大人がハマる本気の「泥だんご」作り!輝きの秘密は左官技術にあり
関西ウォーカー
子供の頃、みんなで公園や運動場に集まり、無心で作った「泥だんご」。泥だらけで家に帰って親に怒られたり、やたらと丈夫なものを作るクラスメイトがいたり、人それぞれ泥だんごにまつわる思い出があるのではないだろうか。そんな泥だんごが今、"光る泥だんご"として話題になっている。
この記事では、突然「童心に戻りたい」と思いたったウォーカープラス編集部・三浦が、京都で"光る泥だんご"作りに挑戦。「左官」の技術を学びながら、泥だんごを極める!
極みコースは集中力が肝心!これはもはや「壁作り」
今回、泥だんご作りをレクチャーしてくれたのは、京都・長岡京市にある「三谷左官店」の代表で左官職人の三谷涼さん。職人さんが教えてくれるということで、ビシバシしごかれると思っていた三浦は「覚悟してきました!」と伝えるが、三谷さんは「楽しくやりましょう~!」とにこやかに迎え入れてくれた。
三浦が体験することになったのは「泥だんご 極みコース」(3000円・税込)という、左官の技術を泥だんごに生かし、大人向けに作られたコース。「大津磨き」という壁作りに用いられる技法で、長時間かけて丁寧にだんごを磨き上げる、集中力がカギを握るコースだ。
「まず、好きな泥だんごを選んでくださいね」と、だんごが入ったボールを差し出す三谷さん。てっきり泥の状態から作り上げると思っていた三浦だったが、三谷さんから「この泥だんごは土壁と同じ作り方なので、半年くらい寝かせた土と藁スサを混ぜて作っています。だから夏前から仕込みが必要なんです。その分頑丈で、ヒビ1つ入らないものができあがりますよ」と説明が。
「今から作るものは泥だんごなんかじゃない。丸い壁なんだ…!」と、早くも極みコースの厳しさを感じた三浦が選んだのは、1番大きなだんご。ピカピカではないが、この時点でも十分キレイな球体だ。
懐かしの「サラ砂」と再会!一気に童心に引き戻される
だんごを選んだら、着色剤を選ぶ。三浦が青色をオーダーしたところ、三谷さんは「青でも3色ありますよ~」と、いろんな着色剤を持ってきてくれた。ほかにも赤や黄色など、好みの色をオーダーできる。今回は薄い青を選んだが、濃い色のほうがキズやムラが目立ちにくいのでおすすめだ。
着色剤を三谷さんお気に入りの焼酎で溶かし、石灰と白土を入れて混ぜる。今回は青色を引き立たせるために白土を使用するが、作る泥だんごの色によって加える土も変えるそう。
2つの器に分けたら片方には珪砂(けいしゃ)というサラサラの砂を入れるのだが、子供の頃に泥だんごを作った時に「サラ砂(サラサラの砂)を入れると割れにくい」と言っている友達がいたのを思い出した。「これってもしかして、サラ砂の役割ですか?」と聞くと、「そうそう!子供の頃はなんとなく入れてたかもしれんけど、これを入れると本当に頑丈になるんですよ」と三谷さん。
超重要な「塗り」の作業でまさかの才能が発揮!
ひさしぶりのサラ砂との再会に感動したあと、いよいよだんごの登場。だんごに先ほどの着色剤を塗っていく。スプーンでひとすくいした着色剤を表面に置き、フィルムケースを使って薄く塗り広げていく。三谷さんいわく、「フィルムケースが1番薄く塗れて、だんごにフィットする」とのこと。
この工程で仕上がりの8割が決まり、もたもたしていると着色剤が乾いて塗り広げられないため、慎重かつスピーディーに!この作業を、珪砂入りを3回、珪砂なしを2回の計5回、繰り返す。
ここで三谷さんが「めちゃくちゃ器用ですね!教えることないから、俺も作るわ!」と、個人的に泥だんご作りを開始。さらに「弟子入りしてほしいくらいやわ!」と腕前を褒められた三浦はここから先、三谷さんを「師匠」と呼ぶように。
時折、「力を入れるとフィルムケースの傷がついてしまうから、優しくね」とアドバイスをもらいながら、泥だんごの肝となる工程が無事終了。
師匠と弟子の持久戦!カギとなるのは「音」
着色剤を塗る作業が終わり、「秘密の液体」を手で泥だんごに塗っていく。するとツヤツヤと光る、鮮やかな泥だんごに。「師匠、もしかしてこれで完成ですか?」と聞くと、「大変なのはここからやで!」と三谷さん。
渡されたのは梅酒の小瓶。サイズ的に、この瓶が1番泥だんご作りに適しているそう。この瓶を泥だんごにあてがい、「キュッ」と音が鳴るまで優しく磨き続けていく…のだが、これがなかなか難しく、音なんて全く鳴らない。
「師匠、これ本当に音が鳴るんですか?」と疑いながらも磨き続ける三浦に、「まずは同じところばかり、同じ方向に磨いてみて」と三谷さん。三谷さんが作った赤い泥だんごも同じ工程に入っており、2人で黙々と磨き続けること約30分。三浦のだんごから小さく「キュッ」という音が鳴り、「やったあ!」と大盛り上がり。
"光る泥だんご"ついに完成!忘れていたあの頃の達成感を得る
それからさらに磨くこと1時間半。2人とも、泥だんごのあらゆる箇所から音が鳴るように。色を選んだところから約4時間かけて、"光る泥だんご"が完成!
子供の頃に作っていた泥だんごとはまったくちがう重厚感。手に持つとずっしりと重く、落としても割れないそうで、壁と同じ作りであることがわかる。最初は真っ青だった着色剤も、完成するとキレイな水色に。ところどころ白い筋が入っているのは、磨く時の力加減や塗る厚みが原因だが、これはこれで味のある色味になった。
「センスも集中力もあったから4時間でできたけど、本当は半日かかったり、音が鳴らなくて途中で諦める人もいるんですよ。スゴイ!」と三谷さんから太鼓判をもらった三浦は、思わず満面の笑み。子供の頃、誰よりもキレイで強い泥だんごを作り上げた時の達成感を思い出すことができ、「自分もまだまだいけるな!」と自信がつくほど心が強くなる体験だった。
三谷さんが左官職人になったのは、小学生の頃に近所の新築の家の壁を塗っている左官職人の姿がかっこよかったからだという。「今の時代はあっという間に家が建つので、左官職人を見かけることも少ない。でも泥だんご作りを通して、子供たちに左官業のことを知ってもらえたらうれしいです」と三谷さん。
光る泥だんご作り体験は、公式サイトから要予約。子供でも楽しめる「磨きコース」と、三浦が受けた「極みコース」の2種あるが、左官技術をしっかり学ぶなら「極みコース」がおすすめ。
"光る泥だんご"を通して左官技術や壁作りの大変さもわかる貴重な体験。子供も大人も、ぜひこの達成感を味わってほしい。
取材・文=三浦あやか(ウォーカープラス編集部)
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。
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