忙しいお母さんを困らせたくない…でも、本当は作ってほしかった。おいしくて悲しいお弁当の思い出「心曇る日は ご自愛ごはんを」【作者インタビュー】
東京ウォーカー(全国版)
つらくても「食べる」、「食」を通じて心の病から少しずつ自分を取り戻していく、そんな経験を描いたコミックエッセイ「心曇る日は ご自愛ごはんを」。連載第9回目は、お弁当にまつわるエピソード。手作りのお弁当を格別においしく感じるのには理由があって――。
会社員として忙しくも充実した日々を送っていたある日、ふとした仕事のミスをきっかけに体調を崩してしまった作者のうめやまちはる(
@umeyama_chi
)さん。病気がもとで退職したあと、結婚。専業主婦をしながら回復に専念するも、なかなかよくならないことに不安を感じていた。病気の症状とわかっていても「あたりまえにできていたことができない」せいで、どんどん自信を失っていく。そんなとき、そっと寄り添ってくれたのは毎日の「食卓」だった。生きるために食べる。食べるために料理をする。そのささやかな繰り返しに、少しずつ心がほどけていく。
うめやまさんが自身の経験をもとに綴った本作は、第11回新コミックエッセイプチ大賞を受賞。「食」を通して取り戻していく日常の中に、大切な何かをきっと見つけることができるはず。
手作り弁当が大好きな理由は、子どものころの悲しさを埋めるため?
同じおかずでもお弁当に入っているほうがなぜかおいしい、と旦那さんに話したことをきっかけに、お弁当の思い出話で盛り上がる。うめやまさんは、子どものころ、両親が共働きで、学童や学校で買ってきたお弁当を食べていた。
市販のお弁当に満足はしていたけれど、心の奥ではみんなの手作り弁当をうらやましく思っていた。一度だけ母に手作りのお弁当を頼んだが、困った顔を見て我慢したことを思い出す。うめやまさんが手作り弁当を格別においしいと思うのは、子どものころの悲しい思い出からきていたのだ。
自分にできる範囲のことをやっていれば、エネルギーは湧いてくる
悲しい思いにとらわれてしまったときも、目の前の料理に向き合うことでフラットな自分に戻っていく。うめやまさんにとって、キッチンに立つ時間は心を切り替える大切な時間でもあるのだ。今回は、印象に残っているエピソードや作品を通じて伝えたいことについて、うめやまさんに聞いた。
――作中に描かれたエピソードの中で、特に印象に残っているものはありますか?
個人的には3話の「散歩と規格外の野菜たち」は、自分の心が前向きに変わった頃のエピソードなので特に大切に思っています。web公開はされていませんが12話の「すべてを忘れて栗を剥く」も、自分の心との付き合い方に関する気づきがあった回で気に入っているので是非読んでみてほしいです。
――この作品を通じて何か伝えたいことはありますか?
自分がどう頑張ってもできないことをできるようにならなきゃいけないと思うと、どんどん気持ちが落ち込んで元気がなくなっていくように思います。できないことはできないとあきらめて、自分のできる範囲のことをやっていれば、自然とエネルギーが湧いてきて頑張れるようになると思っています。この本を読んでくださった皆さんも、頑張りすぎず、ご自身をいたわってあげてほしいです。
――今後の活動について教えてください。
ごはんの絵を描くのが好きなので、これからもマイペースに制作して
X(@umeyama_chi)
などに投稿していきたいと思っています。
――読者に向けてメッセージをお願いします。
連載を最後まで見てくださりありがとうございました。書籍だけでしか読めない話にも私なりに大事に思ったエピソードを描いています。是非お手に取っていただけるとうれしいです。
料理が得意な人も、そうでない人も、ふと作ってみたくなる、食べてみたくなるような心に沁みるレシピが登場する「心曇る日は ご自愛ごはんを」。疲れてしまったとき、しんどいとき、心がふわっとあたたかくなるエピソードがさらに読める単行本を、ぜひ手に取ってみてほしい。
取材協力:うめやまちはる(@umeyama_chi)
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