休日は観光列車に乗って~『SL人吉』で行く!歴史情緒と人情あふれる人吉でほろ酔い旅~
九州ウォーカー
吹く風に秋の香りが漂いはじめれば、いよいよ行楽シーズンの到来!どこか遠くへ行きたいな…漠然と思っていると、友人から1本の電話。
「SLって興味ない?」
ある!知っているけれど乗ったことはない。なのに、どこか懐かしい気がする不思議な列車。SLに乗った自分を思い浮かべれば、頭の中はもう旅支度。よい旅の訪れはいつだって唐突だ。
行くと決めたら早速チケットを手配。向かうのは熊本県人吉。ここまで来たらと、帰りも観光列車「かわせみ やませみ」を予約。まるっと一日列車の旅に心が躍る。
さあ、出発!空は秋晴れ、旅日和。セットもメイクもいつもより気合を入れて。洋服もお気に入りの秋コーデ。
どんな景色に出会えるか、どんなグルメを味わうか…列車以外はノープラン。自称とびっきりの美女3人、気ままな列車旅といきますか!
クラシカルで勇壮。迫力ある姿にひと目惚れ


「これがSL!?」
JR熊本駅のホームに列車が到着すると、歓声があがる。と同時に至るところでシャッター音。全国屈指の人気列車といわれるだけあって、この日も多くの鉄道ファンが詰めかける。肥薩線全線開通100周年を記念して2009(平成21)年に復活した『SL人吉』。現役では日本最古となる蒸気機関車だ。甲高い汽笛、もうもうと吐き出される煙。漆黒のボディと力強いフォルムの8620形蒸気機関車、通称「ハチロク」に思わず「かっこいい!」とひと目惚れ。
車内は大正ロマン漂うレトロなしつらえ


3両編成の車内に踏み入ると、そこはレトロでシックな空間。木のぬくもりが心地よく、車内にも漂う煙の香りがSL旅の情緒をますますかきたてる。





車内では日付入りのパネルを持って記念撮影をしたり、記念乗車証にスタンプを押したり。鉄道の絵本などがそろう「SL文庫」やミニSLミュージアムもあり、大人から子どもまでしっかり楽しめる。
展望ラウンジからの景色は圧巻!沿線の住民たちも大歓迎


煙を吐きながら、『SL人吉』はJR熊本駅から新八代、八代駅へと進む。窓の外にはのどかな田園風景が広がり、景色を眺める時間がどんどん楽しくなっていく。そして、そんな景色をさらに満喫するなら、ぜひ1号車と3号車にある展望ラウンジへ。ローズウッドやメープルウッドが高級感を醸し、大きな窓からは流れる景色をパノラマビューで楽しめる。

時折、沿線の住民たちが笑顔で手を振ってくれたりと、うれしいおもてなしも。『SL人吉』が多くの人に愛されていることを実感できると同時に、心がほっと温かくなる。
熊本の味と清流・球磨川の美しさに感動



美しい景色と不意なおもてなしに心癒された後は2号車のビュッフェへ。ここではドリンクや軽食、オリジナルグッズのほか、九州の恵みをたっぷり詰め込んだオリジナル弁当『86弁当(ハチロク)』(1200円)などを販売している。※熊本~人吉行きのみ。晩白柚サイダー(260円)や、球磨焼酎を使った焼酎アイス(340円)など、熊本ならではの味の数々は、食べれば思わず笑顔!

郷土の味に舌鼓を打ちながらひと息ついていると、窓の外にエメラルドグリーンの清流が現れる。日本三大急流の1つにして、『SL人吉』の醍醐味でもある球磨川だ。
「うわあ!すごい!」「きれい!!」
秋の日差しに照らされる川面はキラキラと輝き、あたりを包む豊かな自然と相まってまさに絶景。ラフティングを楽しんでいるシーンに出合えることも。
「ずっと見ていられるね」
九州、いや全国でもそうそうお目にかかれない絶景に、そんな言葉が自然とこぼれる。


『一勝地駅』を経て終点『人吉駅』へ到着。城下町・人吉散策へ

八代から坂本、白石を経て、列車はJR一勝地駅へ到着。ここで10分ほど停車する。JR一勝地駅は、その駅名から、受験生などに縁起の良いパワースポットとしても注目されている駅だ。ホームでは『SL人吉』の運行に合わせて地元の物産品や農産物を販売しており、球磨焼酎のや名産の梨、栗を使った菓子などがそろう。試飲、試食もふんだんで、
「どぎゃんね、おいしかろ?」
と、愛嬌のあるコテコテの熊本弁で勧められると、思わず財布の紐もゆるんでしまうから困りものだ。
地元住民の温かい見送りに感激しながらJR一勝地駅を出ると、20分ほどで目的地・JR人吉駅へと到着。ここでも熱烈な歓迎が待っていた。SLの迫力や絶景以上に、この旅は人々の温かさが記憶に残る。人吉の地名の由来は“人良し”なのかも?



