着るものの魅力を引き立てる一着を作る「テーラー中山」

東京ウォーカー(全国版)

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1957(昭和32)年に創業後、1969(昭和44)年に荻窪教会通り商店街に店を構えた「テーラー中山」。現在は二代目となる中山弘さんが店に立っている。同店は1980(昭和55)年に先代の父・勇さんが、全日本紳士服技術コンクールにて最高位である高松宮技術奨励賜杯と内閣総理大臣賞の両賞を同時に受賞した経歴を持つ、由緒あるテーラーだ。

二代目の中山弘さん。物静かな雰囲気と優しい口調が印象的


国内最高級服地ブランド「御幸毛織」の特約店として、上質な服地をそろえている


客層は地元客が7〜8割、そして地元から転勤などで移転したり学生が社会人になったりと荻窪を離れた人が3割ほどだという。「HPやブログ、フェイスブックなどで当店を知っていただいていた方や若い方がショーウィンドウを見て来店してくださるなど、新規のお客様も年間を通じで50〜60名ほどいらっしゃいます」と中山さん。

“スーツを仕立てる=高級”というイメージがあるが、同店では既存のパターンやデザインをベースにして作る直縫いのオーダーも扱っている。中山さんは「オーダーメイドの良さを知っている往年のお客様は20〜30万円、我々のような世代ですと15万前後、そして若い世代の方に向けた5〜6万5000円くらいと、縫製の仕方で大きく3段階に分けています。流行やブランドも良いですが、ポケットの位置、ウエストの絞りを少し変えるなど、ちょっとしたディディールに自分らしさをプラスするだけで、それはもうオーダースーツと言えますよね」と微笑む。そのひと言が、スーツを仕立てようと意気込んでしまう気持ちを軽くさせてくれる。

コンプレックスはカバー、長所は強調すればスーツはもっと自分のものになる


中山さんは、オーダースーツは自分の長所も短所も魅力に変えられると話す


中山さんはオーダースーツの魅力を「お客様の体の通りに作ればいいわけではないんです。首が太い・細い、背が低いなどみなさんそれぞれコンプレックスを抱えていらっしゃいます。でも作り手側の経験と工夫でそのコンプレックスを補うことは容易。一方、足が長いという方は、より一層長く見えるようにすることだって可能です」と語る。中山さんも身長約170㎝とのことが、もっと背が高く見える。本人いわく、長身に見える“ずる”をしていると笑う。

すべての服地に触れられるようにしている


同店で扱う服地は、国内最高級服地、御幸毛織の「NAPOLENA」をはじめ、半数は高級輸入服地も豊富にそろえる。「実際に触れて質感を確かめていただきたいので、どの生地も触れていただけるようにレイアウトしています」と中山さん。日本人の肌や体型に最も映えると言われている上質な生地と、中山さんが採寸してくれたデザインで仕立てるスーツは、自分だけの一点物として大切な一着になるに違いない。

婦人服地のサンプルも豊富にそろえている


レディスの服地もバリエーション豊か。「好みはもちろん、季節に合わせた色合いや素材をチョイスいただけるようサンプルも数多くそろえています」(中山さん)

また、どの色がその人に合うかを瞬時に判断することができるという中山さん。実は、同店を継ぐ以前、塗料会社の技術職についていたという経歴を持つ。「例えばグレーで塗装されているものがあるとしますね、でもそれは、白と黒だけで作られた色ではないんです。赤や青といったもう1つ異なる色が加わり色の深みが出るのですが、それが何色なのかを見分けることができます。こうした調色で得た能力は、服地のコーディネートに生かしています」

店内に掲げられた一枚の書が、中山さんの原動力


店の理念として掲げられている一針入魂の書


先代がお店を切り盛りしていたころ、先代の恩人が「一針入魂」の文字を書にしてくださったそうで、今でも大切に店内に飾られている。

「私がテーラーであることを知っている大学時代の後輩が、スーツを作りに来てくれたんです。するとこの色紙の名前を見て、“祖父が書いたものだ”っていうんですよ。大変驚きましたが、巡り巡ってこういう縁もあるんだなと…」と感慨深そうに話してくれた。

名誉ある賞を受賞した先代の技術は、二代目として店を守る中山さんに受け継がれ、今ではベテランとして多くのファンを惹きつけている。でもその眼差しは、きっと先代が「一針入魂」の書をもらった時のように、決しておごらず、お客様の期待に応えられるようにと前だけを向いているように思える。

初めてスーツを仕立てる時、緊張や不安な気持ちを持つ人は多いだろう。そんな人は、柔軟な思考で個性を生かしてくれる中山さんがいる「テーラー中山」をのぞいてみて。その緊張や不安は、自分の良さを引き出してくれるスーツとの出会いに対する期待へと変化するはずだ。

※テーラー中山はAmexとJCBの地元を応援するプログラム「SHOP LOCAL」参加店です

【編集・取材・文=CRAING/撮影=齋藤ジン/ウォーカープラス編集部】

※記事内の価格は特に記載がない場合は税抜き表示です。商品によって軽減税率の対象となる場合があり、表示価格と異なる場合があります。

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