フィギュアスケート・近畿ブロック大会レポート5 【シニア男子】
東京ウォーカー(全国版)
今季こそは結果を出したい。高い意識を持って臨む、中村優

以前よりそのポテンシャルを高く評価されていた中村優(なかむら・しゅう)。その実力をなかなか発揮できずにいたが、今季は心機一転、濱田チームに移籍し、結果を出すことにこだわる覚悟を決めたのだ。この試合ではショート、フリー、共にトリプルアクセルを美しく決め、昨年とは違う、というところを満員の観客にアピールした。
「7月の末ぐらいから濱田先生のチームに移籍しました。自分の中でスケートに対する意識が変わってきて、やるからには目指すところを目指してやりたい、そんな思いから移籍を決断したんです」
その目指すところ、とはどんなことを考えているのだろうか。
「今季はユニバシアードに出たいんです。そして将来的には世界で通用する選手になりたい。移籍してまだ2か月半ですが、手応えを感じています。この調子で全日本に向けてしっかり仕上げていきたいと考えています」
現在は練習量がかなり増えたという。本人の取り組む姿勢が変わったことも大きかったようだ。フリープログラムでは現在、トリプルアクセル1本の構成だが、「後半のダブルアクセルは濱田先生からの指示だったんですが、西日本辺りではこれをトリプルアクセルにしたいと考えています。ショート、フリー、続けてトリプルアクセルを決めたのは初めてです。自信になりました」
中村優は釧路市の出身だ。スケートを始めた頃のコーチは須貝麻里子。決してフィギュアスケートが盛んとはいえない釧路の地から、柴田嶺を始め、有力選手を育て上げた名コーチだ。中村選手は中学生の頃には頭角を現し、注目を集める存在になったのだが、高校1年生の時に大阪の長光コーチのチームに移籍することになった。須貝コーチは当初、移籍には賛成していなかったという。「移籍を考え始めた当初は僕も言い出しづらいところがあって、須貝先生も引き留めていました。でも最後は自分の意志で決めました。須貝先生からも最後には『頑張って』と言ってもらえました。感謝しています」
その須貝コーチが昨年、56歳の若さで亡くなった。生前、須貝コーチと親交のあった私は、是非中村選手にエピソードを聞きたいと昨年の全日本ジュニアでお願いしてみたのだが、その時は中村選手が涙ぐんでしまい、それ以上聞くことは出来なかった。それからおよそ1年、改めてお願いしたところ、「いいですよ」と快く思い出を語ってくれたのだ。
「ご病気だということを母が電話で聞いて、それで僕もお見舞いに行けたんです。お見舞いの1か月後に亡くなりました。釧路に帰ったら会いに行きたいです。亡くなった直後は実感がなかったんですが、時間が経ってから辛くなりました」
そんな思いも胸に、中村優は今季の戦いに臨む。
「今年は環境を変えて結果を出したいんです。須貝コーチ、長光コーチ、本田コーチ、両親・・・そういった今までお世話になった人達のためにも、結果を出したい。自分の我儘でここまでやってきました。だからしっかり結果を出したい。やり切りたいんです」
様々な点を改善し、「いずれは230点ぐらい出せるようにしたい。来季には4回転ジャンプにも挑戦したい」と語る中村選手。今からでも遅くはない。どれだけの頑張りを見せてくれるのか、期待して見守りたい。
今季は勉強との両立が目標。本田太一

「今日の演技はきつかった。でも久し振りの演技で楽しめました」
ショートプログラムを終えての第一声。息を切らせながらも充実感を漂わせる表情で、本田太一はそう話した。勉強との両立に苦労している話は聞いてはいたが、本当に練習の時間が取れずにいたようだ。「氷に乗ったのは、7月はゼロ、8月からも二日に一回です。今回、普段会えない友達と一緒に練習できたことが楽しかった」そんな状況の中、最善の演技を披露し、しっかりとまとめることが出来た。そして迎えたフリーでも、「練習できてない割には良かった」と、試合前の不安を払拭する素晴らしい内容で3位入賞を果たすことが出来たのだ。姉妹が揃って表彰台を決める中、「自分も何とか3位入賞を、と頑張りました」と兄としての威厳を保つことが出来た。
「ミスはルッツと、後半のフリップが回転不足になったぐらいです。後半のジャンプは詰まっていたんですが、詰まりながらも降りられて良かった。西日本に向けてこれまでよりは練習は積めそうです」
妹、本田真凜と揃っての全日本出場を目指すことになるが、「この構成でもミスなくやれば何とか突破できると思う。ミスのない演技を目指したいです」と今回の演技で手応えを掴んだようだ。
本田太一が勉強との両立に苦労している理由、それは彼の将来設計とも密接に関係している。一般入試も視野に入れ、勉強をする必要があるのだ。
「大学は関大に行く予定なんですが、行きたい学部があるのでしっかり勉強しています。経済学を勉強したいんです。まずは推薦入試を受けて、推薦で落ちたら一般入試を受けることになります」
「昨年の西日本以降に進路のことを考え始めました。小さい頃から『勉強とスケート、両立頑張ります』と言ってきたが、本当に両立するということがどんなことか、どんなにきついか、ようやく分かってきました」
今は以前の状態に戻すことを目指すのが精一杯だというが、「西日本に向けては練習量を増やしていきたい。そして来年、大学に進学したら新しい技の習得も目指したい」と語る。まずは西日本を通過し、兄妹揃って全日本で活躍することを期待したい。
※「シニア女子」編へ続く 【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image works)】
編集部
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