コーヒーで旅する日本/四国編|徳島のコーヒーシーンに注目の新風。「トーコーヒー」が地元に広げる、個性際立つ浅煎りの醍醐味
東京ウォーカー(全国版)
徳島にコーヒー好きを増やす、きっかけになる場所に

この日は4種のうち3種がコロンビアという顔ぶれだったが、品種、プロセス違いで、いずれ劣らぬ個性を発揮する。なかでも、コロンビア・ベト・ナルバエスは、電気・燃料・水を使わない自転車脱穀機、ドライ・バイシクル・パルピングなる、環境に優しい世界初のプロセスを採用。豆を水洗しないぶん、コーヒーの成分を余すところなく残したコーヒーは、ジューシーな果実味とみずみずしい甘味の濃密な余韻に目を見張る。
また、エスプレッソマシンではなく、エアロプレスで抽出するカフェラテも、この店ならではの一杯。「本格的なバリスタの経験がなく、マシンを触る機会もなかったので、逆にそれならドリップに注力しようと。むしろエアロプレスの方が、ミルクとコーヒーのバランスがいいと思います」と言うとおり、なめらかに溶け合う香味と甘味、ふわりと柔らかな後味に思わず心和む。
間借りから始まり、店を構えて2年、徳島コーヒーシーンの新たな個性として、地元に受け入れられつつある「トーコーヒー」。「昔からある喫茶店のような、くつろげる空間を作りたかった妻と、コーヒーのクオリティを追求したい自分。両方の志向がかみ合ってできた場所」という店の名に付した“TO”は、英語で“届ける”という意味と、日本語の接続詞“と”のダブルミーニング。会話“と”、お菓子“と”、読書“と”…多くの人にさまざまなシーンでコーヒーを楽しんでほしいとの想いがある。

新しい試みには苦労は付き物ではあるが、「老舗に負けないようにという気概で、チャレンジできた環境がかえってよかったと思う。ある意味、ハングリーな状態が学ぶ意欲の原動力になったと思います。初めは浅煎りは売れるかわからんと言われたけど、やってみたらそんなことはない。日常的に浅煎りのコーヒーが広まってほしいし、それだけに限らずコーヒー好きを増やしたい」と森田さん。
年々、変化を続けるコーヒーシーンだが、その多彩な魅力に触れる場は、徳島ではまだまだ少ない。そのなかで、裾野を広げる起点としても注目の存在だ。「コーヒー好きの人口を増やすことで、徳島も盛り上がるのではと思う。自分もコーヒーで人生変わったので、若い人がそれを志したり、ハマったりするきっかけになれる場所にしたい」。徳島で先駆けて、浅煎りの醍醐味を発信するニューフェイス、これからの展開に注目したい。

森田さんレコメンドのコーヒーショップは「カモ谷製作舎ノKOFFEE SHOP」
次回、紹介するのは、徳島県阿南市の「カモ谷製作舎ノKOFFEE SHOP」。「店主の岡崎さんは、神戸の焙煎卸・マツモトコーヒー、焙煎機メーカーの富士珈機を経て独立。主催してもらっている月一回の焙煎の勉強会では、豊富な経験とストイックな姿勢から、多くのことを学んでいる第2の師匠的存在です。お店で出されているコーヒーも、浅煎り、深煎りともに岡崎さんの温厚な人柄がわかる味わい。昨年秋に移転して、リニューアルした古民家を生かした空間も注目です」(森田さん)
【トーコーヒーのコーヒーデータ】
●焙煎機/ディードリッヒ 1キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ)、エアロプレス
●焙煎度合い/浅~中煎り
●テイクアウト/ あり(500円~)
●豆の販売/シングルオリジン4~5種、100グラム800円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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