ここまで力強く旅人たちを運んでくれた『SL人吉』との別れを惜しみつつ、駅を出る。JR人吉駅は見どころ満載の駅で、時間になると扉が開き、人形が踊る「からくり時計」や、鉄道ファン必見の転車台、さらには、鉄道に関する展示やミニトレインなどが運行する人吉鉄道ミュージアム「MOZOCAステーション868」が隣接。人吉観光の基点としてだけでなく、観光スポットとしても人気が高い。機関庫に入る『SL人吉』を見送ったら、人吉の町へと繰り出そう。
城下町をぷらぷら。地元ならではのスイーツとグルメを堪能
鎌倉から明治時代に至る約700年にわたり、相良氏の統治下にあった人吉市。今も各地に歴史的文化遺産が数多く残る。そんな風情ある町並みを散策…の前にまずはランチ。地元の人がオススメ!と太鼓判を押す『球磨焼酎ト球磨ノ食 「開」』へ。

『開』がこだわるのは、とことん“球磨”の味。その日の気候や蕎麦粉の状態によって十割・二八・そと一を日替わりで打つ球磨郡産の蕎麦(750円~)は喉ごしも香りも絶品。蕎麦つゆもいいけれど、粗塩とカボスで食べると蕎麦の香りがより鮮明に感じられる。



「ん~~~!日本人でよかった」「蕎麦もだけど、ダシもおいしい!」
と、美女たちもご満悦。蕎麦のほかにも、衣サクサクで肉厚のカツがたまらない「かつカレーうどん」(850円)も店の名物として人気のメニューだ。また、球磨焼酎もあっさりした「減圧蒸留」、昔ながらの「常圧蒸留」と豊富な品ぞろえ。量り売り(100ml400円~、1合600円~)もしており、少量ずついろいろな種類を味わえるのもうれしい。明るい女将の人柄も魅力だ。
[球磨焼酎ト球磨ノ食 「開」]熊本県人吉市上青井町120-5 / 0966-22-8080 / 11:30~15:00(LO14:30)、18:00~22:00(夜は完全予約制) / 火曜休


また、『開』のすぐ近くには、由緒ある『青井阿蘇神社』が建つ。本殿や楼門などが国宝に指定されるなど歴史的価値も高く、地元では“青井さん”の愛称で親しまれている。

神社を参拝した後は、腹ごなしに少し足を延ばして鍛冶屋町へ。古い味噌・醤油蔵などがあり、城下町の風情を色濃く残している。
「ちょっと休憩しよっか」
その一言に美女たちの目がキラリと光る。女子のこの台詞は「甘いもの食べたくない?」と同義。もちろん反対意見などあるはずもなく、カフェ探し。見つけたのは『町家ギャラリー立山』。「おいしそうな予感がする~」と突入。

店内は、ほっと落ち着ける趣のある造り。ここは鍛冶屋町にあるお茶屋さんが営む和風カフェ。実は人吉・球磨地方は、熊本県内のお茶の3割を生産するお茶どころでもある。


看板メニューはもちろん、お茶を使ったスイーツ。番茶ジェラートや抹茶セット、立山の番茶プリン(各540円)など、良質のお茶の香り漂う品々がどれも上品で芳しい。庭園を眺めながらの一服はまさに至福。
「…帰りたくないんですが(笑)」
との声が漏れるのも納得のくつろぎが味わえる。
[町家ギャラリー立山]熊本県人吉市中青井町311 / 0966-24-0866 / 10:00~17:00 / 木曜休
お茶の香りとまったりとしたひと時に身も心も癒されたら、JR人吉駅へ。旅はここで折り返し。次は人吉~熊本間を走る「かわせみ やませみ」が待っている。
SL人吉

[SL人吉]【熊本~人吉】運行日:要問い合わせ / 1日1往復(全席指定) / 大人片道2640円(乗車券1820円、指定料金券820円)
【九州ウォーカー編集部/文=前田健志(パンフィールド)/撮影=福島啓和/提供=九州旅客鉄道株式会社】
前田健志
この記事の画像一覧(全33枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!
ゴールデンウィーク期間中に開催する全国のイベントを大紹介!エリアや日付、カテゴリ別で探せる!
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介