初の“遊牧民”出身力士!怪物「逸ノ城」強さの秘密はモンゴルにあり

東京ウォーカー(全国版)

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人気が回復基調にある大相撲。先の秋場所の主役は、千代の富士と並ぶ史上2位の31回目の優勝を果たした横綱白鵬でもなければ、昨今のブームの立役者である遠藤でもなく、まだマゲも結えない入門から5場所目の逸ノ城だった。192cm、199kgの巨漢でありながら俊敏な動きで白星を積み重ね、1横綱2大関を撃破。白鵬と最後まで賜盃を争い、あわや100年ぶりの新入幕優勝も現実味を帯びるほどだった。11月9日(日)に初日を迎える九州場所では一気に新関脇に昇進。入幕2場所目での関脇は史上最速のスピード出世である。そんな逸ノ城の強さの秘密に迫る。

モンゴル力士の多くは首都・ウランバートル出身の“都会っ子”だが、逸ノ城はそこから西へ約400km離れた、車で8時間ほどのアルハンガイ県出身。少年時代はゲルで生活し、家では300頭以上の羊を飼っていた。初めてウランバートルに行ったのは13歳の時。「デパートを見た時はびっくりした」とカルチャーショックを受けたという

…そう、“100年に1人の逸材”は遊牧民だったのである。

モンゴルで約50人が参加した日本の相撲のセレクションがウランバートルで行われ、これに優勝したアルタンホヤグ・イチンノロブ(逸ノ城の本名)少年は、鳥取城北高校へ相撲留学するために2010年3月に来日。当初は立ち合いでうまく相手に当たることができず、女子選手にも勝てなかった。石浦外喜義監督からは「モンゴルへ帰れ」と何度も怒鳴られ、稽古場で涙を流すことも。しかし、2年生になると頭角を現し始め、同校のインターハイ全国制覇に大きく貢献するまでに成長した。

鳥取城北高校卒業後は同校にコーチとして残る傍ら、社会人選手としても活躍。実業団横綱に輝いたことで幕下15枚目格付け出しの資格を得て、2014年初場所で初土俵を踏むと期待どおりの出世を遂げ、所要4場所で入幕。角界関係者は「ケガさえなければ、末は横綱間違いなし」と口を揃える。“幕内デビュー場所”は度肝を抜く活躍を見せた“怪物”だが、「僕も普通の人間ですよ」と人懐っこい笑顔を見せる。いかついルックスとこのギャップが、特に女性ファンにはたまらないようだ。日本に来て刺し身が好物になった一方、苦手なのはカレー。「あの匂いと味は今もダメ」。映画好きでもあるが「怖いのは見ない。夜ひとりだと思い出すから」と土俵を降りたら意外と小心者かも?

武双山、雅山、把瑠都など…過去にも“怪物”と呼ばれた逸材はいたが、逸ノ城は彼らとは明らかに一線を画す。申し分ない体格と素質、“規格外”のパワーを誇りながら、決して攻め急ぐことはない。十分な体勢になるまで自分からは動かず、チャンスが訪れると一気に勝負に出る冷静沈着な相撲ぶりは、とても21歳の新鋭とは思えないほどだ。

今から30年前の1984年の秋場所、入幕2場所目だったハワイ出身の小錦も2横綱1大関を破り、千秋楽まで優勝を争った。角界の常識を根底から覆すほどの活躍は当時、“黒船来襲”と言われた。先場所の逸ノ城はそれ以来の強烈なインパクトを残したのだ。さて、その小錦だが、翌場所からはなんと連続負け越し。上位陣には徹底的にマークされ、分厚い壁に跳ね返された。小錦には初顔で苦杯を舐めた横綱千代の富士だが、以後はきっちりと“倍返し”以上のお返しを見舞った。その九重親方は「小錦もそうだったが、上位陣は負ければ必ず対策を練る。逸ノ城もすんなり上がれるほど、この世界は甘くない」と語る。秋巡業ではぶつかり稽古で連日、横綱鶴竜の胸を借りたが、早々にスタミナが切れて土俵上で大の字になる光景が何度もあった。周囲の力士には攻略のヒントに映ったかもしれない。

課題はスタミナ面と言えそうだが、親方衆の間では「来年中には大関に昇進しているだろう」という声が少なくない。もはや「横綱になれるか」ではなく、「いつ横綱になるのか」と囁かれているのも事実。ただし、若くして頂点に上り詰めると、未熟なままの「心」が災いすることも。思い出すのは土俵外の数々のトラブルがもとで角界を去ったあの“やんちゃ横綱”だ。「上に上がっても謙虚さと感謝の心を忘れない力士に育てたい」と、逸材を預かる師匠の湊親方(元幕内湊富士)は気を引き締める。【東京ウォーカー/記事提供=週刊ジョージア】

※記事の内容は、無料スマホマガジン「週刊ジョージア」から一部抜粋、再構成したものです

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