細田監督は「お餅」みたいな人!?細田守監督×tupera tupera特別対談

東京ウォーカー(全国版)

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細田守監督最新作『未来のミライ』(公開中)に登場する絵本が、映画を飛び出して現実の絵本になった!

タイトルは『オニババ対ヒゲ』。映画本編の中では主人公の四歳児・くんちゃんが妹のミライちゃんに読み聞かせる絵本として登場する。本作は細田守監督と、人気絵本作家・tupera tupera(亀山達矢&中川敦子)が共同で作り上げた作品だ。

細田守監督(中央)と絵本作家tupera tuperaの2人(左:亀山達矢、右:中川敦子)


細田「この絵本のタイトルは脚本制作段階からありました。どんな内容なのかは考えていませんでしたが」

亀山「タイトルを聞いて『夫婦ゲンカの話だよね』というのが最初の印象でした。オニババとヒゲなので」

中川「私は最初、その組み合わせがすごく衝撃的でした(笑)。なんでオニババに対してヒゲなの?どうして2人が出会ったの?と疑問が沸いてきて」

【写真を見る】映画『未来のミライ』で、くんちゃんが『オニババ対ヒゲ』を読み聞かせるシーン[c]2018 スタジオ地図


ちなみに亀山さんと中川さんはご夫婦。細田監督と同じく小さいお子さんが2人いる。

細田「僕ら夫婦もそうだし、tupera tuperaさんもそうだと思うんですが、夫婦ゲンカなんてどこの夫婦にもありますよね。でも、夫婦のいざこざは子供に見せずに、父親、母親という役割の顔だけを見せるっていうのは、嘘があるんじゃないか、という話をしました。嘘がないものじゃないと子供は納得しないんじゃないかって。しかも、夫婦ゲンカの裏に一種の愛情が裏打ちされている世界を見せるというのはいいんじゃないかと」

テーマは「夫婦ゲンカ」。そしてその裏にある「愛情」。それを絵本でどう表現するか。

亀山「監督も僕も小さい息子がいて、よく『戦いごっこ』をするんです。そのとき、彼らが発する擬音語が面白いよね、という話が出たんです。そこから、『擬音語だけで展開していく絵本もおもしろいかもしれないね』って監督が仰って」

中川「『オニババ対ヒゲ』はくんちゃんが大好きな絵本。くんちゃんは男の子だから、戦いが好き。うちの子も『ドス!ボカスカ!ダーン!』とツバが飛ぶくらい亀山と戦ってるんですよね。パンチはたいしたことないけど、ツバ攻撃はすごくて(笑)。監督も『そうそう、うちもね……』みたいな感じで打ち合わせが盛り上がりましたよね」

たしかに『オニババ対ヒゲ』のページをめくると、絵と擬音だけというシンプルな構成なのに目が釘付けになる。ぐっと襟首をつかまれて絵本の中に引っ張り込まれていくような感覚がある。

『オニババ対ヒゲ』中面[c]Mamoru Hosoda 2018 [c]tupera tupera 2018 [c]2018 スタジオ地図


細田「実は、僕の心の中では目の前にいる亀山さんと中川さんを『オニババ』と『ヒゲ』に自然と当てはめて考えてたんですよね。『オニババ対ヒゲ』というタイトルはおふたりに会う前の段階で決まっていたけれど、絵本をつくる過程でおふたりのイメージが大きくなっていった。打ち合わせの際にも、中川さんと亀山さんご夫婦の仲の良さ、ユニークな関係性に影響を受けることが多かったですね。口には出さなかったけれど(笑)」

亀山「確かに中川は似てますよね(笑)。監督は夫婦ゲンカはしますか?」

細田「まあ、ありますよ。亀山さんたちは?」

亀山「しますね」

中川「引きずりはしないですが」

亀山「僕らが夫婦ゲンカを引きずってたら仕事に影響するから死活問題です(笑)」

細田「夫婦なのに仕事も一緒にやっている。普通は仕事と生活を切り分けるじゃないですか。切り分けずにやるっていうのがすごい。一心同体っていうかね。興味深い関係ですよね」

細田監督もtupera tuperaさんも表現者であると同時に、夫であり妻であり、父であり母でもある。そのことが『オニババ対ヒゲ』にも影響を与えているという。

細田「『オニババ対ヒゲ』の内容を打ち合わせているとき、民話風なお話にしようか、という話も出ていたんですけど、結局そうしなかった。つくりあげたお話じゃなくて、いま目の前に見えているもの、もっと生々しいものを大事にしたかったから。要するに、亀山さんと中川さんがオニババとヒゲなんだ、という納得感なんですよ。一種の自画像みたいな部分が必要だと思うんです。亀山さん、中川さんのご夫婦だけでなく、うちの夫婦や、どこかのご夫婦でもいい。いろいろなご家庭が反映された『オニババ対ヒゲ』なんですよ」

最後にお互いの印象を語ってもらった。

中川「やわらかい表情でニコニコしている顔と、時折見せる鋭い目線、明確な判断。対照的な要素のバランスの取り方がすごく面白いなあ、と思いますね」

亀山「監督は自分の中に描きたいものがしっかりあるんですけど、余白がすごく大きい。その余白が、僕らのように映画に関わった人間を楽しみながら変化させると思うんです。そして、監督自身もそのことを楽しんでる。それが作品の世界観の広さに繋がっているのかもしれない。監督を一言で言うと“お餅”みたいな人。いろんなものをくっつけて巻き込んでいく」

中川「包容力があるんですよね」

細田「たしかに制作中にいろいろな案件を即時に解決しなきゃいけない仕事だから。“余白が大きい”とおっしゃっていただきましたが、映画に関わってくれた人たちのお力をいただいて、内容をさらに高めていきたいから。そんな僕から見ると、tupera tuperaさんたちはものすごくアイディアが豊富。そして“面白がらせよう”という意志が強い。しかも2人ともぜんぜん違う方向の面白さを持っている。だからすごく強力なタッグなんです」

映画『未来のミライ』。そこから生まれた絵本『オニババ対ヒゲ』。希有な才能の持ち主たちが、ジャンルの垣根を乗り越え互いに影響し合いながらつくりあげた作品を、ぜひお楽しみいただきたい。

桑原健太郎

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