4歳の兄×セーラー服姿の妹。”時空を超えて家族がつながる”細田監督最新作!<連載/ウワサの映画 Vol.42>

東海ウォーカー

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「バケモノの子」までの過去4作品で、独自のファンタジー・ワールドを構築してきた細田 守監督。そんな彼が最新作「未来のミライ」で描くのは、4歳の少年・くんちゃんと、未来からやって来た彼の妹・ミライちゃんをめぐる家族のお話です。「ガキが主人公だし~」ってことで軽い気持ちで観ましたが、自分自身の過去と未来に加え、自分がつなぎ目となる一族の過去と未来についても考えさせる斬新な構成にじんわり感動! あなたもひととき”4歳”に戻って(笑)、まっさらな心で世界を見つめ直してみませんか?

「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」に続く、細田監督の待望の5作目。国内外から注目を集める1本です!©2018 スタジオ地図


舞台は、都会の片隅にある、小さな庭に小さな木が生えた小さな家。4歳の甘えん坊・くんちゃん(声:上白石萌歌)の前に、生まれたばかりの妹がやって来ます。妹に両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うくんちゃん…。そんなある日、自宅の庭にいた彼の前に現れたのは、自分を“お兄ちゃん”と呼ぶ、未来からやってきた妹・ミライちゃん(声:黒木 華)!!! 彼女に導かれ、時を越えた家族の物語へと旅に出るくんちゃんは、幼い頃の母や青年時代の曽祖父との出会いを経て、さまざまな“家族の愛”を知っていきます。果たして、くんちゃんが最後に辿り着く場所とは? そして、ミライちゃんがやってきた本当の理由とは…?

上白石萌歌ちゃん×4歳男児に違和感の序盤…。「好きくないのぉ!」の”イヤイヤ”に、内心「うるさぁ…」。でも、大人を感情移入させるには萌歌ちゃんで正解だった!©2018 スタジオ地図


「いきなり登場した妹に一家のスターの座を奪われたっ…」。その後の人生では珍しくもなんともなくなる”愛の喪失”という初の大事件が、幼い兄の冒険のきっかけになる点が興味深い。人生は意のままには運ばない事実を知ってうろたえる彼も、庭の木がもたらす不思議体験を重ねるにつれ、「自分が生きている=膨大な命のリレーと、その命を巡る膨大なドラマがある」ことをごく自然に実感していきます。妹を拒否っていた主人公が「ひとりぼっちの国」へ行かされる危機に瀕した時、私も、自分が抱く家族観の本質にハッとしちゃった。「ひとりぼっちになるくらいなら、ウザい妹と一緒にいる方がマシだろう!」って。ちゃんと大事なのに…、そんな自覚、普段はほぼないんだよなー。

いきなり現れた、未来からやって来たというセーラー服姿の妹・ミライちゃん。実際の彼女はまだ赤ちゃんで、嫉妬する兄・くんちゃんから些細な嫌がらせを受けたりしてます©2018 スタジオ地図


おもしろいのが、本作の構成。関連性がないように見える複数のエピソードがオムニバス調に紡がれます。一族の各人を”1人の人間”として際立たせつつも、お話の出どころは同じ”庭の木”。家族の記憶が詰まったその木ですべてはつながってる、っていう仕掛け。自分という”現在”のピースがハマった時に仕上がる”家族の歴史絵巻”の壮大さに、想いを馳せずにはいられないのです。

山下達郎が書き下ろしたオープニング&エンディングテーマも作品にぴったり。山下さんは細田監督とは「サマーウォーズ」以来、9年ぶりのタッグです©2018 スタジオ地図


そんな凝った語り口が、「血のつながりに甘えず、もっと意識的に家族と関われよ」ってことを効果的に伝えます。前述のように家族への感謝が足りない私には耳が痛い... 。タイムトリップで出会う年齢がズレた母や妹は見知らぬ人同然で、彼女たちとの交流は、”人”対”人”の純粋な好奇心と思いやりにあふれてるんですよね。中でも、くんちゃんと青年時代のひいじいちゃんのパートは素敵だったー。戦争帰りのひいじいちゃんのキャラも、声を担当した福山雅治もかっこよくて、このネタだけで映画1本作れるんじゃ…? いや、作ってほしい!

青年時代のひいじいちゃんがイケてます。戦争で足を痛めた彼と、ひいばあちゃんとの恋のくだりにも涙してしまいました…©2018 スタジオ地図


そして、細田作品のお楽しみといえば、ワクワクを誘う”映像”ですよね。私も、実はストーリーよりも映像の方が印象に残ってて、ずっと観ていたいシーンが多数。イチオシは終盤に出てくる近未来の東京駅ですねー。「ブレードランナー」的な妖しさの構内や遺失物係のロボットがなんともユニークで、ほかのシーンとはまるで違う魅惑的なテイスト! 水槽の中の映像も美しく、これまた海の物語なんかに広げて1本作ってほしいくらい、もっと深く水にまつわる表現を観たい。さらに、馬やバイクでのライドシーンの疾走感も格別!

未来の駅に停車していたアニマル電車に乗りたいなー。今作のお気に入りキャラとなった写真の遺失物係さんは、単調な口調&いい声がクセになるぅ©2018 スタジオ地図


子供の全世界である”家”というワンシチュエーションと、無限に広がるファンタジー世界を行き来する…、その対比のアイデアが光る1本でした。過去作品の要素を凝縮しつつ、ダイレクトに追求した”家族や命”という普遍のテーマは、多くの世代の追体験を誘うことでしょう。過去の家族が眺めていた&未来の家族が眺めるであろう…と思うと、細田監督お得意の入道雲や青空の風景がいっそう眩しかったー!【東海ウォーカー】

自称・この家の王子という謎の男(左)の正体は!? 私が純粋じゃないからか想像力が足りないからか…、彼にまつわる唐突な演出は、唯一、ちょっと苦手(笑)©2018 スタジオ地図


【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「ウィンド・リバー」(7月27日公開)のジェレミー・レナー!

おおまえ

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