ジャン=ポール・エヴァンが広げるショコラの可能性

東京ウォーカー(全国版)

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1月21日、世界最大級のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」が東京で幕を開けた。その後、2月15日(日)まで全国6都市で開催され、世界トップクラスのショコラティエたちが、日本中をチョコレート一色に染め上げる。その中でも特に注目を集める、気鋭のショコラティエにインタビューを実施!業界を牽引する彼らが胸に抱く、ショコラ作りの流儀を探る。

<ジャン=ポール・エヴァン>

“ティッピング・ポイント”という用語がある。それまであたり前だったことが、ある一時を境にガラリと変わる瞬間を指す。ショコラ界に話題は数多くあるが、大きな変化は久しく起きていない。しかし、ショコラ界のティッピング・ポイントが近づいている。引き起こすのはきっと、この男になる。

――パリのマレ地区に新店をオープンしますが、どういうお店になりますか?

「基本的にはテイスティングができ、それから買う事もできる所をイメージしています。商品としてはボンボン・ショコラ、マカロンなど、グラス(アイス)は今のところ考えていません。それからアイスショコラや冷たいドリンクも考えていません。非常に現代的なお店にしようと思っています。まだはっきりとこれというものが定まってないので、お客さまの要望を聞き、それを見ながら考えていこうとしてます」

――1つのグラン・クリュ(希少価値の高いカカオ)を楽しめる店にしたいとお聞きしましたが?

「もちろん果物のように、その時着いたもの、その時入ったカカオの豆でご紹介できるものを提供していきます。時間とともにお客さまがいろいろなカカオ豆を発見できるようなコンセプトになってます」

――チョコレート好きのフランス人でも珍しいコンセプトですよね。

「“チョコレート好き”を意味する“アマトゥール“という言葉があるんですが、私にとってはあまりはっきりした言葉ではないんですね。やはり使うのであればチョコレートを良く知る人たち、プロではないんだけれどもチョコレートの事が良く分かり、カカオの豆がどこから来ているのか、それを知っているというよりは、知りたいと思う人たちということで、“コネスール”という言葉を使いたいです」

――東京の「サロン・ドュ・ショコラ」のお客さんはコネスールですよね?

「まぁ、両方ですね。『サロン・デュ・ショコラだ!わぁー』と言って、ショコラを食べて楽しむ人達はアマトゥール。それが進むとコネスールになります」

――段階があるんですね。

「あります。この2つの言葉に関しては鍵カッコに入れられるくらい大切な言葉です。新しいお店は、お客さんをアマトゥールとコネスールに分ける事はせず、私のショコラが好きだという人みんなに提供していきます。お店のスタイルとしてはショコラショー(ホットチョコレート)を提供して、それと一緒にブリオッシュなども召し上がっていただく。イタリアによく見られるスタイルだと思います。フランスでそういったスタイルのお店はないので、お客さん同士の触れ合いがあるような雰囲気のお店にしたいと思っています」

――今のブリオッシュの考え方と同じで「サロン・デュ・ショコラ」でチュロスをイートインとテイクアウトで展開しますよね?スペインなどで食べるように、それをオリジナルで作るという事ですか?

「そうです。フランスでもよく親しまれているチュロスを通じて、カカオの産地別とフレーバー別の味わいの違いを楽しんでいただきます。産地別のソースをそれぞれ味わうことで、カカオの産地を巡る旅に出られます。フレーバー別のソースでは、素材同士の相性のよさと個性の違いを感じていただけます」

――アラン・ミリアさんとのコラボレーションはもう11回目ですが、今回はライチでやられるのですよね?

「そうです。一緒に召し上がっていただくガトーを作ります。ノワールだけだと強いのでミルクを入れて優しい味にしています。ミリアさんのマンダリンジュースを使用したクレーム・マンダリンの中には、ロランジェの『ルナ』という胡椒をアクセントに使っています。切り口がとても複雑になっていて、上からムースショコラのレとノワール、それからビスキュイ・サシェールというザッハ生地のような目の細かい生地が入り、その下にクレーム・マンダリン。次にアーモンド風味のビスキュイがあり、その下がカスタードとメレンゲを合わせたシブースト・クリーム。シブースト・クリームの下はキャラメリゼしてあります。続いてムース・ショコラ・ノワールが入り、下にビスキュイ・サシェールと、全部で7層になっています」

――話が少し変わりますが、今年もカカオ農園に行かれたんですか?

「今年は行っていません」

――今、ビーントゥバー(カカオ豆からチョコレートまで一貫生産すること)をやろうとしてる人が増えている事についてどう思われていますか?新店舗はそういうコンセプトでやる訳ですよね?

「まさしくその通りです。今はテストの段階なので小さな機械で試験的に行っていますが、いずれは大きな単位で展開していきます。小さな機械は味見用でテストに使ってますが、大きな単位でできる機械がすでに届いているのでいずれそれで展開する予定です」

――自分でクーベルチュールを作るということですか?

「もちろんそうです」

――いつから始めるのですか?

「まずは『サロン・デュ・ショコラ』が終わってからですね。機械を入れるための工事もしなくてはいけないし、それからカカオの倉庫も必要だし、すごく複雑です」

――カカオはどこのものを?

「ブラジル、ペルー…まず1つから始めますが、たくさんの国々から少しずつ取り入れていこうかなと思ってます」

――機械の種類も多いですよね?

「6つの機械がありますね。焙煎機、ウイノワー、粉砕機、リファイナー(精製機)、コンチング。粉砕機は2台です。ですから合計6台です」

――今まで使っていたクーベルチュールを減らすということですか?

「いえ。ごく一部の珍しい豆とか、特別な豆だけをここでやるのであって、少しずつ作る予定なので、基本的にはメーカーから買います。ここで作るクーベルチュールは業務用に販売するのではなくて、あくまでもジャン=ポール・エヴァンのためだけです。自分の目的は良い品質のもの、特別なものを自分のところで使いたいというだけの事なのです」

【東京ウォーカー/記事提供=サロン・デュ・ショコラ オフィシャル・ムック2015】

※記事の内容は「サロン・デュ・ショコラ オフィシャル・ムック2015」から一部抜粋、再構成したものです

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