【その2】絶賛上映中! 映画「そこのみにて光輝く」のヒロイン・池脇千鶴×呉 美保監督にインタビュー
関西ウォーカー
※【その1】の続き
─佐藤泰志さんの原作を映画化するにあたって、千夏のキャラクター像をどのように作り上げていきましたか?
呉「原作は24年前に書かれたこともあり、千夏はわりと雄弁で、積極的に男性を求めているように感じました。登場人物すべてに言えますが、原作の設定がバブルの絶頂期を背景にしていることもあって、その時代の底辺に生きる人たちの渇望がもっと強かったんです。でも、今、この物語を描くにあたって、一見みんなクールに見えますが、地方だと職にあぶれていたりと、生きにくいと思っている人たちはたくさんいると思ったので、今の時代にあった人物像にアレンジしないといけないとは思いました。特に千夏は自分を犠牲にして、お酒とキャンブル浸りの母親やからだの不自由な父親、前科者の弟など家族の面倒も見なくちゃいけない。それらを一手に引き受けていて一見独りよがりにも見える千夏ですが、今回の作品はあくまでもラブストーリーだから、観客の男性には千夏に惚れてほしいと思いました。それと同時に、同性から見ても千夏をどうにしかしてあげたい、彼女という人間を肯定してあげたいと思って、キャラクターを作り上げていきました」
─池脇さんはそんな千夏という役柄に対して、どんな準備をして臨まれたのでしょうか?
池脇「脚本がすごく優れていて、読んでいても疑問を抱かなかったんです。なので、一番むずかしいことでもありますが、脚本どおりに忠実に演じられればいいかなと思いました。ただ、映画はビジュアルのインパクトがとても大切だと思うので、見た目の役作りについては監督と話をしました。千夏の初登場シーンは脚本のト書きで“千夏がスリップ姿で現れる”とあったんですが、“さすがに今はスリップじゃないよね”という話になり…。なので、最近の女性はどんな格好をして家にいるのかとか、千夏のテーマカラーを決めたり、時間をかけて衣装合わせをしましたね。髪の色も明るい方がいいと思って、ドラッグストアへ行って自分でヘアカラー剤を選んで染めました。衣裳合わせの日は、黒のTシャツにデニムのホットパンツ、ハイヒールという自分が思う千夏っぽい服装で現場へ行きました」
呉「そんな池脇さんの姿を見た瞬間に“千夏だ…”って感動して泣きそうになりました(笑)。プロデューサーも池脇さんと気づかなかったくらい、そこには千夏がいましたね。脚本を書いている段階で、千夏が上手く描けなかったら、観客は作品に何の感情移入もできないのではないかと恐れていたんですが、池脇さんが千夏の格好をして現れた時にその不安がサッと消えました」
─本作では色気や憂いなど、さまざまな表情を見せる池脇さんも印象的です。監督として、池脇さんのどういった表情を引き出そうと考えていましたか?
呉「全部ですね。彼女がデビューした頃からずっと見ていて、かわいいというのもあるんですが、つやっぽさや、どうしようもない男を放っておけない母性だとか、女性のいろんな部分を全部出してほしいとお願いしました。あとは、普段は高音のかわいい声なのですが、千夏としてはトーンを低くしてほしいとは言っていましたね。そうすることで、彼女の新しい一面がまた見られるのかなって」
─ラストシーンで描かれる朝日が美しく、感動的なものになっています。どんなイメージで撮影をされましたか?
呉「私にとってこの物語はハッピーエンドではないんですが、最後になにが必要かと考えたら“救い”だったんです。これから、達夫と千夏にはもっと大変なことがあるかもしれないけれど、2人にも朝が来て“今日一日だけでもがんばってみようかな”と思えればいいなって。まさにそれが“そこのみにて光輝く”というタイトルに結びつくんじゃないかと思って、あのラストシーンにしました」
池脇「私は“そこでしか輝けない千夏”と解釈して、恥じも何もない魂のさけびのシーンとして撮影にのぞみました。千夏には自分を卑下する癖があって、このラストシーンでも、セリフの後に“ね、私ってバカでしょ?”って付いているような感じがするんです。そんな千夏を抱きしめたくても抱きしめられない達夫がいる。そんな2人のせつない関係がよく表現されたシーンでもあると思います」
【取材・文=リワークス】
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