波乱続きのW杯で優勝候補ブラジルが見せた横綱相撲
東京ウォーカー(全国版)
サッカーのロシア・ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント1回戦が、7月2日(月)に行われた。ブラジル代表はメキシコ代表と対戦。2-0と快勝して、ベスト8進出を決めている。
波乱が続き、座布団が飛び交う“ロシア場所”。ドイツが派手に転び、スペイン、アルゼンチン、ポルトガルが土俵を割るなか、ブラジルが“これぞ、横綱相撲”と唸る内容で寄り切った。
相手は北中米カリブ海の雄、メキシコ。7大会連続で決勝トーナメント進出している、三役常連といえる曲者だ。今場所でも、グループステージ初戦で横綱ドイツに強烈な張り手を見舞い、土をつけている。
その上、当のブラジルには相手の得意技もしっかり出させる懐の深さもあったりする。今回も勢いのあるメキシコとがっぷり四つに組んだことで、序盤は勢いに押されて土俵際まで寄られるはめに。
下剋上の流れにブラジルも飲み込まれるか。そんな思いが頭をよぎるなか、粘り強い足腰の如く守備陣が体を張ってメキシコの侵攻を食い止めると、横綱が盛り返す。
小気味いいテンポでパスをつないで崩しにかかったかと思えば、ドリブルで突破を図ったり。大きなピッチの横幅を存分に使って揺さぶりをかけると、次は小路でサッカーをやっているかのように狭いパスコースにボールを通してみたりと、抑揚たっぷりに攻め込んでいく。
徳俵に足がかかった状態で、メキシコもよく耐え続けた。ただ、51分に繰り出した最後の一押しは強烈だった。
左サイドのネイマールがドリブルで中央に持ち込み、メキシコの虚を突くヒールパス。ボールを受けたウィリアンがロケットのように左サイドに飛び出して折り返すと、最後はゴール前に滑り込んだネイマールが右足で押し込んだ。
メキシコもすっかり翻弄されてなすすべなしとなった一連の流れは、様式美すら感じさせる横綱の得意技といったところか。終了間際の88分にも、途中出場のロベルト・フィルミーノがカウンターからダメ押しゴールを奪っている。
ボール支配率もパス本数もメキシコに上回られながらも、終わってみれば2-0の快勝。相手に花を持たせつつも、金星は配給しない。憎らしいまでに強いはずなのに、世界的にアンチが少ないのは、その愛嬌の良い戦いぶりも関係しているのかも。
とはいえ、盤石の強さを見せた格好だがブラジルも万全とはいいがたい。ダニエウ・アウヴェスはけがで大会メンバーに選ばれず、ダニーロとドウグラス・コスタ、マルセロも大会期間中の負傷でメキシコ戦ではプレーしなかった。その上、ファウルを受けたネイマールが試合中に見せる痛がるそぶりに対して、「横綱の品格はどうなのか」と物言いがついたりもする。
不測の事態に直面し、外野も騒がしくなれば崩れてしまってもおかしくないもの。そんななか、しっかり自分の相撲を取れているのはベンチでどっしり構えるチッチ監督のおかげか。
4年前に母国で一敗地に塗れて自信を失っていた横綱を再度鍛え上げた指揮官は、会見で選手に意地悪な質問が飛べば代わりに答えてみたりもする親分肌。ガッシリとした風貌も相まってか、選手を見守るその言動は、監督よりも親方という言葉がしっくりくる。
「普段の状態に戻るまでにいくらかペースを保つことが必要なのはわかっているし、常によりよくなることを望んでいるよ」
けがから復帰直後のネイマールは、番付上位と当たる今後に向けてさらに状態を上げていくような口ぶりだ。
ほかの横綱や大関陣が崩れるなか、一人横綱は千秋楽に向けて賜杯を掲げる気合も十分といったところか。
小谷紘友
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