コーヒーで旅する日本/四国編|ユニークな提案の数々で、松山の新たなカルチャースポットを目指す「Pieceful Coffee Roaster」
東京ウォーカー(全国版)
新たな刺激に満ちたカルチャースポットを目指して

さらに豆だけでなく、ドリップコーヒーの提供にも趣向を凝らす。注文時に3種の器具からチョイスが可能で、すっきりとした風味に仕上げるハリオ、金属フィルターでオイルのコクも楽しめるコレス、抽出に時間をかけ旨味を引き出すユニオン匠と、味わいの傾向に合わせて使い分ける。件のドミニカの深煎りも、ユニオン匠で抽出するとこっくりと濃厚な飲み応えに、ハリオなら繊細な香りと切れのある後味に。同じ豆で抽出の違いによる変化を楽しむのも一興だ。たとえば、人気のドミニカの深煎りをユニオン匠で抽出すると、ワイニーな酸味がより濃厚な味噌を思わせるコクに変わるのがおもしろい。
エスプレッソも専用のブレンドは置かず、好みの豆でオーダーが可能。独特の発酵香を持つアナエロビックなど、個性的なプロセスの豆はエスプレッソにすると、さらに風味のインパクトが際立つ。また、1+1という暗号のような新メニューも昨年から登場。「去年、台湾のコーヒー店で見知って、取り入れました。元々はオーストラリアのローカルメニューで、エスプレッソとラテドリンクをセットにして味の違いを楽しむというもの。ここでは焼菓子を添えて砂糖代わりにしたり、ディップしたりで楽しめるようにしています」と、海外のカフェカルチャーも楽しめる。

また、コーヒーとのお供に人気なのが、オリジナルのチーズケーキ。上面に振ったカソナードを炙った、斬新なブリュレスタイルが話題を呼び、店の代名詞として定着。「愛媛にないテイストを狙った一品。SNSでいつの間にか注目を集めていて、特に女性に人気です」と島田さん。ほかにも、メルボルン発のクラフトチョコレート・MÖRK CHOCOLATEや、愛知のインポーターから仕入れるナチュラルワイン、カップのブランドに至るまで、界隈にはない多彩な楽しみを紹介し、新風を吹き込んでいる。
「普段から食べ歩きが好きで、コーヒーもその中の一つ。シェフを呼んでのイベントを企画したり、間借り営業に貸し出したりすることもあります。先々はギャラリーのように展示もしたい。作家さんに聞くと、個展はハードル高いから気軽に入れる場がほしいという声も聞いたので。新たな刺激があるカルチャースポットになれたら」と島田さん。一方で、同業者や開業志望者のサポートやシェアローストなど、コーヒーシーンへの貢献も惜しまない。

「県外から来て店を始めてみると、愛媛でコーヒーを勉強したい人は県外に行くことが多いと感じたので、ここで関心を持つ人に伝えていきたいし、楽しんでもらえる場にしたい。そこで、今月から朝活的なセミナーも始めました。開店前の1時間、初めてコーヒー入れる人に抽出を見てもらったり、お悩みを解消したり、軽い内容から始めて広げていきたい」と構想を温めている。街はずれと思われていた界隈は、わざわざ訪れたくなる目的地に変えつつある。
島田さんレコメンドのコーヒーショップは「ICOI COFFEE」
次回、紹介するのは、同じ愛媛県松山市の「ICOI COFFEE」。
「店主の佐々木さんのコーヒーに対するひたむきな情熱と勤勉な姿勢は、松山の同業者として尊敬しています。開店以来、佐々木さんご夫妻の人柄に惹かれて通うお客さんも多く、全国的にも注目される一軒。これから、愛媛のコーヒーカルチャーを牽引するお店だと感じています」(島田さん)
【Pieceful Coffee Roasterのコーヒーデータ】
●焙煎機/ディードリッヒ 5キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ、コレス、ユニオン匠)、エスプレッソマシン(スレイヤー)
●焙煎度合い/浅~深煎り
●テイクアウト/ あり(550円~)
●豆の販売/シングルオリジン5~7種、100グラム950円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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