結成3か月の新ペア、三浦璃来・木原龍一組が国際大会デビュー!新たな挑戦のシーズンが始まる!!
東海ウォーカー
2019年11月22日(金)から24日(日)まで「真駒内セキスイハイムアイスアリーナ」(北海道札幌市)でNHK杯が開催される。そこに日本の新たなペア、三浦璃来・木原龍一組が出場する。昨季までは別のパートナーと組み、競技をしていた二人だが、今季の開幕前、急遽ペアを組むことが発表された。今回は、2人が公式戦として初めて出場する試合となった東日本選手権でのインタビューをお届けする。
急な話だったという、新ペア結成の経緯

木原選手(以下、木原)「2019年7月の末に彼女たち(三浦・市橋)がペアを解消した後にお話をいただきました。その頃自分は古巣の邦和スポーツランドで働いていたんです。貸し靴の業務だったり、宿直業務だったりを経験させていただいて、今までそういった経験がなかったので楽しくやっていました。正直もうペアには戻らないかなと思い、8月も遊ぶ予定を入れていたくらいです。そんなとき7月末にお話しを急遽いただいて、8月12日には、カナダのトロントに渡りました。ビザも用意してなくて何も準備がない状態で行きました」
まだペアを組んで期間は短いが、お互い好印象を感じながら練習ができているそう。
木原「彼女は恐怖心に打ち勝てる心を持っています。初めてのことでも怖がることなくできるので、やっていて滑りやすいと思います」
三浦選手(以下、三浦)「木原選手は安心感がすごいです。リフトは絶対に落とさないと言ってくれるので。最近は落ちてもいいや、くらいに思えるようになりました。安心し過ぎて、もういいや、みたいな(笑)」
木原「それはやめてください(笑)」

トロントの新たなホームリンクでは、コーチ、チームメイトらと充実した環境で練習に励んでいるという。
木原「ブルーノ・マルコット、メーガン・デュハメル、もうひとり、ブライアンという先生の3人で回していて、他にプログラムのブラッシュアップをしてくれるアイスダンスの先生がいて、コーチ陣は総勢5人ほどです。コーチングの体制が日本とは全然違います。また、昨年までのチームはペアが1組だけでしたが、今のチームには8組います。ロッカールームでもひとりじゃないですし、つらい時でもチームメイトが応援してくれます。練習中にうまく行かないことがあった時も、パートナーを交代して試して、その場ですぐに、あなたの方が悪いからやり方を直して下さいと先生から指示が出ます。以前は他にペアがいなくて、そういった確認方法が取れなかったため、改善するのに時間がかかっていました。今は凄く楽です。ああ、こういったやり方もあるんだなと、カナダでは色々勉強できて楽しいですね」
この取材の時点で結成してわずか2か月。ただとてもそうとは思えないほど良く仕上がっていた。しかし、今季は色々なことが変わった、新たな挑戦のシーズンとなる。
木原「コーチがメーガン・デュハメルに変わったのですが、彼女は現役時代、アクロバティックなことをやっていたので、そういうこともプログラムに入れていけたらいいなと思います。ただ、まだ結成したばかりなので、今季は難しいことをやらずに、とにかくミニマムスコアを取ることに集中してやっていければいいねとコーチとは話しています。NHK杯ではミニマムスコアを狙っていきます」
目標とする世界選手権に出場するためには、ミニマムスコアをクリアすることが必須となる。今季はTES(技術要素点)において、ショートプログラムで27.00、フリースケーティングは44.00と設定されている。NHK杯でこのミニマムスコアを獲得することが目の前の目標なのだ。
進退について悩んだ木原選手。けがを乗り越えて…
木原は以前から怪我が多く、また昨季は四大陸選手権直前の練習で脳震盪を起こす事故があり、四大陸選手権、世界選手権を欠場、長い休養を余儀なくされた。進退について考える日々もあったという。
木原「脳震盪から完全に回復したのが5月です。シングルの練習はしていて、ジャンプの調子は良くなったんですけど、何をモチベーションにすればいいのか悩んでいました。一時はシングルで1年だけ出場して辞めようと考えていたんですけど、そういった時期に三浦選手とのお話をいただけたのです」
古傷を負いながらもペアを続ける決断をした木原だったが、あまり怪我の影響はなく、練習に挑めている。
木原「手首はもういいんですけど、肩はまだ完全ではないです。でも一応リハビリは卒業、と言われるぐらいに良くなりました。比較的痛いところはなくて、しっかり練習できています。メーガン、ブルーノも肩の状態を気遣ってくれて、無理をしないように練習しています」
結成して2か月で、素晴らしいコミュニケーションが取れているふたり

