「コーラスライン」、この機会を逃したくない来日公演! 輝ける軌跡とバーヨーク・リーの語る作品への愛

関西ウォーカー

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WEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.57をお届けします。

ブロードウェイミュージカル『コーラスライン』が、7年ぶりに来日公演を行う。

ブロードウェイミュージカル「コーラスライン」は8/31(金)~9/2(日)にオリックス劇場で上演


ミュージカルの中でも人気の高い作品の来日とあって、前売りチケットの売れ行きが好調、追加公演も決まった。いよいよ週末に大阪公演の開幕だが、もう観れないとあきらめず、トライしてほしい。この作品にはそれだけの価値がある。

その『コーラスライン』の輝ける軌跡、そして初演のオリジナルキャストであり、今回の演出・振付・再構築のバーヨーク・リー来阪会見のコメントを紹介する。

【写真をみる】コーラスラインが、主役とそのバックで踊るその他大勢を分ける


【コーラスラインとは】

舞台の中央後方に引かれた線。“コーラス”とは、その他大勢の人たちのこと。主役と、そのバックで踊るその他大勢を分ける境界線。コーラスダンサーはその線から前に出てはならない。

【ストーリー】

とある劇場。新作ブロードウェイミュージカルのコーラスダンサーを選ぶオーディションが開かれている。舞台上には1本の白い線。最終選考に残った17名の男女に、演出家・ザックが問う。「履歴書に載っていない、自分自身のことを話してくれ」。戸惑いながらも、ダンサーたちは自らの人生を語り始める。選ばれるのは8名。そして最終選考の結果は…。

【輝ける伝説の作品】

原案・演出・振付はマイケル・ベネット。1975年、ニューヨ-クのオフ・ブロードウェイで誕生し、同年にオン・ブロードウェイで開幕。翌76年の第30回トニー賞で、最優秀新作ミュージカル賞をはじめ、全9部門を制覇、ピュリツァー賞、ニューヨーク演劇批評家協会賞など各賞を総なめにした。85年にはリチャード・アッテンボロー監督で映画化、日本でも公開されヒット。

『コーラスライン』は、シューバート劇場で90年に閉幕するまでの約15年間に6137回公演した。83年に『グリース』の記録を抜き、史上最長ロングラン記録を樹立。99年に『キャッツ』に抜かれるまで最長記録を誇った。

2006 年、初演版の演出・振付を踏襲したリバイバル版が開幕。同公演のキャスティング模様を綴った08 年のドキュメンタリー映画「ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢」も話題に。リバイバル版は09 年、11 年に来日公演、今回が7年ぶりの来日となる。

【『コーラスライン』初の日本公演】

日本初来日は1986年、東京で1か月公演。翌年、ドイツ人プロデューサーの率いるカンパニーがワールド・ツアーで来日、日本各地を回った時が初来阪公演。

『コ-ラスライン』の日本初演は劇団四季。マイケル・ベネットとのコラボレーションで1979年に初演し、断続的に上演を続け、15年には上演2000回を達成した。

舞台写真より


【作品の誕生】

 マイケル・ベネットは、さまざまな雑誌に『コーラスライン』誕生の話を語っていた。それは、1970年代前半、ダンサーで振付師だった彼が、ウォーターゲイト事件の公聴会をテレビで見ていて感じたものから生まれた、と。当時アメリカ中を支配していた虚無と無気力への反発。自分の人生に正直でありたいと思っていた彼は、舞台上で人々が自分の気持ちを正直にさらけ出している姿を見せたい、そして同時に、ダンサーについてのショウをやりたいと考えていた。

24人のダンサーを集め長時間の話し合いを2回行い、テープ・レコーダーに収録。そこに参加していたのが、バーヨーク・リーだ。トータルで5時間ものテープを何か月もかけて何度も繰り返し聞くなか、マイケルに“オーディション”の構想が浮かんだ。ワークショップを経て、上演へ。革新的だった。

取材をもとに作り上げたノンフィクションの物語と言える『コーラスライン』。登場人物の中には、マイケル自身を投影した人物・ポールもいる。

今公演の演出・振付・再構築を行ったバーヨーク・リー


【バーヨーク・リーの証言】

「発端は、ダンサーが失業状態だった中で、マイケルがみんなを集めて『自分たちのこと話してよ』と。なぜ舞台に立ちたいと思ったか、なぜダンサーになったのか。1人1人のダンサーの背景に、家族との関係などそれぞれのストーリーを語り、それがショーになった。それから43年。歴史に残る作品になるなんて、そんなこと誰も考えていなかった」。

