漫画界の逆転現象…?“漫画家が編集者を選ぶ時代”のWEBマガジン「comic gift」の仕掛けとは

2021年3月14日 14:13更新

東京ウォーカー(全国版)

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編集者が趣味でプロデュースする「comic gift」3月の更新カレンダー画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

漫画界における担当編集者と漫画家は「車の両輪」であり、その関係性はヒット作を生み出すうえで重要な要素とされている。編集者との出会いが作品の成否を分けるケースもあり、「担当編集者を選べない」漫画家にとって、“担当編集者はガチャ”という声も聞かれるほど。しかし、近年はSNSカルチャーの普及により「漫画家が担当編集者を選ぶ」という逆転現象が起きているのだという。

そこで今回、大手漫画出版社に勤務しながら、「作家さんの才能(=gift)を、“商業誌”というフィルターを通さずに、贈り物(=gift)として届けたい」というコンセプトの元、4ページの短編漫画をTwitterにて公開するWEBマガジン『comic gift』を運営する山中氏にインタビューを実施。現代における漫画編集者と漫画家の関係性の変化と、その可能性について聞いた。

「吸血鬼起きてください」01画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「吸血鬼起きてください」02画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「吸血鬼起きてください」03画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「吸血鬼起きてください」04画像提供:comic gift(@comic_gift_web)


商業誌ではNGになるような、より尖った作品を世の中に紹介したい


――comic giftをはじめた理由を教えてください。

「私は新卒からずっと漫画の編集者をやっているのですが、商業誌ではボツを出さなければいけないシーンがあり、それが自分としてはストレスでした。そこで、商業誌的な『売る』ということを考えなければ、面白い作品をもっと紹介できるのではないかと考え、comic giftを立ち上げました」

――紹介する作品の基準は?

「商業誌ではNGになるような、より尖った作品を世の中に紹介したいと思っていて、自分が好きな作家さんにお願いして描いていただいています」

――comic giftは今後、どのような着地点を想定しているのでしょうか。例えば、作品を商業誌連載に結び付けたいのか、あるいはWEBマガジンとしてより発展させたい?

「そうですね。どちらかというと後者の方が近いです。comic giftは今、ほぼ週刊の更新ペースです。ゆくゆくは、クラウドファンディングや、Pixivファンボックス等で、お金を集めて毎日更新ができるようにしたいです。目標としては、何年後かに“毎日更新”を実現したいです」

――comic giftでは作家さんに1ページ1万円をお支払いしているとのことですが、これは山中さんご自身で支払っているのでしょうか。

「100%自分のお財布からお支払いしています」

――驚きました。てっきり会社が支払っているものかと…。会社のお仕事とは完全に切り離した、山中さん個人の活動なんですね。

「はい、自由にやらせてもらっています」

――フォロワー数も順調に伸びています(1.6万人※3月12日現在)ユーザーの反応はいかがですか?

「最初、自分の個人アカウントで『こういうweb雑誌を作ります』というツイートをし、同時にcomic giftをスタートさせましたが、かなりの反響をいただきました。最初の1日、2日くらいでフォロワーが7000人ぐらいまで増えて、そのまま少しずつ伸ばして今のフォロワー数になりました」

――漫画の力を感じますね。4ページのショートストーリーとはいえ、面白い漫画を無料で見られるのは、いちユーザーとしてもうれしいです。

「漫画好きな人って優しい人が多くて、温かい目で応援していただいて本当にありがたいなと思います」

以前と違い“作家さんも編集者を選べる時代”に。編集者の実力も判断される

「廃屋の幽霊」01画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「廃屋の幽霊」02画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「廃屋の幽霊」03画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「廃屋の幽霊」04画像提供:comic gift(@comic_gift_web)


――最近は“SNS発”の漫画家さんが増えているように感じます。以前の“持ち込み文化”と比べて、出版界ではどのような変化がありましたか?

