コーヒーで旅する日本/四国編|コーヒー片手に過ごす時間に惹かれて。「cafe/shop MINATOHE」に現れる、今ここにしかない憩いの風景
東京ウォーカー(全国版)
主客一体で作り出す、ささやかだけどかけがえない時間

およそ1年半、あちこちにテントを担いで回った井上さん。2021年、屋号も新たに「cafe/shop MINATOHE」としてオープンした実店舗は、界隈の話題を集めた。とはいえ、メニューは今も、テント時代そのまま。「淀みない風味とクリアな余韻、これなら毎日でも飲めるという確信を持った」というコーヒーは、鳥取で出合った燕珈琲のブレンド一本。「1人で切り盛りするので、いろいろ豆の種類を置いても新鮮なうちに出せないので」と潔い。
カウンターに入っての接客は、野外とはまた感覚も異なるが、「この間に茶道に興味を持つようになって、抽出の動きや立ち居振る舞いの所作にも神経を払うようになりました。このカウンターは、自分にとってステージのような感覚ですね」と井上さん。茶道になぞらえれば、今までは野点で供していたが、現在は茶室を構えたようなもの。もてなしの形にも、その場に合わせて磨きをかけている。

「テントの周りで憩うという形が、今はカウンターの周りで憩うという形でリンクしています」という、この店の一体感を演出しているのが、細長いU字形のカウンター。どこにいても程よい距離感で、バラバラにお客が集っても、対面で互いに顔が見える。その視線の間をカウンターの井上さんが取り持っているようにも見える。「その時々の空気、時間や風景は一人では築けない。いろんな人が関わってこそ変化が起きる。コーヒーのおいしさも、それに付随する場所、過ごす人によっても変わってきますから、ここだからこそ過ごせる時間を味わってほしい」。そのための手軽さと質の高さを追求したのが、この店の形なのだ。
「外で淹れている方が、誰が来るかわからないというおもしろさはありました。テントの移動販売は今でもやっていて、イベント出店などで参加しています」と、店と外の2本立てのスタイルを続ける。10月で2周年を迎え、「看板のブレンドも、みんなの味として馴染んできた感があります。ここに根付いて、長く続けていけるよう工夫したい」と気持ちも新たにする。テントを担いで、一見、何もないところに作りだした憩いの風景は、この店の日常とつながっている。何気ない時間に見出す楽しみに、ふと気づかせてくれる一軒だ。

井上さんレコメンドのコーヒーショップは「terzo tempo」
次回、紹介するのは、高知市の「terzo tempo」。
「常連さんの紹介で初めて訪ねたときから、いっぺんに気に入って。今も度々通っている素敵なお店です。古民家を改装した空間は、独特の雰囲気がありながら居心地がよくて、言葉で表せない不思議な感覚になります。あの場所に身を置くためだけに、高知まで行きたくなるんです。気さくな店主・佐野さんが淹れるコーヒーや、名物のかき氷が人気ですが、何より、ほかにない空間にこそ価値がある一軒です」(井上さん)
【cafe/shop MINATOHEのコーヒーデータ】
●焙煎機/なし(燕珈琲)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ)
●焙煎度合い/中深煎り
●テイクアウト/あり(500円~)
●豆の販売/ブレンド1種、100グラム750円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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