フィギュア女子の星・樋口新葉、自信から確信へ

東京ウォーカー(全国版)

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久し振りの光景だった。かつては毎年のように日の丸を掲げた、世界ジュニア選手権での日本女子代表。実に2010年の村上佳菜子以来、5年ぶりの日の丸がエストニア・タリンの地にはためいた。

成し遂げたのは樋口新葉。試合前から「表彰台を目指す」と公言し、それを実行した。同じく銅メダルを獲得した12月のジュニアグランプリファイナルよりも、ロシアのメドベデワ、サハノビッチとの点差を大幅に縮めた見事な演技だった。

ショートプログラムではトリプル+トリプルのコンビネーションジャンプで若干のミス。しかしその他の要素は完璧に決め、最少失点で3位通過。勝負のフリースケーティングを迎えることとなった。

フリースケーティングでは、冒頭のトリプルルッツ+トリプルトゥループをきれいに決めた樋口は、スピード満点の滑りでエレメンツを次々とこなしていく。

朝の練習で珍しく苦労したサルコウも問題なし。ジャンプはパーフェクト、スピンはレベル4、しかもすべてのエレメンツに加点がつく圧巻の演技を成し遂げた。

演技を終えた時、精根尽き果てた樋口は「立っていられないかも」という感覚を覚えたそうだ。「自分の演技に、自分でも感動した」という。それほどまでにすべてを出し切った演技だった。

演技後の取材で樋口は、課題としていたスピードに乗った演技ができたことを喜んだ。トリプル+トリプルの成功のためにスピードを意識したというが、単にこの試合の結果のためだけではない。

「来季はトリプルアクセルをプログラムに入れます。トリプル+トリプルも、新たな組み合わせに挑戦します」。

そう、さらなる高難度の技を成功させるために、スピードの強化は避けては通れない課題なのだ。そして、今回は後塵を拝したロシアの2人についても、「来季は勝つ」と宣言。

「来年は、ジュニアグランプリファイナル、世界ジュニア選手権、両方とも優勝します」。

小気味良いほどに、強気な言葉が飛び出す。決して自らを鼓舞するために強い言葉を選んでいるのではなく、明確な自信に裏打ちされた言葉と感じた。

「練習からしっかりやれば、試合でもいい演技ができるということを学びました。それが今回の一番の収穫です。以前も決して練習で手を抜いていたわけではなかったんですが、気持ちが入らず、思うように体が動かないことがありました。それが世界ジュニアまでの調整ではしっかりやれたんです」と、その根拠も語ってくれた。

今回、練習ですらなかなかできない、完璧な演技を試合本番で決められたことに、今までの努力は間違っていなかったと確信したようだ。

今季の樋口は、激動のシーズンを過ごした。それまで取材を受ける機会もさほど頻繁ではなかった選手が、全日本ジュニア選手権から一気に衆目を集める存在となった。

自らを取り巻く環境のあまりの変化に、本人も戸惑っていた。最もきついプレッシャーを感じたのは全日本ジュニアだと語る。フリー演技の点数が出た時、プレッシャーから解放された樋口は人目もはばからず号泣した。

「今季、最もうれしかったのは全日本ジュニアでの優勝です。あの厳しい状況を乗り越えた経験が、その後のジュニアグランプリファイナル、全日本、世界ジュニアでの結果につながったんだと思います」。

大舞台での戦いを終えたばかりだというのに、樋口は「早く練習したい」と口にした。練習に向かう気持ちが、今までよりも強くなっていると語る。

「表現力の点数でまだまだロシアの選手に負けています。来季に向けて、表現の仕方、体の動きを磨いていきたい。もっと難しいジャンプも跳ばなければなりません。平昌五輪の頃には、トリプルアクセルは必須の要素になっていると思います」。

本人は課題をいくつも口にする。ただ、現在でも素晴らしい努力を続けている選手だ。国際大会での点数面の評価は後からついてくる。

「日本のジュニア女子を引っ張っていかなければならない」と自覚しているというが、いずれジュニアだけではなく日本のフィギュア界を背負って立つことになるはずだ。【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】

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