コーヒーで旅する日本/四国編|“はっきり甘い”フレーバーでコーヒーの醍醐味を発信。進取の気性で拓いた浅煎りオンリーのスタイル。「CORSICA COFFEE DEVELOPMENT」
東京ウォーカー(全国版)
スペシャルティコーヒーが当たり前にある日常を香川に

蘊蓄度外視でフラットな目線でコーヒーを提案するのは、あくまで日常の飲み物として楽しんでほしいから。「コーヒーを“情報”で飲んでほしくない。コーヒーの好みは浅煎り派、深煎り派など別れがちですが、自分自身は決して他の味を否定するわけではないし、どんなコーヒーでも、まず、飲み物としておいしいというのが前提。目の前の、ありのままコーヒーを味わってもらいたい」との思いがある。おもしろいのは、豆の名称に対して常に同じ豆が対応するわけではないところ。例えば、大地を思わせるどっしりした味わいのTerra Nova、花の芳香を感じるBloomin’など、それぞれのイメージに風味の特徴が合えば、時期によって全く違う豆になるが、その時々の偶然の出会いもまた、この店ならではの楽しみの一つだ。「奥が深いという表現を、できるだけお客さんに言わせないように心がけています。そう感じた時点で無意識に壁を感じているわけで、逆に、気づいたら深いところにいたと感じてもらうのが理想です」

高松にまだ浅煎りのコーヒーを打ち出す店がなかったころから、「誰もやってないからこそ、自分がやろうと思った」と、新たな試みを続けてきた吉村さん。今では高松で浅煎りと言えば名の上がる存在にまでなったが、このムーブメントを、さらに広げたいと考えている。その取り組みのはじめの一歩となるのが、本連載の前回登場したCOPOLI DOUGHNUTSの魚岸さんと吉村さんを中心に結成した、カガワコーヒーテーブルの活動だ。現在7店が参加して、2024年に第1回のイベントを開催。SCAJの展示会やデパートの催事などにも、このグループで出展している。
「(2025年)5月21日から26日には、KAGAWA COFFEE FES.というイベントの開催が決まっています。いずれは四国全体に盛り上がりを広げたい。全国のロースターが集うような大きなコーヒーイベントは四国ではいまだにないので、先々実現できればうれしい。自分もそういうお祭りは好きなので(笑)。そこで、コーヒーってかっこいいもの、おいしいものと伝えたいですね」
そう話す吉村さんが目指すのは、香川、四国でスペシャルティコーヒーが当たり前にある日常を作ること。その上で、さらに自店の存在感を高めていく。「今までは、誰にも影響を与えるほどの存在ではなかったですが、いずれは、この店のマネをしたいと思われるようになれたらいいなと思っています。元来が目立ちたがりな性格というのもありますが (笑)」と吉村さん。開店から10年を超えてもなお衰えない意気込みは、趣味の将棋を通して見つけたという座右の銘にも現れている。「将棋界のレジェンドの一人、升田幸三名人の“新手一生”という言葉に感銘を受けて。生涯で数々の新戦法を生み出した名人に倣って、コーヒー屋としても同じ気概を持って続けたいと思っています」。

吉村さんレコメンドのコーヒーショップは「LUSH LIFE COFFEE」
次回、紹介するのは、香川県高松市の「LUSH LIFE COFFEE」。「高松ではおそらく初めての、オセアニアスタイルのコーヒースタンドとして注目を集める一軒。店主の川染さんはメルボルンでの修業経験もあり、コーヒーへのこだわりを最大限に表現するエスプレッソの技術、妥協のない仕事ぶりはまさにプロフェッショナル。繁華街から離れた意外な立地にあって、新しいことにチャレンジしているお店として尊敬する存在です」(吉村さん)
【CORSICA COFFEE DEVELOPMENTのコーヒーデータ】
●焙煎機/東京産機 2キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(カリタウェーブ)、エスプレッソマシン(シモネリ)
●焙煎度合い/浅煎り
●テイクアウト/ あり(500円~)
●豆の販売/シングルオリジン約10種、150グラム1500円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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