家では明るく振る舞う娘は、学校で4年間もいじめに耐えていた。家族の戦いの記録に反響多数【作者に聞く】
「真実」は語り手の視点により変わる。複数の立場からいじめを描く
主人公は母親であるナツミさんだが、漫画では、いじめを傍観者、被害者、加害者の視点から少しずつ、丁寧に紐解いていく。さやけんさんは「語り手のイメージや想像に過ぎないことであっても、その視点のみに焦点を当てて描く」ことを心掛けているという。
「『真実』は語り手の立場と視点によって大きく変わります。その人が嫌いだからとか、話し方が気に入らないからとか、派手だから、目立つから、暗いから、よそ者だからと、その印象に惑わされることも多いと思います。それらの言葉が全て真実とは限りませんし、その裏側ではもっと複雑な事柄が含まれているはずです」



複数の視点で描かれる漫画は、私たちに「もし自分の立場だったら」と問いかけてくる。さやけんさんは漫画を通してどんなことを伝えたいと思っているのだろうか。
「いじめの加害者が悪いのは当然ですが、誰が加害者になるかはわかりません。心に傷を負った被害者にとっては、傍観者も、助けてくれなかった先生や大人も、加害者と何ら変わりはありません。大切に育て、人を敬う気持ちを教え続けていた我が子が結果的に加担していた、ということも決して少なくないと思います。勇気を出して声を上げれば自分も被害に遭うかも、というのは、子供たちにとっては恐怖でしかありません。どうすれば被害にあった子が相談しやすくなるのか、先生はどう動くべきなのか、傍観者になってしまった子はどうすればいいのか。我が子がいじめに加担していた場合、親はどうするべきなのか。それを考えるきっかけになればと感じています」