ふたりは過去に、別のペアとして大会などで会う機会はあった。当時どんな印象だったのだろう。
三浦「正直に言うと、話しかけづらい、怖いイメージでした」
木原「良く怖がられるんですよ」
三浦「ずっと敬語だったよね」
木原「しょうがないじゃん、年齢差があるんだから。みんな怖がるんですよね。集中しているとしゃべらなくなるのと、顔が怖くなるので」
三浦「しゃべりづらかった」
木原「三浦選手とは、ジュニアで試合がかぶることがなかったので、あまりイメージがないですね」
以前はお互いにあまり交流なかったようだ。しかし、結成して2か月でその印象は大きく変わった様子。木原選手にとってはこれだけ年齢差のあるパートナーは初めてだが、そうとは思えないほどコミュニケーションが良く取れている。
三浦「からかってくるんですよ。すごいディスってくるよね」
木原「優しいからね、俺は(笑)。めっちゃ厳しいのと、こうやって、からかってバカみたいなことを言ってくるのと、どっちがいい?」
三浦「めっちゃ厳しくとかできないでしょ。もうずっとそんな感じじゃん」
木原「みんな怖がるんですけど本当は怖くないんですよ。真面目な時は真面目ですけど、基本、バカなこと言っているので」
三浦「こんな感じです(笑)」
今季、ミニマムスコアをクリアするためにはリフトで確実にレベルを取り、加点を得ることが極めて重要だ。
木原「身長差があるので上げやすさはあります。それから彼女は、(力を入れて)張るべきところを分かっていると思います。たまに落とすことはありますけど、危険な落とし方ではないので、比較的安全な練習ができています。失敗して落ちることは怖いと思うので、僕は必ずひろうからと伝えています」
三浦「すごく安心して練習できています」
木原「コーチからは、パフォーマンスを上げろと言われています。技術的にはちゃんとやればレベルは取れるので。後半のきついところでも顔に出さずに、もっとパフォーマンスを上げろと出発する直前の練習でも言われました」
”ペア人生で一番きつかった”フリースケーティング
「通すのがやっと、2か月で良く間に合ったなという感じです」と語っていたフリー演技後の取材では、足首をアイシングし、木原選手に背負われて会見場に現れた三浦選手。当日朝の公式練習で怪我をしたのだそう。東日本選手権のフリーは、それを押しての演技だった。
木原「僕個人の感想としては、スタミナがきつかったです。今までのペア人生で一番きつい演技でした。収穫は、リフトでレベル4がそろっていたことです。その目標は達成できました。ただ加点がついていなかったので、次に向けて改善したいです」
三浦「足はまだ痛いです。あまりサルコウではこけたことがなかったんですが、こけても持ち直せるようにしたいです」
控える大舞台、NHK杯に向けて解決すべき課題を見つけたようだ。
木原「今回見つかった課題をNHK杯までに改善したいです。2か月でここまで来られたことは自信になりました。ブルーノ、メーガンと一緒にやっていきたいです。彼らの存在は大きいです。信頼しています。ミニマムスコアをクリアして世界選手権に出たいです」
三浦「メーガンの言っていることを直したら、必ず良くなります。一つ一つの技を高めていきたいです」
将来の大目標、2022北京五輪を目指して

フィギュアスケート選手の多くが最終目標とするオリンピック。三浦・木原ペアも次回の2022年の北京オリンピックを意識している。
三浦「オリンピックは、私がジュニアの頃は本当に“雲の上の存在の人が出る試合”だと思っていました。自分が目指す、という感じではなかったです。今はそこに少しでも近づけるようになりたい、そう思えるようになりました」
木原「ふたりともメンタリティの部分がまだ弱く、練習から弱い部分が出てしまうことがあるので、そこを改善しないと未来がないと思います。正直、結成して2か月で良く仕上がってきているのですが、まだシニアの点数じゃないので。北京オリンピックっていうのは大きな目標ですけど、今のままではたどり着けない場所。枠取りもありますので、練習から質の高いことをやっていかなければならないと思います」
木原選手はソチ、平昌と2度の五輪に出場したオリンピアンだ。先輩として三浦選手を導く役割、そして自らの成長という2つの挑戦が待っている。
木原「自分は名ばかりのオリンピアンなので、そんな誇りに思えていないんです。ただ経験してきたことは彼女よりも多いので、そういう部分で助けることができたらいいかなと思っているのと、僕自身も拠点、パートナーが変わって学ぶことが多いので、今は容量オーバーの部分もあるのですが、できる範囲内でやっていけたらと思っています」
最後に、いつかはこんなペアになりたい、との夢を話してくれた。
木原「今はまだ現役時代のメーガン達の足元にも及ばないですが、彼女たちのやってきたことを引き継いでいきたい。引き継がせてもらえたらですけど(笑)」
チームメイト、コーチ達との関係も良好なようで、三浦は遊園地に行ったり、木原はコーチと野球を見に行ったりもしているそうだ。素晴らしい環境で新たなスタートを切った2人。国際大会デビューとなるNHK杯で、今の彼らの精一杯の演技を期待したい。
中村康一(Image Works)
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