コーヒーで旅する日本/東海編|世界レベルのコーヒーを研究し、さらなる高みを目指す。「TRUNK COFFEE」

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも名古屋の喫茶文化に代表される独自のコーヒーカルチャーを持つ東海はロースターやバリスタがそれぞれのスタイルを確立し、多種多様なコーヒーカルチャーを形成。そんな東海で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

2014年のオープン以来、日本のコーヒーカルチャーの最前線を走り続ける「TRUNK COFFEE」

東海編の第32回は、名古屋市内に3店舗を構える「TRUNK COFFEE」。2014年のオープン以来、名古屋のみならず日本のコーヒーシーンをリードする店のひとつであり、世界的にも存在感を発揮している。浅煎りに特化し、それまで日本で主流だった深煎りとはまったく異なる幅広いコーヒーの風味を知らしめたインパクトは大きい。そして2022年、同店の目指すコーヒーに共感してこの道に進んだ石原匠真さんがジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ(JCTC)で優勝し、世界大会に進出。帰国直後の貴重な時間を頂戴し、「TRUNK COFFEE」で学んだこと、世界大会で得た経験、これからの目標などを伺った。

スタッフの石原匠真さん

Profile|石原匠真(いしはら・しょうま)
1996年(平成8年)、岐阜県各務原市生まれ。コーヒーの抽出技術を競う大会に出場したことをきっかけに「コーヒーを勉強したい」と考えるようになり、「TRUNK COFFEE」を運営する株式会社トランクに入社。いずれ独立することを目標に技術を学び始め、2年目から焙煎も担当している。競技会への挑戦にも意欲的で、2022年に行われたジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ(JCTC)で優勝。2023年6月、ギリシャで行われた世界大会に日本代表として参加した。

世界のトレンドを常にチェック

扱う豆は浅煎りのみ。取材時は12種類が店頭に並んでいた

2014年、名古屋・高岳にオープンした「TRUNK COFFEE」は、これまでの名古屋コーヒーシーンをガラリと変えるほどの大きなインパクトをもたらした。味でいえば、コーヒーといえばコクと苦味が醍醐味であり、深煎りが主流だったところに、北欧スタイルの浅煎りコーヒーという新しい味わいを紹介。すっきりとした飲み口、ほのかな酸味と甘味、果実のようなフレーバーといった、これまで知られていなかったコーヒーは新鮮な驚きだった。

コーヒー豆やコーヒー器具が壁一面にずらりと並ぶ

文化でいえば、喫茶店文化が根強い東海エリアにおいて、これまであったカフェともコーヒースタンドとも違うコーヒーショップの誕生となった。ファッションや音楽、インテリアまで巻き込んだトータルなコーヒーカルチャーを発信していく様子は、当時をリアルタイムで経験した筆者にとっても非常にセンセーショナルであり、新しい時代の幕開けを確信させるものだった。

名古屋・東別院にある「TRUNK COFFEE LAB」

開業してからまもなく10年になるが、今なおコーヒーシーンの最先端を走り続け、世界トップレベルのコーヒーをここ名古屋から発信し続ける姿勢に、同郷の者として誇らしさを感じている。現在は1号店の高岳に続き、上前津、東別院にも店舗を展開。上前津はコーヒーとクラフトビールを扱うことでコーヒー文化の裾野を広げ、東別院では最先端のコーヒーを扱うことでその深みを追求している。

カウンターに並べられた4種類のグラインダー

名古屋・東別院にある「TRUNK COFFEE LAB」にはグラインダーが4種類あるが、そこまで機器の違いによる味わいの差異に注目する店はほとんどないのではないだろうか。「世界大会で使われるマシンや器具を導入し、常に世界のトレンドに目を向けています。グラインダーは4種類のうち2つは同じマシンですが、中に入っている刃を変えています」と話すのは、スタッフの石原匠真さん。22歳の時に「TRUNK COFFEE」で働き始め、4年でコーヒーの味わいを判別するJCTC日本チャンプへと昇りつめた、今注目の若手コーヒーマンだ。

「TRUNK COFFEE」が思う"おいしい"を作る

店頭に立ち、コーヒーを抽出する石原さん。「カウンター越しにお客様とコミュニケーションを取るのも楽しい」と話す

石原さんは大学時代に「TRUNK COFFEE」を知り、購入した豆を家で飲んだり、店に遊びに行ったりしていたという。「コーヒーを本格的に勉強したい」という気持ちが芽生えてからは、「TRUNK COFFEE」の一員として世界レベルのコーヒーに触れつつ、知識を深め、技を磨いてきた。「コーヒーといえば苦味の印象が強かったのですが、甘味や果実味の豊かさを知って、いろいろなフレーバーがあることを感じられたのが『TRUNK COFFEE』で得た最初の発見でした。入社してから1カ月は、お店の考える"おいしい"を提供できるようにみっちりと抽出などのトレーニングを実施。合格して初めて、お店での抽出を任せてもらえるようになります。僕たちが抽出するコーヒーはおいしくて当たり前であって、作るまでの過程には本当にめちゃくちゃ繊細なアプローチが必要になります」

もともと高岳本店にあったプロバット5キロ釜を、東別院の店舗に移設。すべての焙煎作業をここで行っている

2年目からは、焙煎にも取り組むようになった。「いずれ独立して自分のコーヒー店を持ちたいと思っていたので、焙煎スタッフに立候補して、少しずつ勉強させてもらっています。現在、焙煎スタッフは僕を含めて3人いますが、正解があるわけではないので、『TRUNK COFFEE』がおいしいと思うものを作り上げていくことが難しさであり、おもしろさですね。『こっちの味もおいしいけど、こういうやり方をしてもおいしいね。どっちにする?』みたいなところを考えながら、『このプロファイルが、このコーヒー豆の一番おいしいポテンシャルを引き出せているよね』というポイントを見つけて、スタッフ一同が共感できる所を探っています。最終的には10秒単位で煎り止めのタイミングをずらしてサンプルを取り、カッピングで味をチェック。スタッフ間で話し合いながら、ちょっとずつプロファイルを完成させます」

