影山貴彦のテレビのホンネ。「落語家アイドル育成 文枝の上方ルーキーズ」
関西ウォーカー

あと20日あまりで平成が終わる。メディアが早くから連呼していたせいもあり、ここしばらく「平成最後の〇〇」という表現に、いささか慣れ過ぎてきた感があったが、4月1日の新元号発表を受けて、俄然新しい時代への気分が高まってきた。
新しい時代には、新しいスターの誕生が望まれる。当コラムでも折に触れ記しているが、メディアの「新陳代謝」、「世代交代」は極めて重要なことだ。
3月25日に放送された「落語家アイドル育成プロジェクト〜上方ルーキーズ〜」(NHK総合)。やろうとしていることは評価したい。番組を主宰する桂 文枝が、若き三枝時代に落語家という範疇を超え、アイドル的存在として芸能界にデビューした事実を知らない読者の方もいるだろう。「いらっしゃ〜い!」を始め、次々と流行語を生みだし、若者のみならず多くの人々から支持され続けた。だからこそ、「どんなに素晴らしい芸を見せても、そこにお客さんがいないとダメだ」という番組内の彼の言葉には説得力があった。今後の上方落語には、華あるアイドルが必要だと、文枝は強く考えているのだろう。
少し残念だったことがある。若手からベテランまでの落語家たちが、NHK大阪放送局に集結して披露したのは、座布団取りゲーム、ファッションチェック、ダンスだった。もちろん、座布団取りによる演者としての「運」の見極めや、本芸に留まらないプラスアルファのセンスを見出したいという作り手側の意図は分かる。だが、もう少し芸人らしい何かを見たかった。51人の参加者が13人にまで絞られ第1回は終了した。2回目の放送以降は未定で、視聴者の反応次第という。なかなか大胆な打ち出しだ。このまま尻切れトンボで終わることはなかろうが、次回以降は、芸人としての面白さを前面に出した演出を期待したいところだ。

【著者プロフィール】影山貴彦(かげやまたかひこ)同志社女子大学 学芸学部 メディア創造学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、関西学院大学大学院文学修士。「カンテレ通信」コメンテーター、ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。
関西ウォーカー
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