連載第8回「大阪インバウンド最前線」道頓堀商店会では、言葉がわからなくても楽しめるミュージカルでおもてなし!

関西ウォーカー

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この連載は、大阪で激増するインバウンド(訪日外国人観光客)の最前線を⼈気施設や旅⾏・観光に詳しい業界関係者などキーパーソンに話を伺うインタビュー企画。

第8回は道頓堀商店会事務局長・北辻稔さんと、道頓堀ZAZAでミュージカルを運営する株式会社バイタルアートボックス代表取締役・吉元常洋さん、事業部プロデューサー・今井隆彦さんの3名に、大阪のインバウンドの現状や、インバウンドが増えて変わったこと、今後の展望などを聞いた。

左から、事業部プロデューサー・今井隆彦さん、道頓堀ZAZAでミュージカルを運営する株式会社バイタルアートボックス代表取締役・吉元常洋さん、道頓堀商店会事務局長・北辻稔さん


大阪のインバウンドの現状は?


―急増するインバウンドの現状を教えてください。

【写真を見る】株式会社バイタルアートボックスが運営している道頓堀ZAZAでミュージカル


北辻:私が商店会に来て4年なので、それ以前のことはあまり知らないですが、4年前と比べてもかなり増えていますね。公表では毎日10万人が道頓堀に来ていて、その半分が外国人。外国人の半分が中国人、さらにその半分が韓国人、その残りを他の国の人が分けている感じですね。

――吉元さんはもう少し前から商店会にいらっしゃいますか?

吉元:私は10年くらいですかね。ちょうど道頓堀が落ち込んだ時期で、「極楽商店街」がなくなった頃ですね。あの時は日本人の観光客が減ってしまって、それに代わるものが全くなかったので閉鎖になってしまった。外国人もほとんどいませんでした。本当に「極楽商店街」が今あったらよかったのにって思いますよね。ただ、悩みは8割がインバウンドの方で、日本人が来ないという…。

今井:道頓堀はインバウンドが圧倒的に増えて、たこ焼きとかクレープとかの店が増えて、ファストフード化していますね。

北辻:団体ツアー客が堺筋でバスを降りて、道頓堀に来るのですが、あんまり時間がないんです。だから、簡単に食べられるものが受ける。「道頓堀でたこ焼きを食べた!」というのが、道頓堀に来た証になるという。もう一つはドラッグストアとか家電量販店が増えてきたことも大きいですね。大型店舗が増えて、インバウンド観光客対応の店が増えてきた。当然、商売だからそうならざるを得ないんでしょうけど。

吉元:もともとは土日の昼間に大阪府下や関西圏から来て、芝居や映画を観て「道頓堀でええもんを食べようか」というのが道頓堀の使われ方でしたが、土日の客が減ってきている。関西から来る人たちの行く場所がだんだんなくなっているんですね。ファストフード化しているし、大阪人がわざわざたこ焼きを食べてどないすんねんと。心斎橋なんかでもドラッグストアとか、日本人観光客にとってはわざわざ心斎橋で買わなくてもよい商品を扱う店が増えて、だんだん行きにくくなっているという。

今井:実際に心斎橋、戎橋は土日の客が増えてなくて、平日が増えてるんですね。ということは、インバウンド観光客が増えていて日本人客が減っていると。インバウンドのブームはまだ続くと思いますよ。オリンピックもあるし、万博もあるとすればね。ただ、いつまでもこんないい調子だとは思えないし、医薬品とかも中国本土でも売られてくるようになるやろうし、ネットでも買えるようになると「大阪では買わんでええわ」って、頭打ちになると思うんです。その時に、ポストインバウンド対策をしないといけないとうのが課題なんです。

ガイドブックだけじゃ伝わらない大阪の魅力


――その議論や話題はよくでるのですか?

北辻:商店会では数年前からそういう話をしています。2015年に道頓堀開設400年のイベントをしましたが、これから100年間にぎわい続けるためにどうすればいいかと、「道頓堀500」というタイトルで1年かけて研究会をしたんです。400年前に芝居の町としてはじまっているので、それを復興しないといかんと。その問題意識の元は、日本人客をもっと呼び戻したいということ。ライブ・エンターテインメントの街こそが道頓堀やから、そこをもう一度見つめ直そうと、劇場の拠点として「道頓堀GOTTA」ができたわけです。「道頓堀GOTTA」は、フードミュージカルという新しい分野で、大阪、道頓堀の特色が出た上で、歌舞伎や三味線など伝統芸能の要素を入れていて、いいできだと思います。

「道頓堀GOTTA」では歌舞伎や三味線など日本楽器も用いる


吉元:ロングラン公演なので、クオリティの基準を高くしています。それでも、「ああした方がええのに」という声が上がっているので、少しずつでもさらにクオリティーが上がる作品にしようと、日々試行錯誤を重ねています。