【写真】ストロングホールドの焙煎機。世界大会でよく使われているが、日本国内で導入している店舗は数少ない

「TRUNK COFFEE」には現在、焙煎機が2種類ある。ひとつは、オープン当時から使っているプロバットの半熱風式5キロ釜。もうひとつは、世界大会でも実際によく使われている最先端の焙煎機、ストロングホールドの電気式850グラム釜だ。「ほとんどの豆はプロバットで焼いていますが、パナマのゲイシャなど希少価値の高い豆は少量で焙煎できるストロングホールドを使います。熱源が火ではなくハロゲンなので、豆の内側から熱が加わるのが大きな特徴。熱をコントロールする変数が多いので、いろいろな味を狙って作ることができます」

器具やカップまでプロデュース

数多くの店舗でも愛用されているORIGAMIドリッパー。ビジュアルのかわいさも人気で、全16色を展開している

「TRUNK COFFEE」が考えるおいしさの追求は、ドリッパーやコーヒーカップの開発にも及んでいる。店がプロデュースしたORIGAMIドリッパーやセンサリーフレーバーカップは、今や日本や世界のトップが集う競技会でも頻繁に採用されている。

ORIGAMIドリッパーは、ウェーブフィルターの凹凸がぴったりと合うように作られている

「ORIGAMIドリッパーは、円錐フィルターとウェーブフィルターの2種類が使え、フィルターによって味を変えることができる点がユニークです。円錐フィルターを使うとお湯の抜けが早くなり、すっきりとしたキレイな味わいになります。一方、ウェーブフィルターを使うとお湯がゆっくり落ちるので、コーヒーのコクがしっかりと出やすくなります。当店では、ORIGAMIドリッパーにウェーブフィルターを合わせて抽出するスタイルが基本です」

センサリーフレーバーカップは、飲むときに鼻までをすっぽりと覆う形状がポイント

「センサリーフレーバーカップは、壺のような形状が特徴的。カップ中央の膨らんだ部分あたりまでコーヒーを注いで、上部の余白部分に香りを閉じ込めます。カップを傾けて飲むときに、ちょうど鼻までがカップに覆われる形になり、閉じ込めた香りを逃さず感じられるのです。持ち手がないデザインも、手のひら全体で包み込むように持つことでコーヒーの温度をより感じられるように考えたものです」

焙煎、抽出、器まで考え抜いて届けられるコーヒーの繊細な味わいは、科学的・生物学的な理論に基づいて形作られたもの。当然、店で働くスタッフには、その繊細な味わいを判別できるだけの知識や技術が求められる。石原さんがJCTC日本チャンプとなった背景には、「TRUNK COFFEE」で培われたおいしさに対する追求と理解があったに違いない。

世界大会に出場したことで得たもの

石原さんが日本チャンプに輝いたときのトロフィー

石原さんは、2度目の挑戦となるJCTC 2022で見事優勝を勝ち取った。「JCTCに挑戦するようになったのは、自分で焙煎をするようになり、味をチェックする能力を高めたいと思ったからです。2021年の初挑戦では、結果自体は悪くなかったんですが、タイムが伸びずに予選敗退。悔しい思いをしました。そこで、2回目の挑戦となる2022年では、正確性はもとよりスピードも意識してトレーニングを積みました。問題自体のレベルもグッと上がった大会となりましたが、優勝できたことは本当にうれしかったです」

アナエロビックなど世界のトレンドも積極的に取り入れて、勉強している

そして2023年6月、ギリシャで行われた世界大会では日本代表として出場。「めちゃくちゃ練習しましたし、『ここまでやったのだから勝てるだろう』という自信を持って参加しましたが、まだまだ上があることを実感しました。それでも手が届かないレベルではなくて、『もっと頑張れば世界一になれる』という確信を持てる大会となりました。もう1回チャレンジして、次こそは世界一を目指します!日本のレベルは世界から見ればまだまだかもしれませんが、『TRUNK COFFEE』の仲間と世界レベルのコーヒーを見据えて切磋琢磨し、日本全体のレベルを上げていけるといいなと思っています」と石原さん。さらなる高みを見据えて、気合は十分だ。

石原さんレコメンドのコーヒーショップは「IMOM COFFEE ROASTERS」

「名古屋のコーヒー文化は、東京や関西と比べてもまだまだ発展途中だと思っていて、『TRUNK COFFEE』のメンバーは誰もが名古屋を盛り上げようと頑張っています。『IMOM COFFEE ROASTERS』の園田さんは、僕たちと同じく名古屋を盛り上げようと頑張っている同志。いろいろな大会に出場して、毎回結果を出しています。勉強会などいろいろなところでお会いする機会が多く、よく話をする間柄ですが、コーヒーに向き合う姿勢や、おいしいコーヒーを作ろうと突き詰めているところが素晴らしいと思います」(石原さん)


【TRUNK COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/プロバット半熱風式5キロ、ストロングホールド電気式850グラム
●抽出/ハンドドリップ(ORIGAMI、カリタウェーブ)、エアロプレス、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ リネアPB2)
●焙煎度合い/浅煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム1000円~

取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二


※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。
※新型コロナウイルス感染対策の実施については個人・事業者の判断が基本となります。

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