「SNSで漫画を発表する作家さんが増えたことで、出版社への持ち込みの数は減っているかもしれません。私が漫画の編集者になった7、8年前はSNS文化も過渡期で、Twitterやホームページにアドレスを載せている作家さんに対して、『TwitterのDM(ダイレクトメール)を使って作家さんに声を掛けるのは失礼』みたいな空気がありました」

――そうした空気が変わったターニングポイントというのは?

「2016年頃、Twitterで発表されている漫画家さんに出版社が声を掛けて本を出し、その本がめっちゃ売れるという流れがあったんです。そこから、Twitterを使って編集者が漫画家さんに声を掛けるのも一般的になったように思います」

――漫画家を発掘する場合に、「持ち込み」と「SNSスカウト」にはそれぞれメリットとデメリットがあるかと思います。

「漫画家としてデビューする道としては大きく分けて、『持ち込み』『SNSスカウト』『漫画賞に応募』という3つがあります。持ち込みのメリットは、漫画編集者によるフィードバックが必ず得られる点です。デメリットとしては、編集者への“属人性”が高すぎる点でしょうか。つまり、担当についた編集者がうまくハマらなかったら、それだけでアウトの可能性があります。なので、ひとつの出版社だけでやるというのは、リスクではあるかと思います」

――SNSの方はいかがでしょうか。

「SNSスカウトからのデビューのメリットは、そもそも自分の漫画を好きな編集者しか声を掛けてこないので、気の合う人と出会いやすいということですね。あと、SNSで数字を出していたら即連載、即出版というケースもあるので、デビューまでが早いという感じです」

――では漫画賞は?

「漫画賞は、この2つのミックスみたいな感じです。メリットとしては、趣味が合う編集者がついてくれる可能性が高いところ。応募した作品はその編集部全員が読んで、『この人の担当につきたいです』って自分で手を挙げて担当になるので。持ち込みの場合は、その時に出会った編集者との相性に左右されますが、漫画賞の場合は“全員に持ち込み”したのと同じ効果が得られます。なので、実はすごくおすすめです。デメリットは、編集者が手を挙げる作品じゃなかったら何の反応も得られない点です。SNSと違ってユーザーに読まれることもないし、持ち込みのようなフィードバックもありません。なので、ある程度の実力がないと漫画賞に出しても何の意味がない場合もあるので、割とリスキーではあると思います」

――SNS漫画の隆盛により、漫画家としてデビューするための選択肢が増えたわけですね。漫画にチャレンジする人自体の数も増えているのでしょうか。

「それは絶対に増えていると思いますね」

――では、SNSで才能を発掘する際、漫画編集者に求められている部分というのは?

「漫画編集がどういう人間なのか、ちゃんとわかってもらうのがかなり重要です。以前と違い、“作家さんも編集者を選べる時代”になっているので、編集者の立ち上げ作品とかを見て判断される部分も大きいと思います」

――選ぶ側の漫画編集者も、漫画家に選ばれる立場になるケースもあるんですね。では、「漫画家に選ばれるため」に大事なポイントは?

「結局、相性だと思います。“好きな作品”や“漫画への考え方”が被っているかどうか、それが一番大事だと思います」

――漫画家が「この編集者は自分と合わないな」と思ったら、編集者を変えるようなこともあると。

「漫画編集者も、“持ち込み”や漫画賞への応募を待つのではなく、今はSNSなどを使って『自分の足で作家さんを探す』、そういう時代ですね」

――なるほど、買い手と売り手の力関係がかなり拮抗してきた形なんですね。では、comic giftは今後、どのような“色”で勝負し、作家さんの支持を得ようと考えているのでしょうか。

「Twitter漫画としてはかなり後発なので、他と同じようなことをやっても仕方がないと思っています。なので、絵とストーリーがしっかりしたクオリティの高い作品を意識しています。自腹を切ってやっていますし、そこはしっかりこだわりたいです(笑)」

「おんがえし」01画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「おんがえし」02画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「おんがえし」03画像提供:comic gift(@comic_gift_web)

「おんがえし」04画像提供:comic gift(@comic_gift_web)


取材協力:comic gift( @comic_gift_web )

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