黒沢清監督インタビュー 憧れの地・ウズベキスタンでオールロケ!「観光地なのに下町っぽいのは大阪と似ている」

2019年6月6日 10:56更新

関西ウォーカー 山根翼

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映像作家として唯一無二の作家性で観客を魅了し続ける映画監督・黒沢清。第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞するなど、国内外問わず幅広い映画ファンから支持されている。最新作「旅のおわり世界のはじまり」は、かねて訪れてみたいと願っていたシルクロードの中心・ウズベキスタンでの全編オールロケに挑戦。黒沢監督に企画の成り立ちからウズベキスタンでの秘話、女優・前田敦子の魅力、そして故郷でもある関西の思い出などを語ってもらった。

実は関西出身の黒沢清監督。最新作は全編ウズベキスタンでのオールロケを決行!制作の裏側などを語ってくれた

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日本とウズベキスタンの国交樹立25周年を記念して制作された本作は、取材のためウズベキスタンを訪れたテレビ番組のレポーターがシルクロードでの旅を通じて成長していく姿を描いた作品。

映画「旅のおわり世界のはじまり」ビジュアル(c)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

主演を務めるのは「Seventh Code」「散歩する侵略者」に続いて黒沢組3回目の参加となる前田敦子。いつか舞台で歌うことを夢見るテレビ番組のレポーター・葉子を演じている。葉子と共に旅をする番組スタッフ役には加瀬亮、染谷将太、柄本時生が脇を固める。メガホンをとった黒沢監督が脚本も担当している。

映画「旅のおわり世界のはじまり」ビジュアル(c)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

「これは前田敦子しかいない!」

ー黒沢監督といえば、これまでにサスペンスやホラーなどさまざまな作品を手掛けられていますが、今回はなぜドキュメンタリーテイストの作品にしようと思ったんですか?

最初ウズベキスタンの文化や生活に深く根ざした作品は、何年も通ったり住んだりしないと撮れないと思っていました。でも、何も知らない日本人がウズベキスタンを訪れて、小さな苦労をたくさんするドラマをドキュメンタリータッチに撮れば、日本人が観てもウズベキスタンの人が観ても面白い作品になるだろうと思って、この物語を考えました。

ー前田敦子さんありきの企画だと思うぐらいの仕上がりでした。

脚本を進めるときは、いつも俳優さんを決めずに書くんですよ。でも今回は、テレビクルーが出てきて若い女性のレポーターが主人公だと考えたときに「これは前田敦子しかいない!」と思ったんです。前田さんとはこれまでに何度も仕事をしていますが、前々から孤立しても動じない強さをもった役をやってもらえたら一番引き立つんじゃないかと思っていて。今回は彼女がぴったりだと判断しました。

ウズベキスタンの独特な街並みにも魅了された黒沢監督「デザインが秀逸な団地とかがあるんですよ。裏通りとかもすごく面白かったです」

ウズベキスタンではアクシデントが。染谷将太の部屋に大量の〇〇が!

ーウズベキスタンに初めて訪れたときの印象を教えてください。

全然怖くない国でしたね。行く前は、何となく物騒なことをいろいろ想像していたのですが、行ってみたら全然怖くないなって。例えば現地の男性は髭を生やしている人がほとんどいないのですが、これは海外の人に過激な思想を持っていると誤解されたくないからだそうです。通訳役で出演してくれたアディズ・ラジャボフさんも普段は髭を生やしてないんですけど、役柄を考えて無精髭を生やしてほしいってお願いして、渋々生やしてもらったんです。撮影が終わるとすかさず剃ってましたね(笑)。何も知らないで行くと葉子のようにビクビクしそうですけど、実は怖い人はほとんどいないし、怖い目に合うこともないみたいです。

ー撮影以外ではいろいろとアクシデントもあったそうで(笑)

サマルカンドで撮影をしているとき、撮影隊が全員泊まれるホテルがなかなかなくて、まだ完成していないホテルに泊まったんです。部屋にテレビはあるんですけど、リモコンが無くて。どの部屋にも無いからしょうがないなって思ってたんですけど、最終日ぐらいになって染谷君が「僕の部屋に大きな袋がずっと置いてあって、さっき中を見たら大量のリモコンがありました」って(笑)

映画「旅のおわり世界のはじまり」ビジュアル(c)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

「日本の女優さんには珍しく孤独を感じる」女優・前田敦子の魅力

ー前田敦子さんは本当にスクリーン映えすると感じました。前田さんとは「Seventh Code」から3回目の起用ですが、最初に会ったときと比べて変化は感じましたか?

