大阪発のかわいすぎる"お菓子缶"。ヒットの裏側と思いに迫る!

関西ウォーカー

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歴史ある洋菓子製缶メーカー・大阪製罐(せいかん)株式会社が展開しているブランド「お菓子のミカタ」。60年以上培ってきた製缶技術を活かし、目を引くお菓子缶を洋菓子店に提供している。そんなお菓子缶が、SNSで「かわいい!」と話題に。今回は、ブランドを立ち上げた3代目社長の清水雄一郎さんに話を聞き、唯一無二のかわいさを誇るヒット商品の秘密に迫った!

思わず手に取りたくなる美しさのお菓子缶たち


全部集めたくなる!かわいいお菓子缶コレクション


"心を動かす缶"をコンセプトにデザインされたお菓子缶は、どれも心踊るかわいさのものばかり。なかでも、累計20万個の注文を受けたという「ビジュー缶」が圧倒的な人気を誇っている。

缶の凹凸と色で再現されている宝石のあしらい。まるで本物のよう!


「『かわいい!』『きれい!』という感情が、人の心を動かすと思っています。ビジュー缶は、本当に宝石が埋め込まれてるんじゃないかと思ってもらえるよう、エンボス加工(絵を浮き彫りにする加工)や色使いを試行錯誤しながら作り込みました。手に取ってもらった方に『え、ウソでしょ、缶なの!?』って思ってもらえるように、常に"遊び心"も忘れないように心がけています」と、清水さん。

ビジュー缶のほかにも、繊細でかわいい白の花がいっぱいにあしらわれた「ブーケ缶」や、おとぎ話のような世界観で作られた「すずらん缶」なども好評だそう。

花いっぱいのブーケ缶。「缶という硬い素材の上に、柔らかな質感の花を表現するのが難しかった」と清水さん

すずらん缶は、可憐な花と妖精が彩る世界を表現


そのほか、チョコレートをイメージした「ショコラ缶」や「フェアリーテイル缶」などは、モチーフのイメージや質感が見事に表現されている。

こっくりとしたチョコレート色に、クリームをあしらったショコラ缶。シックな色合いながらもキュート

クッションの柔らかさが今にも伝わってくるような、フェアリーテイル缶


数々のお菓子缶を作ってきたなかでも、特に清水さんの思い入れが強いのが「太陽と月缶」だそう。

まるでステンドグラスのようにキラキラと輝く、太陽と月缶


「ステンドグラスをモチーフに、細かな凹凸のあるサテン材を使って太陽と月のキラキラ感を表現しました。常々、それぞれに照らすべき人や世界があり、互いに影響し合う太陽と月の関係が素敵だと思っていて。遠く離れた大切な人と『お互い頑張ろうね!』と励まし合えるようにと、キラキラした輝きにそんなメッセージを込めて作りました」

洋菓子店に新たな風を巻き起こした「お菓子のミカタ」


14年に新事業としてスタートした「お菓子のミカタ」。それまでは「大阪製罐株式会社」で商品作りを手伝ってきたが、製造ロットが3000缶以上と在庫リスクを恐れて断念する洋菓子店も少なくなかったそう。そこで清水さんは、在庫リスクを抱えることなく気軽に缶というパッケージを使ってもらえるようにと、個人商店向けに最低注文個数を50にした。さらに"心を動かす缶"というコンセプトのもと、デザイナーに依頼し、デザインにもこだわった。

カラフルポップなお菓子缶の世界

確かなエンボス加工の技術で、美しく表現されたお菓子缶


「最初は、かわいくデザインされた缶が50個から買える、ということを洋菓子店に知ってもらうことに苦労しました。そもそも町の洋菓子店で使われているパッケージに"缶"という選択肢がありませんでしたし、そんなサービスをやっている会社がなかったので。とにかく全国の洋菓子店にダイレクトメールやニュースレター、SNSで発信し続けました。地道な努力を続けた結果、最近ようやく僕らの存在に気づいてもらえるようになって。今はデザインの種類も30種を超えています」と、清水さん。

幸せを運ぶ鳥と王子が描かれたプリンス缶

勲章缶は、ビンテージ感のある勲章が整列しキラキラと輝く

少女がデザインされたカメオ缶(左)やエンジェル缶(右)など、乙女心くすぐる商品も


今では、大阪・天満の「コバトパン工場」や西大橋の「パティスリージャンゴ」など、人気店のクッキー缶に「お菓子のミカタ」の商品が使われている。

パンを運ぶ職人たちがキュートな「コバトパン工場」のクッキー缶(左上)や、ネコが描かれた「パティスリージャンゴ」のクッキー缶(左下)


「『お菓子のミカタ』の缶にお菓子を詰めて販売したら、売れすぎて製造が追いつきません」や、「缶目当てで買いにこられたお客さまにリピート購入してもらえました」など、商品を使ってくれた洋菓子店からたくさんの反響が届いているのだとか。

なかでも、清水さんが特に印象に残っている出来事があるそう。

「開店から売上が伸びず移転や縮小を考えていた洋菓子店が、試しに僕たちの缶を使ってくれたんです。すると、商品が飛ぶように売れ出したそうで。メディアにも取り上げられ、注文の予約が半年以上先まで入り、店の経営ができるようになったという話を聞いた時はとてもうれしかったですね。僕たちの仕事は、ただ缶を作るだけじゃないんだなと。これからも"お菓子のミカタ"という名前に沿った仕事を続けていきたいです」

「お菓子屋さんのために」が原動力に


昨年10月には東京・恵比寿に「お菓子のミカタ TOKYO KO BOH!!」をオープンさせた。店内では、「お菓子のミカタ」の缶を使っている全国の店の洋菓子が月替わりで並び、購入できる。

初めて東京を拠点にしたショップを展開するだけでなく、今年9月には、コンペイトウメーカーの大阪糖菓とコラボした、コンペイトウ入りの缶「ボンボニエール缶」を作った。

大阪糖果と協力し作りあげた、鮮やかな青や黄のコンペイトウ

白のフクロウがモチーフとなった高級感漂うお菓子缶


「いつも洋菓子店の仕事を知れば知るほど、すばらしい仕事の裏には大変な苦労があることに気付かされます。その苦労が少しでも軽くなればと思い、お菓子屋さんに商品を卸せるよう、初めてお菓子からプロデュースし、商品作りにチャレンジしました」

板チョコ缶をはじめ、どのデザインも遊び心にあふれている

絵本作家・谷口智則氏が手掛けるデザインも。楽しそうな動物たちの物語が伝わってくる


ほかにも、「お菓子の缶工場を眺めながら、コーヒーが飲めるスペースも作りたい」と話す清水さん。「みんなが一緒に楽しめるものを、世の中に投げ込んでいきたいと思っている」という。

「食べる人に喜んでもらいたい」という思いが込めて作られるお菓子を、さらに思い出深いものにするために生まれたお菓子缶。今後も清水さんは、お菓子店のためにチャレンジを続けていく。

取材・文=左近智子(glass)

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