高校野球連載 第15回 /関西の名物パーソナリティ・道上洋三が語る!昭和の胸アツエピソード

関西ウォーカー

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 “高校野球大好き”な著名人が甲子園の魅力を語るスペシャル連載「”ワタシ”が語る甲子園~100年の熱狂ストーリー~」。情報誌「関西ウォーカー」と連動してスタートしたWEB版連載。今回は、大のタイガースファンとして知られ、ABCラジオの人気番組「おはようパーソナリティ 道上洋三です」(AM1008/FM93.3、月曜~金曜6:30~9:00)内で「六甲おろし」を歌い続けて41年越えの道上洋三さんに、心に残る名場面、取材時での胸アツエピソード、高校野球の魅力を聞いた。※道上さんは7/9(月)~8/31(金)まで治療のため休養。休養期間中は同局の堀江政生アナウンサーが代役を務める。記事は5月時点のもの

板東と村椿の投げ合いが凄かった!昭和33年の第40回記念大会


関西の名物ラジオパーソナリティ・道上洋三さん


―高校野球を好きになられたきっかけの試合ってありますか?

道上「昭和33年の夏の大会です。僕は中学3年生でした。あの年は、40回目の記念大会で、それまでの各地域からの代表(例えば、京都府と滋賀県は京滋代表で一校。山口県と広島県は西中国代表として一校)ではなく、各都道府県から一校ずつ出場していました。まだアメリカの施政下にあった沖縄からも首里高校が出場して、初めて47代表になった年です。出場校が47校になったので、3回戦までの試合は甲子園球場と西宮球場の2球場で行われました。その記念大会で優勝したのが、なんと我が故郷でもある山口県の代表、柳井高校だったんです。そして、この大会で話題だったのが、徳島商業高校の板東英二投手(のちにタレントとして活躍)。彼の奪三振83は、今も破られていない大会記録ですよ。特に準々決勝の魚津高校(富山)の村椿輝雄投手との延長18回の投げ合いは、今も語り継がれる名勝負。0対0で引き分け、翌日の再試合で徳島商が勝ったのですが、この延長18回を投げ終わって宿舎に帰った村椿投手は、医師から点滴を受けるほど疲労困憊していたそうです。一方、板東投手は宿舎に着くなり『なにか食べるもんない?』と言ったとか。後年、番組に出演していただいていた板東さんに聞いたところ、甲子園の延長18回の投げ合いより、当時の徳島商の普段の練習の方が、よほどしんどかったんだそう。それをそのまま記者団に言ったもんだから、マスコミがみんな判官贔屓(ほうがんびいき)になり、村椿投手のことを『敗れたとは言え、甲子園に咲く村椿の花一輪』と持ち上げて、すっかりヒーローになりました。板東さんはヒール役にされたと悔しがっていましたね。少し話がそれてしまいましたが、その板東投手の徳島商と決勝で戦ったのが、山口県代表の柳井だったのです。目立つ選手のいない公立の進学校でしたし、当然優勝は徳島商と思いきや、なんと7対0で柳井の勝利。さすがの板東投手も延長18回の疲れが決勝戦で出たんでしょうね。中学3年生だった当時の僕は、当然柳井を目指しましたが、学力不足のため柳井から5㎞離れた熊毛南高校に進学しました」

【画像を見る】母校の熊毛南高校・野球部に「クラブハウス」を寄贈したことも。甲子園初出場にも期待がかかる


―そんな歴史に残る大会をリアルタイムで見ていたら、高校野球を絶対に好きになりますよね。

道上「僕も柳井に行きたかったですね。実は、進学した熊毛南では、最初は野球部に入ったんですよ。辞めて、陸上部に入りましたが、その後も駆り出されて野球部の試合に助っ人で出てましたね(笑)。3年後に学校再編で校名が変わるかもしれないので、それまでに夏の甲子園に出てほしいです」

昭和40年に初登場・初優勝した三池工業高校が忘れられない


昭和40年の優勝校である三池工の話では、本誌スタッフも思わず泣きそうに


―朝日放送に入社されてから、印象に残っている試合はありますか?

道上「入社して3年間はスポーツアナウンサーでしたが、印象に残っているのは、入社した昭和40年、第47回大会ですね。福岡代表の三池工業高校が初出場、初優勝した年です。原 貢監督(元巨人の原 辰徳の父親、のちに東海大相模高校や東海大の監督も務めた名匠)のもと、名門・高松高校や報徳学園を延長戦で破り、初出場で初優勝したんです。原監督やエース上田卓三(南海→阪神)投手は、当然ベテランアナウンサーがインタビューします。僕がインタビューしたのは、池田和浩選手でした。彼に、優勝して一番の喜びはどんなこと?と聞いた時です。一瞬考えてから、『久しぶりに母さんと姉さんに会えたことです。あの事故以来、ずっと離れてたんですが、やっと甲子園で会えました』と言ったのです。あの事故とは、三池工が初出場する2年前に三井三池炭鉱で起きた落盤事故のことで、458人の犠牲者が出ました。彼のお父さんもその一人で、お母さんとお姉さんは、尼崎市まで出稼ぎに来ていたのです。だから、約2年ぶりの再会が甲子園球場だったというのです。優勝の喜びより、肉親と会えた喜びを語ってくれた池田選手に、僕の方が涙してしまいました」

早くも今年の注目選手をタイガースにスカウト!?


―今年の夏、注目している学校はありますか?

道上「大阪から2校出場できるので、大阪桐蔭と履正社両校に出てほしいけど、同じ区になったので残念ですね。個人的には、大阪桐蔭の根尾 昂投手はいいですね。投手としても打者としてもいい。次の大谷翔平投手を目指してほしいと思うし、なにより阪神タイガースに来てくれないかなぁ!」

―最後にあらためて、高校野球の魅力を教えてください。

道上「勝った板東英二より、負けた村椿だったり、決勝も、その凄い板東に、山口の柳井が勝ったりという、やはり判官贔屓ですよね。今でも私立の強豪より公立の高校の方が応援されるじゃないですか。甲子園は、それが似合うんです。そして、私立より公立、有名より無名のチームが勝ち進むのは、今も昔も変わらないのではないでしょうか。それが高校野球らしい高校野球だと、僕は思うんです」

<番外編>道上さんが顧問を務める「甲子園歴史館」を紹介!


大正4年の第1回大会初代優勝旗の前で


道上さんの直筆ボールも飾られているので探してみて


高校野球の貴重な資料や阪神タイガースの歩みなどを展示する、阪神甲子園球場併設の博物館。道上さんのほか、作家の佐山和夫さん、吉田義男さん、川藤幸三さん、長島三奈さん、山下智茂さんなどが顧問を務める。

道上さんが顧問を務める「甲子園歴史館」


■甲子園歴史館 電話:0798-49-4509 時間:10:00~18:00(最終入館各30分前)※催しにより変動あり 休館日:月曜日、年末年始(試合開催日と祝日は開館)※メンテナンス休館あり。バックスクリーンビューは試合時・荒天時は閉鎖の場合あり 入場料:大人¥600、4歳~中学生¥300 アクセス:阪神甲子園駅より徒歩5分



〈今回の語り部〉

道上洋三/1943年3月10日山口県平生町生まれ。65年朝日放送(ABC)入社。77年に「おはようパーソナリティ 道上洋三です」のメインパーソナリティを務め、現在41年を越える

鈴木淳史

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