コーヒーで旅する日本/四国編|港町で出会った人の縁に導かれて。松山に新たな憩いのスタイルを広める「ICOI COFFEE」の現在地
東京ウォーカー(全国版)
2号店の開店で広がる新たなコーヒーカルチャー

深煎り・ネルドリップから始まったコーヒーは、いまや浅煎り主体の品ぞろえに変わったが、「初めのころはインドネシア・マンデリンとか、深煎り向きの豆を選ぶことが多かった。そのころは、自分自身も浅煎りには抵抗がありました。当時は浅煎りといえば、本当に酸味が強いイメージが強かったので。ただ、山梨でパブリックカッピングに参加したときに、深煎りとは違う世界があるというおもしろみも感じていて、自分でおいしいと思える浅煎りの焙煎を追求していきました」

三津の店はテイクアウト主体で、焙煎所の趣が強いが、「焙煎するとなると市街地では煙のこともあってやりづらい。ただ、集客やアクセスは街なかの方がいいので、ここはファクトリーと考えて、カフェは別で出店することは当初から考えていました」という佐々木さん。言葉通り、2023年には、松山市の中心部にイートインスペースも備えた2号店「ICOI COFFEE SUEHIRO」をオープン。開業の少し前に、松山のコーヒースタンドのパイオニアとしてSPOT COFFEE STANDが登場し、スタンドのスタイルが浸透していたことも大きかったという。今では両店で共通のお客も多く、新たなコーヒーカルチャーを広めている。

最初の間借り店舗から移転して4年、「浅煎りの魅力を発信してきて、お客さんもずいぶん馴染んできた感もある」という佐々木さん。今年からは、ゲイシャやアナエロビックといった、ちょっと贅沢な銘柄、先端のプロセスを経た豆もスポットで提案している。「周年のタイミングで、初めてゲイシャを売り出すときに参考にしたのが、茨城県のサザコーヒー。ゲイシャを日本一売ると言われるお店が、すごく試飲に力を入れていることを知って、うちでも周年記念のお菓子を注文した方は無料試飲できるようにしたんです。まず体験してもらわないとわからない、という考え方が大事と思ったので」

一方で、最近は徳島でカモ谷製作舎を中心に始まったロースターの勉強会にも参加。先々は焙煎の競技会への挑戦も考えているという。「ここまでコーヒーはほぼ独学でしてきましたが、勉強会のパブリックカッピングで風味の表現を学び、幅が広がったのは大きい。先々は焙煎機のサイズも大きくして、クオリティを継続すること」。とはいえ、今の店のあり方に固執するつもりはないようだ。「今はだいぶん浅煎りも普及してきたから、いつかは逆に深煎りを復活させるのもおもしろいかも(笑)」と言えるのは、深煎り・ネルドリップの昭和のスタイルも体験してきた懐深さゆえ。新しい憩いの定番は絶えず変化を続けていく。
佐々木さんレコメンドのコーヒーショップは「COPOLI DOUGHNUTS」
次回、紹介するのは、香川県高松市の「COPOLI DOUGHNUTS」。「開店以来、地元の厚い支持を得る高松のドーナツ&コーヒーショップです。店主の魚岸さんとは徳島のロースター勉強会でご一緒する機会があり、そのときに、焙煎の競技会・COFFEE COLLECTIONで準優勝されたのを知りました。“本業はドーナツ”と仰ってましたが、ギーセンの焙煎機を導入し、クオリティの高い豆をそろえていて、ロースターとしても本格的に取り組んでおられます。実はまだお店に行ったことがないのですが、今、四国の東側はコーヒー熱が高まっていることもあり、ぜひ一度訪ねたい一軒です」(佐々木さん)
【ICOI COFFEE のコーヒーデータ】
●焙煎機/アイリオ 1キロ(電熱式)、Easyster 4キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ V60、シンプリファイ、CT62)、エスプレッソマシン(Lelit、VBM)
●焙煎度合い/浅~中煎り
●テイクアウト/ あり(550円~)
●豆の販売/シングルオリジン4種~、150グラム1250円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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