アリになった気分で昆虫世界が楽しめる!映画「アリのままでいたい」撮影総監督・栗林慧にインタビュー

関西ウォーカー

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昆虫の世界を迫力満点の3D映像で描いた映画「アリのままでいたい」。カブトムシとクワガタムシの死闘やカマキリの一生など、昆虫たちの生態をダイナミックに、時にはユーモラスに描写し、大人から子どもまで楽しめる作品になっている。撮影には世界初の「アリの目カメラ」と呼ばれる特殊なカメラが使われ、日頃は目にできないシーンも多数登場する。その撮影総監督を務め、生物生態写真の世界的権威としても知られる栗林慧氏に撮影秘話を聞いた。

−今回は私たちにもなじみ深いカブトムシやクワガタムシ、カマキリなどが登場しますが、どこで撮影されたのですか?

栗林「大半は現在私が住んでいる、長崎県平戸市で撮影しました。典型的な農村地帯で、林と野原で構成された自然環境です。林の主役をカブトムシに、野原の主役をカマキリにし、その一生を追いながら、周囲に住む昆虫たちの興味深い行動を集めました。なじみ深い昆虫たちの知らない部分を見て、興味を持ってもらえると思います」

−一番お気に入りのシーンはどこですか?

栗林「子供の視点で考えれば、昆虫の王者カブトムシの闘いぶりです。より迫力のある映像になるよう、離れて撮影するのではなく、自分も一緒に縄張り争いをしている気分になるよう、できるだけ肉薄して撮影しました。ほかにカマキリの誕生や、カマキリのオスがメスに食べられてしまう場面も、厳然とした事実として受け止めてほしいと考え、あえて入れています」

−ずっと昆虫写真を撮ってこられて、動画とはどういう違いがありますか。

栗林「それぞれよさも難しさもあります。写真は最も特徴的な一瞬を切り取って、それを永久に保存するすばらしさがありますが、その1枚だけでは説明が必要です。動画は見た人がダイレクトにそのまま感じ取って、説明なしに内容を理解できます。カブトムシのおしっこのシーンも見ただけでわかりますよね。ただ動画は動きに意味があるので、その一部始終を記録する必要がありますが、相手は昆虫なので驚くと逃げたり、行動を中止することもあるわけで、そこは注意が必要です」

−「アリの目カメラ」はより昆虫によった映像を可能にしたわけですね。

栗林「これは撮影用のレンズではなく、医療用の内視鏡カメラのレンズです。今回はその3D用のものをカメラに取り付けて撮影を行いました。これならレンズの先端だけを昆虫に近づければいいので、昆虫たちがこちらを意識せず行動を続けてくれました。ただ、撮影用のレンズではないため、ピントが4センチに固定されているので、カメラにレールを付け、昆虫の動きに合わせててレンズを近づけたり離したりして撮影しました」

−栗林さんご自身が一番好きな昆虫は?

栗林「僕はアリが一番好きなんですよ。カブトムシやカマキリは単独で行動しますが、アリは家族で生活し、仲間と協力し合って生きています。非常に興味深いくらしぶりです。その姿は人間とよく似ていて、その行動を記録したいと常に思っていますが、十分撮れていない部分もあって、いまもアリは新鮮な気持ちで追いかけています」

−この映画を通じて伝えたいことをお聞かせください。

栗林「昆虫と触れあうことは子どもの成長過程で必要なことです。おもちゃみたいに遊ぶことで、命のなんたるかが勉強できます。昆虫を捕まえてうっかり死なせたり、足をもぎ取ってしまったりすることで悪いことをしたような、嫌な思いをすることも大事です。それによって、加減を知る。他人をここまでいじめたら大変なことになるといったことを自然と理解できると思います。昆虫はずっと人間の隣人でしたが、ここ50年ぐらいの間に人間との距離が遠のいてしまいました。でも、昆虫がいなくなると果物が採れなくなったり、花が咲かなくなったりいろいろな問題が出てきます。そういう生き物が足もとで一生懸命生きているのだということを、映像を通して子どもたちに見てもらいたいと願っています」

【取材・文=ライター鳴川和代】

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