リーは、アシスタントとして彼のアイデアを書きとめていた。「天才とは自由に物事を考える人たち。一瞬一瞬がひらめきの時で、一緒にいると常にドラマが起きていました」。そしてリーは初演のオリジナルキャスト、コニー役に選ばれ、ダンスキャプテンも務めた。

【バーヨーク・リーの伝えるもの】

エイズのため87年に44歳で死去したマイケル・ベネット。今、バーヨーク・リーが彼の遺志を継ぎ『コーラスライン』の演出・振付・再構成を手掛ける。

「私の仕事は、マイケルのメッセージを伝えること。オリジナルのカンパニーに携わった人たちが作ったものを守って行くのが役割だと思うので、『コーラスライン』を壊さずに忠実に再現して指導し、マイケルの演出や振付を次世代へ伝えて行くことが大事な使命だと思っています」。

歴史を誇るミュージカルや伝説と言われる舞台で、新たな技術を取り入れたり、わかりやすく見せる新演出の作品に最近よく出会う。が、それはそれとして、観た後で「オリジナルを観ていて良かった」という印象を持つことが多い。

さまざまな人生の悩みや苦しみを乗り越え、先にある夢と希望に向かって努力する若者たち。『コーラスライン』は、シンプルな構成のなか、時代を経ても変わらない人間の姿がそこにある。この作品はこのままでいてほしい。彼女に拍手を。

【大阪での来日公演】

最初は劇団四季で、次に映画で、そして来日の舞台。ほとんど間を置かずにそれぞれの『コーラスライン』を3度観て以降、現在まで何度も観て来た。日本版では、17名の登場人物の想いがダイレクトに伝わる魅力もあるが、全員が日本人のため、どうしても人種の違いが伝わりにくい。レオタードを着てズラリと並ぶ、腰の高さや脚の線の美しさはともかくとして…。なので、ビジュアルを考えると、来日版を観たい。 

が、肝心のダンス力、歌唱力に関しては、さて、どうだろう。来日公演の中には、明らかに日本人版の実力が上、という舞台もある。同じ日本でも、東京と“地方の”大阪ではキャストも変えられ、“歌えない主役”に「大阪、バカにしてる?」みたいな公演にも何度か遭遇。その時のカーテンコールの拍手は、主役でなく脇役のうまい人に贈られた。高い料金を払った大阪の観客を、なめたらアカンで。

でも、リーは「大阪が大好き。私のカンパニーが大阪に来れることを、本当にうれしく思っています。日本のみなさんは『コーラスライン』をよく知っているから、ベストなカンパニーを連れてきます!」。よくわかってらっしゃいました。

舞台写真より


【見どころ】

オーディション風景を描くバックステージもので、シンプルだが奥行きが深い。ダンサーたちは、家族の問題やコンプレックス、性の悩み、貧困や人種差別も乗り越えて、1本の白いラインの上に立つ。

これはスターのオーディションではない。コーラスを選ぶのだ。演出家のザックが言う「君たちはスターを飾る額縁だ」と。ラインの前と後ろでは世界が違う。ザックの元恋人でスターダンサーだったキャシーの存在から、厳しさが見える。誰も額縁で終わりたくはない。でも今は舞台の仕事を得るために、踊るために。

ダンス・オーディションの途中で足を痛めてしまうダンサーが出る。「踊れなくなったら、どうする」とザック。ディアナは歌う「これまで生きた日々を悔やまない。ひたすらにこの道を」。

そんな彼らの人生や生き方の中に、きっと共感を覚える誰かがいる。ダンサーの物語だが、それは観客1人1人の物語でもあるのだ。ステージの裏にある真実の人生。人生はドラマであり、1人1人が主役。そして誰もが特別。華やかなフィナーレで、金色に輝く燕尾服とシルクハットで全員が歌う「One(ワン)」。何度も繰り返される「One」とは、あなたのこと。「1人1人、素晴らしい人」。これは、しんどい仕事や日々の生活の中で頑張っているあなたへの応援歌なのだ。

リーからのメッセージ:「この作品を観た人が、今、自分がやっていることを愛し、情熱を込めて一生懸命やっていってほしい。それをこの作品から感じていただけたらうれしいです」。

◆STAGE ブロードウェイミュージカル「コーラスライン」※チケット発売中

日時:8/31㊎19:00、9/1㊏13:00・17:00、9/2㊐13:00・17:00

会場:オリックス劇場

演出・振付・再構成:バーヨーク・リー

料金:S席¥12,000 A席¥8,000 B席¥6,000  

問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL:0570・200・888) 10:00~18:00

演劇ライター・はーこ

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