僧侶が描く漫画が楽しくて深い!「仏教に関わる中で見えてきたことを表現したい」/ヤンキーと住職【作者に聞く】
――「仏教」をテーマに創作活動するなかで、気をつけていたことはありますか?
「仏教の教えを短い漫画の中で説明するというのはすごく難しい。また、ある意味ですごく気をつけないといけないと思っています。言い方が難しいのですが、短い漫画で分かることは限られている。その限られた中で伝わることや生まれることも確かに多くあるのです。しかし、やはり宗教に関わることは、『いのちの問題』に関わるということでもあります。先人たちが大切に伝えてきた教えです。ある意味で厳粛な教えです。それを軽く扱ったり、適当な理解で描いたりはしたくありませんでした。
また、読んだ人が『分かったつもり』になって終わる作品にもしたくなかったですね。読んだ人がヤンキーと住職が仏教を学ぶ姿に何かを感じ取って、あらためてご自身でお釈迦さまの言葉や、歴史上の僧侶の言葉に触れてくれたらなと思っていました。だから、『これが仏教』だとか、『これこそが本当の仏教である』ということは描きたくなかったですし、描いてはいけないと思っています。また、単なる解説漫画は描けないし、そもそも自分の仕事ではないと思っています。
ですから自分の中では、私は仏教に出遇ってこんなことを感じましたとか、こういう発見がありました、こんな風に見方が変わりましたということをストーリーに落とし込み、表現するように心がけました。
また、『近藤丸の漫画は分かりやすい』と言っていただくことがあり、これは大変光栄なことです。一方で、『分かりやすさの落とし穴』もあると考えています。仏教は感動して救われたり、分かって救われる訳ではないのです。私に仏教を教えてくれた僧侶の先生がいるのですが、その方は常々『感動する教えは危ない』とおっしゃっていました。感動することで体験を握ったり、それに囚われたりすることがあるからです。でも仏教は自分が握るような知識ではなく、何度何度も自分が問い直されていくような教えです。そのあたりに注意して描きました。自分自身、仏教のこともまだまだ分かっておらず、学びの途中です。分りやすさや、分かりやすく描くなんて、そもそもおこがましい話です。
ただ、やっぱり自分は仏教に助けられた。ですから、自分が仏教に出遇った喜びを漫画で表現していきたいなと思っています。それをきっかけに読む人にも、教えを尋ねにいってもらえたら嬉しいです」




――紙の書籍の発売が決まった際のお気持ちはいかがでしたか?
「紙の本になることで、もっと多くの方に手に取ってもらえると思うので素直に嬉しいですね」
――周りの方から2023年2月2日(木)に紙の書籍が発売することについて、何か反応はありましたか?
「実は以前、『ヤンキーと住職』の初期のストーリーだけを入れた電子書籍は発売していました。しかし多くの方から『紙の本にしてほしい』と、2年以上前から言われてたんです。所属しているお寺にも、『紙の本はないのでしょうか?』という電話が結構かかっていました。そういう紙の本を待ってくれていた人たちを中心に、『ようやく書籍化して良かった』と言って頂きました」




――読者にメッセージをお願いします。
「気持ちをこめて丁寧に描きました。仏教が何となく気になる人から、全然仏教のことを知らない人まで、仏教を知ったり学んだりする第一歩としておすすめの本です。今まで知らなかった仏教の一面が知れると思います。
また仏教に親しみのある人にも、ヤンキーと住職の姿を通して、改めて考える材料になるのでは?と感じています。新刊には今まで描いてきたストーリー以外にも新作や、ヤンキーと住職のその後を描いた60ページほどの描き下ろしに、コラムも収録されています。楽しく仏教を学べる漫画になっていますので是非手に取ってみてください」
書籍版「ヤンキーと住職」は2023年2月2日(木)に発売。SNSでバズったエピソードはもちろん、新作描きおろし漫画も収録されていて、読み応え抜群の一冊だ。2人のやり取りから、より良く生きるためのヒントが見つかるかもしれない。
取材・文=石川知京