北海道ゆるっと鉄道旅~花咲線3:ルパンの町で宝探し。無人島を目指せ!

北海道ウォーカー

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別寒辺(べかんべうし)牛湿原の中を進む花咲線。冬に流氷物語号として運行する車両が、一般車と同じ運用に就き花咲線に入ることもあります(厚岸~糸魚沢間)


厚岸(あっけし)駅を出発し、湿原の中や牧草地の脇を進む花咲線の列車の旅。3回目となる今回は、厚岸駅から2駅目の茶内駅で下車をし、一日ゆっくり過ごします。

茶内駅がある浜中町は、アニメ「ルパン三世」の原作者、モンキー・パンチ氏の出身地。駅に下り立つと、駅員さんはいませんがルパンがお出迎えをしてくれました。駅周辺をちょっと見学したのち、霧多布(きりたっぷ)湿原にあるペンションポーチへ。大自然に囲まれた宿で一泊過ごし、翌日は太平洋に浮かぶ無人島へ! もしや島にはルパンが狙う金銀財宝が!? その真偽はこの続きをご覧あれ!

花咲線沿線の、太平洋に浮かぶ無人島を探検!


ルパンがいる無人駅、かつては交通の要衝駅


茶内駅は花咲線内で数少ない上下列車が交換できる駅


茶内駅で根室駅行と釧路駅行の2列車が概ね同じ時刻に到着。ともに2、3名ずつ乗客の乗り降りがありました。誰もいない駅舎の中を通り抜け反対側の扉を出ると、すぐ脇にルパンを発見! 駅をはじめ町内の各所にルパンの一味が潜んでいます。探して回るのも一興ですよ。

茶内駅と隣駅の浜中駅にはルパンの等身大パネルがあります©モンキー・パンチ/TMS・NTV


茶内駅の駅舎には待合室のほか、鍵のかかった部屋があります。さて、この部屋には何が隠されているのでしょう?

部屋の名は「ふれ茶内館(ふれちゃうかん)」


「ルパン、鍵のありかは?」

「不二子ちゃんが知ってるよ」

そんな会話をしたつもりで、駅前にある不二子ちゃんのパネルがあるお店へ行ってみましょう。

駅前にある畠山金物店。事前に連絡をすれば、ふれ茶内館の鍵を貸してくれます©モンキー・パンチ/TMS・NTV


鍵を受け取って再び駅舎へ戻り、ふれ茶内館の扉をオープン。

ふれ茶内館の中はこのとおり


ここは、地域住民の方のコミュニティースペースであるとともに、茶内駅など浜中町の歴史にまつわる資料が保存展示されているスペース。駅名表示板などが展示されているとともに、浜中町の鉄道の歴史について紹介する案内が掲示してあります。資料を見ていると、ちょっと見慣れない「浜中町簡易軌道」なる鉄道名が。

「浜中町簡易軌道」とあります


この浜中町簡易軌道は、昭和時代初期にこの地域へ入植した人のためにできた交通機関。長らくの間地域住民の足として、また牛乳など生産物の輸送に就きましたが、道路網の整備や車、トラックの普及により、1972(昭和47)年に役目を終えた鉄道です。かつては茶内駅を起点に3路線あり総延長34㎞もあったそうです。

茶内駅から徒歩10分程度の「ふるさと公園」内に、かつて使われていたディーゼル機関車と客車の台車が展示されています


茶内駅からは車でないと行くことが難しいのですが、森林の中に浜中町簡易軌道の秩父内(ちっぷない)駅跡が残っています


ルパンが見守る駅の中には、地域の宝、浜中町の歴史が眠っていました。

霧多布湿原の魅力をたっぷり感じるペンションポーチ


では、今晩の宿へ向かいます。今回宿泊するのは、太平洋に面する湿原、霧多布湿原にある「ペンションポーチ」。歩いて行くには遠いので、事前に宿と相談のうえ送迎を依頼します。

茶内駅から車にて10分少々で到着


宿のオーナーは、浜中町の昆布漁家に生まれ育った瓜田勝也さん。若い頃は家業を継ぎ昆布漁師をしていましたが、1983(昭和58)年に東京からこの地へ移住し喫茶店を開いた人と出会ったことをきっかけに、人生が一変したそうです。

