男を遠ざけてきた母が、ある日突然「いつまで独身でいるつもり?」と聞いてきた。過干渉な母の呪縛をメンエス嬢が断ち切る話【作者に聞く】

自身を縛り付ける誰かからの心ない言葉は、鎖でも太いロープでもなく、あくまで細い糸

母親から逃れるために一人暮らしをはじめ、恋人もつくった若菜。だが恋人への愛情が本物ではなかったから、キス以上のことができなかったのだろうか。

「こういう過干渉な母親から逃れるきっかけとして、恋人をつくる人は多いように思います。でも彼氏ができたとしても、これで解放されたとは言いきれないのではないでしょうか。若菜は母親の話し相手になることで、母親の役に立つ『いい娘』でいたいと思うように育てられました。若菜自身もその役割を引き受けることに、満足していました。なので、この状態のまま母親から離れたとしても、彼氏のことを無意識に『母親の代わり』として接してしまい、解決には至らないように思います」


また蒼乃シュウさんいわく若菜のようなタイプは、自分から好きになって付き合うよりも、言い寄られて仕方なく…というパターンが多いように思うとのこと。

「幼いときから母親の顔色をうかがってきた若菜は、自分よりも彼氏の気持ちを優先してしまい、嫌われたくないからなんでも言うことを聞いてしまうタイプだと思います。彼氏も『この子なら思い通りにできそうだ』などと思って、近づいてくる人間ばかりのような…。若菜は無意識でそれに気づいていたから、『これ以上はだめだ』と体が叫んでいたのでしょう」

母親から逃げるように彼氏をつくっても、まだ操られているように感じる若菜。そんな彼女に加恋は、「あなたはもうお母さんの思い通りにならなくていい。自分の人生を生きて」と言葉をかけ、身体中に巻き付いていた細い糸を断ち切る。この描写に込めた思いを教えてくれた。

「母親から巻き付けられたのは、鎖でも太いロープでもなく、あくまで細い糸です。切ろうと思えば自分でも、断ち切ることができます。親や誰かからの心ない言葉に傷つけられ、トラウマのように縛られていると感じる人も、気持ち次第で断ち切ることができるのではないでしょうか。すべての人が自分らしく生きていけることを、加恋は願っています」


加恋の施術を通じて、母の呪縛から逃れるために恋人を作ろうと焦っていたことに気づいた若菜。これからは自分の決めた生き方に自信を持つと誓い、「加恋さんも自分の人生を生きてくださいね!」と笑顔で店を去る。だが、この言葉を聞いた加恋に笑顔はない。数々の客を癒やしてきた彼女が、自身の抱える闇と向き合う日は来るのだろうか。今後も楽しみにしてほしい。

取材・文=石川知京

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