パラ水泳・江島大佑選手インタビュー【パラアスリートの過去、現在、未来 Vol.2】
東京ウォーカー(全国版)
「パラリンピックそのものについての認識が違う」

――プロスイマーの一年間はどのようなものなのでしょうか。
「基本的には一年中泳いでいます。今年で言うと3月にアジア大会の選考会という位置づけの大会があったので、冬の時期はそこにピークを持っていくように練習していました。それが終わって4月から5月は合宿や地方大会に参加します。夏には世界選手権が開催される年もあるのですが、毎年8月から9月ごろに開催されるのがジャパンパラ競技大会で、ここに向けて練習をします。今年は10月にアジア大会も控えています。なので唯一オフがあると言えば、夏季シーズンの大きな大会、今年ならアジア大会が終わった後に一週間ほど休みを取るぐらいでしょうか」
――多忙な中、江島選手は若手選手との合同合宿「エジパラ」を開催されています。はじめたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
「パラ水泳にはトップチームの強化指定選手と、育成選手という成長途上の選手がいます。僕はこれまでトップレベルの大会はもちろん、海外の合宿などにも参加して経験を積んでいますが、若手の中にはそういった経験がなく、さらなる練習が必要だという感覚が分からないまま引退してしまう選手が多かったんです。そこで、有志が集まって一緒に練習することでお互いに刺激し合えればと思ってはじめました。
あまり相談なしに独自にはじめた合宿なので水泳連盟に怒られるかなと思っていたら、どんどんやってくれという感じで(笑)。一泊二日の小さな合宿でしたが、参加した選手には意外と刺激があったみたいで、その後他の選手やコーチからも参加したいといった声も聞きました。時期を見てまたやろうかなとは思います」
――海外経験も豊富な江島選手ですが、海外での印象的なエピソードはありますか。
「2012年のロンドンパラリンピックで印象に残っているのが、ヒースロー空港についたときのことです。到着した時オリンピックは終わっていたのですが、街中にパラリンピックの横断幕やポスターがあったんですね。ロンドンという街全体でパラリンピックを歓迎するというムードを感じました」
――パラリンピックそのものへの注目度の高さを感じさせますね。
「一番すごいなと思ったのが、大会決勝での出来事です。50mバタフライ決勝で僕は一番端の1コースだったんですが、隣を泳いでいた中国の潘世雲選手が世界新記録で優勝したんです。大盛り上がりの裏で、自己ベストも出なかったと落ち込んでいた僕に、『よくやった!すごかったぞ!』という風に一般の方が僕の目を見て称賛してくれたんです。すごいことだなと思いましたし、認知度というかパラリンピックそのものについての認識が違うなと思いましたね」
「『江島さんみたいになれたら』と目標にしてくれた」

――2020年の東京パラリンピックへの思いを聞かせてください。
「2016年のリオパラリンピックでは出場が内定していたのですが、その時の体調のこともあって自ら辞退する形になりました。本来だったらリオに行っていたはずなのに日本のテレビで大会を見るという悔しい思いをしました。年齢的な部分もあり、東京パラリンピックで最後にもう一度リベンジを、という思いがあります。
パラリンピックについてはもう一つ、実はすでに叶った夢があるんです。先ほども話した通り、僕が再び水泳をやろうと思ったきっかけがシドニーパラリンピックを観たからなのですが、その4年後、僕がアテネに出場した姿を見て、僕と同じような境遇の選手が『江島さんみたいになれたら』と目標にして水泳界に入ってきてくれたんですね。なので東京パラリンピックに出場して、また新たな世代の人の中から僕を目標にしてくれる選手が出てきてくれればいいなと思っています」
――最後に、江島選手にとって水泳とはどのようなものですか。
「水泳は非常にフェアでシンプルなスポーツだと思っています。人が判定や採点をするわけではなく、自分の体と技術だけで勝負して、1人1コースを与えられて速さを競うスポーツ。やればやるだけ結果が出るし、やらなければその分記録が落ちる。そういうところが面白いなと思いますし、だからこそ悔いなく終わりたいですね」
国分洋平
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