女優としての才能があるのは前からわかっていましたが、ますます的確な芝居をごく自然に演じてくれました。もちろん本人の努力ではありますが、持って生まれた才能もあると思います。何でもない表情も「それそれ!その表情」と見ていて惚れ惚れしました。

ーなんとなく海外が舞台というところとの相性の良さも感じました。

彼女は日本の女優さんにしては珍しく孤独を感じるんです。他の人と一線を画していて、だからこそ強い。他の誰にも似ていない「私は私なんだ」と。そういう気配をごく自然に身につけているんです。右も左もわからない海外でポツンと1人立っていると、強烈な存在感が漂ってくるんですよね。周りに妥協せず孤高のポジションでやっていく人なんだと、それこそが彼女らしいと思いました。

ー負けず嫌いな感じも役柄とリンクしているかのように見えました。

若いときから鍛えられているんでしょうね。どんな逆境にも弱音を吐かずにやってくれますし、過酷な環境でも全然平気でしたね。

映画「旅のおわり世界のはじまり」ビジュアル(c)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

ー後半ではエディット・ピアフの「愛の讃歌」の歌唱シーンにも挑戦されています。エモーショナルな歌い方でびっくりしました。

プロの歌手でもあるので気楽にやってくれるかなって思っていたら、歌が一番のプレッシャーだったみたいで。もちろんAKB時代の歌い方とも違いますし、名曲ですから「生半可な気持ちで歌えない」とずいぶん練習してくれました。うまく歌えるかどうかは、彼女にとって最も大きな試練だったみたいです

ーこの作品を観ると、前田さんのイメージが変わる人も多いかと思います。

そう思っていただけると僕としても嬉しいですね。前田敦子は女優としてここまでやれるんだと。それを少しでも示すことができたなら、この作品を撮った甲斐があるなと。

再タッグとなった前田敦子の変化について「足が速くなった(笑)。『Seventh Code』のときはドタドタって感じだったけど、今回は「あれ?素早い」って(笑)」

関西出身の黒沢監督 ウズベキスタンは大阪っぽい!?

ー黒沢監督は関西のご出身なんですね。

神戸なんですけど、大学から東京なので、この仕事を始めてからはほぼ東京です。帰ってくることはあるんですけど、あんまり関西出身な感じがしないかもしれませんね。

ー関西弁って出るんですか?

高校の友人と会うと突如出たりするんですが、映画に関しては標準語ですね。映画について本格的に考えたり人と語りあったりする経験は大学のときからなので、映画に関しては標準語でないと喋れないんです。高校の友人から「今どんな映画撮ってるの?」って聞かれると、語れないんですよね。詰まって(笑)

ー出演者に関西の方がいる場合、関西弁でお話しされるとかもないんですか?

一切出ないです。ずいぶん前に宝塚でテレビドラマを撮ったことがあるんです。スタッフも関西の方ばかりで、出演者も坂田利夫さんとか池乃めだかさんとかで。

ーTHE関西のメンツですね(笑)

そうなんです!でも、そういう方達とお仕事しても僕は全て標準語でした。周りから「え?関西出身なんですか?」ってびっくりされるぐらい全く出なかったです。意識的にそうしたわけじゃないですけど。

ー今回の作品でいうと、ウズベキスタンもちょっと大阪の街に雰囲気が似てる感じがしましたが(笑)

入り混じっている感じとかでいうと、東京よりは大阪の方が似てるでしょうね。観光地も綺麗にはしているんですが、洗練はされていないというか。観光地なのに下町っぽいところは大阪っぽいのかなって(笑)

関西での思い出についても語ってくれました!

映画「旅のおわり世界のはじまり」は6月14日(金)より、テアトル梅田ほかにて全国ロードショー。

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