今井:劇場がここ30年の間になくなって、本来道頓堀に来ていた方の目的が、劇場に足を運んでその後にご飯、という流れやったのが、劇場がなくなるとご飯だけが残ってしまった。道頓堀で何をするねんといえば、おいしいものを食べに行くだけと。なので、従来の流れを取り戻すためにはライブ・エンターテインメントを増やさないといけない。道頓堀をテーマパークにするという発想で進んでいこうという指針を出したんです。そのまだ途中ですけどね。

北辻:団体客でガイドが旗を持って引率するようなせわしない旅行は減って、個人旅行が増えてきたので滞在時間を長くしてほしい。それで芝居を観て、ファストフードだけじゃなくて、割烹とか焼肉とかを食べて帰ってもらう。「今井」のうどんを主体にした割烹的な料理とか、「はり重」のすき焼きとかね。それなりにいい値段はしていますけど、ゆっくり時間をかけて道頓堀の店の中に入り込んで食べてもらうと。

吉元:ガイドブックだけで表面的にさらっと見て、写真で撮ってあるものを確認するだけの旅じゃなくて、オリジナルなものを自分で見つけてもらうという。そのためには、それなりに滞在時間もいるのかなと。滞在時間を延ばすような工夫をまずはしないとあかんのやろなあと。

今井:そこで今、芸人さんと一緒に劇場の跡地を巡ってもらうプランを考えています。実際に残っているのは「松竹座」だけなんですが、「中座」という大きな劇場もあって、「Forever21」の場所には「浪花座」がありましたし、「朝日座」「角座」「弁天座」と東に向かって並んでいました。うどんの「今井」の横に「浮世小路」という、戦前の道頓堀の雰囲気を体験できる細い道もある。芸人さんと一緒に街を歩いて、寄席を観て、事務局長のお話を聞いて、「道頓堀GOTTA」を観るという3時間ツアーをJTBさんで販売してもらっています。

―色々アイデアを出しているんですね。

北辻:数年前から「道頓堀盆踊りインターナショナル」という名前で、外国人にその場で体験してもらっています。実は、「Bon Dance」というのが世界各国にできつつあるんですね。日本人のビジネスマンが海外で長期滞在している時に、夏に盆踊りがしたいというのが割とあるらしくて、サンパウロとかハワイとか、その土地土地で盆踊りをしているそうなので、ぜひ世界盆踊り大会を道頓堀でやりたいなと。世界盆踊り連盟というのがありますからね。去年あたりは、飛び入りの外国人がかなり喜んでやってくれている。「Bon Dance」でインターナショナルな輪を作っていきたいなと。そのメッカを道頓堀にしたいと、そういう意気込みなんですけどね。

インターナショナルとしての場所をつくっていきたいという


吉元:カラオケ大会もやってますよ。「ジャンカラ」の協力を得て、CDに自慢の曲を録音してもらって、「ジャンカラ」の審査員で30名を選んでもらう。その本選の会場が道頓堀。去年は約400人が参加しました。かなりレベルが高いですよ。

――大阪観光局のアンケートではカラオケは海外の方にも満足度が高いですね

北辻:各国でカラオケって結構ありあすもんね。そういうのを道頓堀からどんどん発信して行きたいです。あと、ジャズボートとかリバークルーズ自体がもの凄く盛んになってきたので、川沿いも賑わってきたというのはインバウンド効果も大きいと思いますね。

――リバークルーズはインバウンドの方もかなり利用されているんですか?

今井:周遊パスで無料になりますので。

北辻:400年も繁栄し続けてきた商店街というのは世界中見ても、あんまり知りません。なおかつ、川筋に発達した商店街というのは全然ないんですよ。

今井:イタリアのナポリとか、ああいうところにはね…。

北辻:あるんかいな(笑)。あと、全国各地、商店街といえばアーケード。道頓堀もアーケード化しようという話が何十年も前からあったんですけど、頓挫しましたね。青空の下で買い物ができる、遊べるというのは活気がある。そこの価値を優先したんですよね。

吉元:アーケードができたら、看板は全部統一しないといけないから、カニとかフグとかなくなりますし。綺麗にはなるけど、特徴はなくなりますよね。でも、そのなかでもまた目立とうとするからなあ、大阪の人は…(笑)。

今井:そういうエスカレートしているのが、外国人からしたらエキサイティングな感じに捉えられる。

――ある意味、オンリーワンなんでしょうね。

吉元:ごちゃ混ぜな街並みが、アジアの人には好ましいんでしょうね。

目標は道頓堀をテーマパークに!?


――これから目指すことはありますか?

北辻:JTBさんと組んで、道頓堀をテーマパークにしようというのが始まったばっかりですけど。今の道頓堀は、インバウンドを呼びたいって呼んだわけじゃなく、自然に人が集まってきた街。これからはもう少し計画性を持って、きちっと観光地として作り上げていきたいですね。

観光地として自然と人が集まる街にしたいという


※本企画は、情報誌「関⻄ウォーカー」2018年8/28発売号の大阪インバウンド特集「YOUは何しに大阪へ?」との連動企画です。

横井哲也

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