初脚本を務めたドラマ「高校入試」が小説化! 著者・湊 かなえが描く入試とは!?

関西ウォーカー

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小説家の湊かなえが初脚本を務めることが話題になった連続ドラマ「高校入試」(2012年10~12月放送)。今回、遂に小説版も発表された。なぜ脚本を手がけることになったかから始まり、入試をどのように描きたかったか、そして群像劇の魅力についてまで語ってもらった。一視点だけでなく、いろんな視点から物事を捉えて、物語に落とし込む過程に触れられたインタビューになったように思う。

―まずは、書かれたきかっけを教えてください。

「書くきっかけは、テレビドラマの脚本のお話を頂いたんです。学校というワンシチュエーションでの閉鎖空間は、いつだろうと考えました。そしたら、お受験を描いたものはあっても、入試を描いたものはないなと思ったんです」

―普段、小説を書かれている中で、ドラマ脚本というお仕事はいかがでしたか。

「小説を書く前にシナリオコンクールに送っていた事もあったんですが、『地方在住では難しい』なんて言われていたんです。でも今回できて、色んなものの入り口はひとつじゃないなと思いました。スケジュール的にはきついかなとも思ったのですが、新しい企画をもらえたのは嬉しかったです」

―いざ、入試を描くにあたって、気をつけられた点はありますか。

「高校入試というテーマを決めてからも、先生の視点から描きたいというのがあったんです。それぞれ色々な人がいて、例えば毎年面倒くさいと思っている人もいたりとか。どんな捉え方があるかを考えながら、色んな年代の人の色んな主張を入れたいなと。採点とかの場面もそうですが、実際の学校の先生が見て、ちゃんと描いてくれてるなと思うくらいのリアリティを出したかったです。ひとつだけの視点ではなく、多くの視点を描いて、化学反応を起こしたくて。全部同じ方向を向かわないように、微妙に向かっている方向が違っている感じというか。そうすると、ひとりの人の計画が着々と進むより、興味が膨らむと思うので。でも、最後は一瞬でも同じ方向を向いたらいいなと」

―いい意味で主人公が特定されない感じがあるのが、良かったです。みんなが主人公にも思えましたし、仕組みが単純じゃないのが良かったなと感じました。

「そうですよね。学校ものって、弱いものが正しくて、権力があるものが間違えているパターンが多いんです。でも、権力があるものにも主張があって、色々なものを作り上げてきた葛藤もありますし。単純に、この立場が強いとか弱いじゃないと思うので」

―携帯やパソコンの取り上げ方も興味深かったです。

「世代が上の人には得体の知れないものだったりするので、どんな風に思うのかは考えました。若い人は憂さ晴らしでネットや携帯を使う場合もあるので、誰に対して言っているのかや、覚悟と責任を自覚しているのかなも考えました」

―受験では桜というフレーズがいろいろ使われますが、この物語での桜への解釈は一般的な解釈とは少し角度が違って、考えるものがありました。

「ウチの家には桜の木が植えていて、近所の人からは生い茂っているので、『気持ち悪い…』と思われているかもですが(笑)。1年の内の1週間だけ咲く中で、『今年の桜は、よく咲いた』と言われたり、秋に花が咲いて心配になったりとか、色々な状況があるんですよ。だから、春のその時限りじゃないなと。受験を失敗しても、その時限りじゃなくて、またスタートできると思うんです。受験に落ちただけで人間性をも否定されるような事もありますけど、花としてではなく木として桜を見るのもいいかなと思います」

―花が咲いたか咲かなかっただけでの評価でなく、どのように木として成長するかですよね。

「咲き方もそれぞれ違いますし、花が咲いたという昔で留まってしまう場合もありますから。受験に合格してから、勉強しない人もいますしね」

―先ほども少しお話したのですが、今回読み終えて改めて感じたのは、群像劇の面白さでした。

「群像劇が楽しいのは、多面的に見えたり、色々な人が関わる事での面白さなんですね。展開も予測できないし。今回は分刻みで描いた事で、全員の行動を把握するのは大変でしたけど。誰かより添える人や、自分に似た人を、物語の中で見つけてもらえたら嬉しいですね」

【取材・文=鈴木淳史】

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