影山貴彦のテレビのホンネ。「千鳥『相席食堂』の『待てぃボタン』が最高」
関西ウォーカー
元毎日放送プロデューサーで、同志社女子大学メディア創造学科の影山貴彦教授が、“関西ローカル”のテレビ番組の核心に迫るコラム!
番組を見ていてツッコミたくなる、関西の視聴者の習性を見事に取り込んだ

「相席食堂」。いいところに目をつけた。ある日突然、誰もが知っている有名人が田舎の食堂に現れる。そして何のアポもなく、地元の人に相席をお願いし交流を深めるという番組だ。ロケに出かけるのは毎回2人。それぞれが日本各地の別の場所に出向く。
ただ正直、こうしたロケものは今やさほど珍しいものではない。作り手が知恵を絞ったのはこの先。スタジオでロケVTRを見守るのは、今や盤石の人気を誇る千鳥(大悟・ノブ)だ。超忙しい2人の負担を軽くしつつ、番組がより面白くなるようスタッフが考案したのが、「待てぃボタン」だ。
大悟とノブのすぐ横に大きなボタンがあり、VTRが流れている最中いつでも止めることができるシステムだ。ボタンを押すと画面は瞬時にスタジオに戻り、ロケに出ているタレントや、スタッフの番組演出に対する2人のコメントが挟まれる。常に的を射ている。時に褒めることもあるにはあるが、ダメ出しの方が多い。それがいい。大悟とノブの苦言には、笑いに包まれた愛がある。そのバランスが千鳥の才能溢れるところだ。
普段番組を見ていて、私たちはツッコミたくなる時がある。特に関西の視聴者はそうだ。テレビを見ながらブツブツ言っているお父さんお母さんも多かろう。そんな習性を見事に番組に取り込んだわけだ。千鳥は、テレビの前の視聴者の代弁者の役割も果たしている。
関西ローカルでの活躍時代から力を蓄えた千鳥は、いわばキングオブロケ、ロケの王者だ。それは万人が認めるところだろう。2人の手にかかれば、スタッフが期待するはるか上の撮れ高をゲットする。だからこそ、他人のロケを見ながらのツッコミが説得力を増すのだ。
スタジオには千鳥だけ。他には誰もいない。それがまたいい。今のテレビには出演者がむやみに多すぎる。

【著者プロフィール】かげやまたかひこ/同志社女子大学 学芸学部 メディア創造学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、関西学院大学大学院文学修士。「カンテレ通信」コメンテーター、ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。
影山貴彦
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