映画「にがくてあまい」川口春奈インタビュー

関西ウォーカー

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小林ユミヲ原作の人気漫画を、川口春奈と林遣都の共演で映画化した「にがくてあまい」が9月10日に全国公開された。容姿端麗だがどこかがさつで野菜が嫌いなキャリアウーマン・江田マキと、ベジタリアンで料理上手な男子校美術教師・片山渚が、ひょんな切っ掛けで同居することになり、様々な葛藤を抱える二人が“食”を通して成長をとげ、距離を縮めていく物語。劇中でもカギとなる言葉“一物全体”(食べ物は、できるだけ食材を丸ごと使って食するのがいいとされること)の通り、さりげなく鳴る生活音に野菜のみずみずしさや彩り鮮やかな料理、そして役者の表情ひとつをとっても、余計なスパイスで取り繕うことなく、本来の魅力を丸ごと生かすオーガニックな作品に仕上がっている。今回は、ヒロインの江田マキを演じた川口春奈に、そんな本作とどう向き合い、どのような思いを込めて挑んだのかをたっぷりと語ってもらった。

ヒロインを演じた川口春奈。映画「にがくてあまい」は、大阪ステーションシティシネマほか、全国の上映劇場にて公開中


■本作で演じているヒロインのマキは、日々葛藤しながらも邁進する何事にも一生懸命な女性。川口はマキの魅力を、いかに引き出して観客に伝えるかを特に意識して演じたという。

「マキはすごく真っ直ぐで、嘘がなく、物事をはっきりさせたいタイプの女性です。だからこそ、恋や仕事、家族のことなど、様々な問題を抱えながらも、すべてに全力で頑張ろうとする。だけど完璧な人間ではないから、当然すべてがうまくはいかず、大人なのに悩んだり泣いたり、行き詰ったりもします。だけど、そういうことって誰にでもあると思うんです。そういった部分をどういう風に演じれば観ている人に共感してもらえるか、完璧じゃないからこその可愛さや弱さ、いつも一生懸命な彼女の魅力が伝わるかをしっかりと考えながら演じました。また、葛藤しながらも仕事を頑張っている人へのエールになる作品でもあるので、そういう人達の背中を押せるように、とにかく思いっきりやろうと決めていました。本当に頑張っている人って美しいじゃないですか。だからどれだけ汚い顔をしてもいいから、綺麗に映ろうとは思わなかったです。そもそも、そういう役ではないですしね」

■物語は、マキが林遣都演じる男子校のイケメン教師・片山渚と出会うことで展開していく。一方的に恋に落ちたマキが、半ば強引に渚と同棲生活の話を進めて、会社の同僚にも“彼”の存在を自慢げに猛アピール。しかし、実際の二人は、マキが思い描く理想の関係とはいかず、顔を合わせれば喧嘩ばかり。それでも大人の対応を続ける渚を、遂には押し倒して泣きついてしまう場面も。

「不思議なことに、マキがそういう積極的な行動をしていても、嫌な女だなんて思わないんですよね。それは、マキが子供みたいな部分を持っているからだと思います。大人のふりをして外では取り繕っていても、幼い心や乙女な気持ちというのは、皆さんにもあると思います。マキの姿を見て、『(未だに幼い心を持っているのは)、私だけじゃないんだ…』と思ってもらえたら嬉しいですね!」

■そんな自由奔放なマキに、ドライだけど優しく寄り添い続ける渚。彼はゲイでベジタリアンという特異なキャラクターだが、川口はどう捉えたのだろうか。

「渚も完璧な人間じゃありません。トラウマだったり苦手なことを抱えながら生きているので、そこがマキと共通しています。不器用だけど、人の痛みを感じて思いやることができる綺麗な心を持っているからこそ、最終的には友情とも恋愛とも違う、そばにいると心が落ち着く関係になっていく。林さんは、そういった渚の人物像を丁寧に演じながら芝居をリードしてくれたので、私も素直について行くことができました」

■初共演にも関わらず、息の合った芝居をみせてくれた二人。特に思い入れに残っているシーンについても話してくれた。

「渚とは言いたいことを言い合ったり、感情をぶつけ合うシーンが多かったのですが、湧き出てきた感情をそのまま相手にぶつけて、するとまた返ってきてムカついて、またぶつけるというキャッチボールが凄く快感でした。ムリして喧嘩を演じているのではなく、本当に腹立ちながらやっていたので、そこはしっかりと役を生きていたのかなと今になって思います。やっていて恥ずかしくなったのは、ゴーヤの冷製茶碗蒸しを作るシーン。セリフについても特に演出があったわけではなく、監督に『とにかく二人で楽しそうにやってくれ』とだけを言われて、カメラがずっと回されていたんです。恋人同士でもない男女が一緒にお料理をするなんて、演じている時も、完成した作品を観ていてもやっぱり恥ずかしかったです。だけど、その距離感が逆にリアルでよかったのかなと思っています」

■渚の作る野菜料理を、野菜嫌いのマキがとにかく美味しそうに食べるシーンも印象的だ。

「食べるシーンは、一番作っていない素の部分です。作り込んだリアクションをするよりも、私が素直に感じ取った方がお客さんにも伝わるかなと思って。実際、どのお料理も本当に美味しかったので、美味しいリアクションが自然と出てきましたね。普段は、なかなか自分のために時間と手間をかけて料理をすることがないので、マキみたいに料理を作ってくれる人がいて、あれだけ健康的なご飯を食べさせてもらえるなんて羨ましかったです」

■劇中では、苦手なものやトラウマと向き合っていくことについてマキが語るシーンがある。川口は今、マキと同じようにどんなことと向き合い、克服しようと努力しているのか聞いてみた。

「やっぱり私もマキや渚と同じように完璧ではないし、むしろコンプレックスの方が多いぐらいです。だから今は、なかなか好きになれない自分のことを先ずは知って、嫌だなと思うところを直していきたいなと思っています。そこから、人と向き合っていくことが大事なのかなと。体力も気力も使う難しいことだし、嫌なところや小さな悩みが多すぎて、葛藤の日々ですが…」

■シンプルだが深みのあるタイトル「にがくてあまい」。様々な解釈のできるこの言葉について、川口はどのように捉えているのだろうか。

「意外と深い言葉ですよね。『そう簡単には、うまくいかない』という感じでしょうか。私もよく、上手くいきそうに思えて途中で狂ってしまい、『いつもこうだなぁ。運が悪いなぁ』と落ち込むのですが、実はそういうことばっかりではなくて、悪いことが続けば良いこともやってくる。マキちゃんも渚も完璧ではないし、100%恵まれた環境という訳じゃないけど、なんとか前に進んで頑張っている。大人だけど失敗することがある人たちへのメッセージが、タイトルには含まれているのかなと思います」

■最後は、読者に向けてメッセージを送ってくれた。

「“一物全体”など、後から考えてみると深いなと思うような言葉が散りばめられているので、自分の環境や苦手なものに投影して、少しでも勇気づけられる作品になればいいなと思います。また、ラブコメディーですが家族の話でもあるので、身近にいる大切な人との向き合い方を、改めて考える切っ掛けになれば嬉しいです」

映画「にがくてあまい」は、大阪ステーションシティシネマほか、全国の上映劇場にて公開中。

【関西ウォーカー編集部/大西健斗】

大西健斗

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