「子どもの頃から自転車感覚で船に乗ってたよ」と語る瓜田さん。漁師を辞めて長いものの、船の操縦は今でもお手の物


出会ったこの移住者を子どもの頃によく遊びに行っていた湿原の中へ案内したところ、湿原内には缶ゴミが散乱。案内するのも恥ずかしくなる惨状だと衝撃を受け、霧多布湿原の自然保護と情報発信が必要だと感じたそうです。改めて気づいた霧多布湿原の魅力を紹介したいと思い、周囲の反対を押し切り昆布漁師を辞め3年後にペンションポーチを開業。その後2000(平成12)年には自然保護のため、霧多布湿原内の民有地を買い上げ保存するナショナルトラスト運動のNPOも立ち上げました。瓜田さんは霧多布湿原の自然を守る、地域の宝です。

宿の後ろには広大な霧多布湿原が広がります。ペンション脇から湿原内の散策も楽しめます


湿原の中を進む散策路。ひんやりした早朝の散歩はいかが?


宿の食事は、極力地元の食材にこだわったオリジナル料理。夕食では浜中町産ホエー豚のポトフや厚岸町産牡蠣のフライ、シーフードハンバーグステーキなど、魚介類を中心とした和洋折衷のコース料理、朝食は和定食を味わえます(食事内容は一例です)。

夕食後は「霧多布の四季」と題したスライド上映会。霧多布愛にあふれる瓜田さんによる、霧多布湿原と周囲の自然や観光案内を楽しめます。この地の魅力に惹かれワクワクしながら床につき、翌日は瓜田さんが案内するエコツアーに参加し、無人島へ上陸します。

漁船に乗って太平洋の無人島「ケンボッキ島」へ


翌朝、瓜田さんの案内のもと漁船へ乗り込みます


午前中に行われる約3時間のエコツアー「ケンボッキ島探検ツアー(昼食付き)」に参加します。向かう先は、霧多布湿原の目の前に広がる太平洋に浮かぶ無人島、ケンボッキ島。大海の孤島というわけではなく港から目の前に見える島なので、ガチな冒険という不安感はなく、ちょっと探検というドキドキ感がいっぱい!

海上で瓜田さんの知り合いの漁師さんと出会い、船上で談笑。右の陸地が北海道本土、左がケンボッキ島です


島には桟橋がないので、このように脚立で乗下船します


10~15分程度の乗船で島へ。海岸を歩いたのち、島の中央にある丘の上まで上がります。

ケンボッキ島は、東西約2km、南北約0.9kmの細長い島。以前は昆布漁師が居住していましたが、2000年前後からは完全に無人の島になりました。また、かつてムツゴロウさんの愛称で知られる畑正憲さんが約1年間定住し「ムツゴロウ王国」を開いた地としても知られています。

瓜田さんに島を案内してもらいます。後方左手の陸地が北海道本土


草むらの中にかつて有人島だった頃の徒歩道の跡がかすかに残っていて、その道をたどるように進みます


ケンボッキ島の最高地点は約59m。頂上付近は山ではなく平らな土地なので、どこか最高地点がわからないほど。平らな島のてっぺんには、野花が点在する草むらの中に、木の柵や馬車と思われるわだちの跡がかすかに残っていました。かつての放牧地跡やじゃがいも畑の跡のようです。

島の中央部から北海道本土と反対側の海が見える斜面まで来たら、ゴザを敷いて休憩タイム。

昆布漁場を眺めながら、瓜田さんに用意してもらったお茶とお菓子をいただきます


軽くお昼寝も。心地よい潮風と柔らかい陽射しを浴び、最高のひと時


かすかに残る人の営みの痕跡を覆う草花と、大海原から流れてくる潮の香り。草に隠れた岩場には海鳥が営巣している痕跡も多々ありました。この島の宝は、大自然の息吹そのものでした。

非日常感たっぷりの島でのひと時を楽しんだら、船に乗って本土へ戻ります。船の旅から再び鉄道の旅へ。茶内駅から根室駅行の列車に乗ります。

次回は終着の根室駅で下車し、さらに東の地、納沙布岬を目指します。

ペンションポーチ ■住所:浜中町仲の浜122番地 ■電話:0153・62・2772 ■料金:1泊2食2名1室1人あたり9180円~ ■ケンボッキ島探検ツアー(昼食付き):定員9名5~10月9:30~12:30、宿泊者1人6480円・非宿泊者1人7560円

※駅や列車、お店の紹介内容は2018年8月現在の情報です。

川島信広

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