東京都では、2030年までに水素エネルギーを活用する商用モビリティを5000台ほど導入予定撮影:ソムタム田井


これを受けて長崎知事も、山梨県の取り組みを具体的に紹介。さまざまな事業に挑戦し、知識を蓄えていると話し、モデレーターからの「水素を有効利用することで、どのような未来が開けると思いますか?」という問いには、小池都知事が「グリーン水素の経済圏を作り出し、脱炭素化とエネルギー安全保障を実現したい」と答え、対談を締めくくった。

小池都知事(東京都)と長崎知事(山梨県)の、これまでの取り組みも紹介された撮影:ソムタム田井


企業経営層や識者が水素ビジネスの在り方を語る

また同日の午後には、水素エネルギー実装の現実を語り、ビジネスとして何が課題なのかを顕在化させる企業経営層対談「水素ビジネスの成立条件」も行われた。

企業経営層対談「水素ビジネスの成立条件」撮影:ソムタム田井


カナデビア(環境・機械・社会インフラ・脱炭素化の各事業を手がける総合重工業企業)取締役社長の桑原道さん、サントリーホールディングス 常務執行役員の浅木純さん、トヨタ自動車 水素ファクトリープレジデントの山形光正さんが登壇し、「水素ビジネスが普及しない理由」や「各社が考える現状打破の一手」、「企業側から見て、水素を取り巻く環境は今後10年でどのように変わると思う?」といった質問について議論を交わした。

カナデビア取締役社長の桑原道さん撮影:ソムタム田井

サントリーホールディングス 常務執行役員の浅木純さん撮影:ソムタム田井

トヨタ自動車 水素ファクトリープレジデントの山形光正さん撮影:ソムタム田井


このほかにも、経済産業省による「水素社会実現に向けた経済産業省の取り組み」の発表や、海外から識者を招待して、各国の先進事例を紹介する「海外事例に見る水素社会実装への挑戦」といった発表も行われた。貴重な資料が多数提示されるなど、どの発表も非常に価値のあるもので、実に有意義な国際会議となった。

取材・文=ソムタム田井

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