フィギュアスケート全日本選手権、最後の大舞台に臨む、引退を決めた選手達

2019年12月19日 14:23更新

東海ウォーカー

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12月19日(木)~22日(日)、代々木競技場第一体育館(東京)にて全日本フィギュアスケート選手権が開催される。1万人の観客を集める大舞台だが、出場する中には今季限りで引退を決めている選手達もいる。今回は、そんな特別な思いで最後の全日本に臨む彼らにフォーカスを当て、貴重な幼少期の写真も添えてご紹介したい。

佐藤洸彬


佐藤洸彬、東日本選手権でのショートプログラムの演技。チャップリンを演じる


独特の表現力とダイナミックなジャンプで人気を博した佐藤洸彬が、今季限りで引退する。全日本の前、最後の調整試合となった東日本選手権では思うような演技ができなかったが、練習での調子は悪くないどころか絶好調なのだという。調子が良過ぎると試合でうまくいかないのは以前からのことだが、最後の全日本ではそのようなことがないように期待したい。

「全日本までの期間、いい練習を積んで集大成をお見せできるようにしたい。4回転トウループを2本、そしてサルコウにも挑みたいです」

心の中での目標は、全日本で表彰台に乗ることなのだという。そのためには東日本よりも構成を上げて、なおかつミスのない演技をする必要がある。

現役生活の中で記憶に残っている試合を尋ねると、挙げたのが2008年の全日本ノービス。ここで2位入賞を果たしたことを契機に、注目を集めるようになったのだという。

国体は同じ県のパートナーがいないため出場できず、全日本選手権が引退試合となる可能性もあるという。練習通りの演技を、今年こそは披露してもらいたい。

鈴木潤


鈴木潤、東日本選手権でのフリープログラムの演技


北海道大学大学院で研究に打ち込みながら、スケートとの両立を続けてきた鈴木潤も今季で引退する。実は東日本選手権のショートプログラムの出来が悪く、あわや全日本に進めないのでは?と追い込まれた状況だったのだが、フリーで巻き返しを果たし、無事に全日本に駒を進めることができた。

「フリーでは何とか立て直せました。ショートの調子からして、今までの構成だと崩れることが目に見えていたので、構成を練習よりも落として今できる最大限を出そうと考えました。これで全日本に行けなければしょうがない、という気持ちでした」

東日本で取材した際、自分の演技を緻密に分析する姿はまるでコーチのようだった。以前は腰の状態が悪くて満足な練習ができない時期があったが、今は痛みがあるものの、練習はできている様子だ。

「痛み止めを使って試合に臨んだんですが、試合になったらそれは関係ないので。今、練習はできています。むしろ練習をし過ぎて、気持ちが入り過ぎて追い込んでしまい、痛みの原因になりました。でも、それがなかったら自信を持って臨めなかったと思います」

学業とスケートの両立を続けたことについても振り返ってもらった。

「勉強の方が本業なので、そちらをおろそかにしたら駄目というポリシーでやってきました。研究室でも大会でいない時期の研究について融通をきかせてもらいました。それがあるから、スケートも勉強も頑張らないと、という気持ちでやってきました」

とはいえ、想像以上につらい思いもしてきたようだ。

「逃げたくなる気持ちは、毎日でした。何でこんな苦しいことをやっているんだろう?って。でもスケートが楽しいし、こんなに自分を追い込むことって普段の生活でないじゃないですか。そういう追い込みができるのは今しかないな、と。今振り返れば楽しかったかな。僕にしかできないことをやってこれた。それは自信を持って言えます。就活でもそれを評価してもらえたり、色んな方に取材をしてもらったり、それは僕の努力が少し身になったかな、と思います」

引退後のスケートへの関わりもすすめられるという。

「今のところは考えてないですね。ジャッジとか、テクニカルとかすすめられるんですけど、僕は自分にも他人にも厳しいんで、採点したら多分酷いことになって、『また鈴木来た、あのジャッジ嫌い』と選手から言われてしまいそうなので(笑)。ただ21年間、宮城と北海道で自分なりに考えてやってきた技術を、求められたら提供したいです」

全日本では、まずは無事にショートプログラムを通過し、フリーで悔いのない演技をしてくれることを期待したい。

鎌田英嗣


鎌田英嗣、東日本選手権での演技前、長年師事した川越コーチに送り出される


本来ならば昨年で引退したはずの選手だが、スケートのために1年卒業を延ばしたエピソードは以前にもこの連載でご紹介した。いよいよ、最後の全日本を迎える。

東日本選手権ではショートプログラムで素晴らしい演技で1位となったものの、フリーでは崩れてしまった。ショートの貯金のおかげで全日本に進むことができた印象だ。

「全日本ではショートは絶対ノーミスにして、フリーは何とかトリプルアクセルを決めたい。執念で降りたい。そのために引退を1年延ばしたわけですし、それが最大の恩返しになるのかな、と思っています」

昨年卒業した明治大学の同期、梶田健登、佐上凌と会う機会があったという。まだスケートを続けていることについては「良くやるなあ」と言われたそうだ。そして東日本の2週間後、最後の調整試合として出場した都民体育大会でもコメントを聞くことができた。この時はトリプルアクセルに挑戦、ダウングレード判定を受けたものの、何とか着氷することができた。

「全日本までまだ39日あるので(毎日数えていたのだそう)、欲を言えばショートでもトリプルアクセルをやるぐらいの気持ちで臨みたい。とにかく引退までに降りたいんですよ」

目前に迫った全日本への思いを、改めて聞いてみた。

「楽しみですけど、今日の試合で恐怖心も湧き始めました。葛藤がありますね。“やりたい”という気持ちと“辛い”という気持ちと。でもぜいたくな悩みだと思います」

新田谷凜


新田谷凜、西日本選手権でのショートプログラムの演技


昨年からの不調が長引き、今年の夏の試合までは調子が戻っていなかった。それが中部ブロック以降、急激に調子を上げ、ラストシーズンにふさわしいパフォーマンスを期待できる状態になっている。西日本選手権の取材では、メンタル面も充実していると語っていた。

「去年は丸々一年間良くなくて、試合が怖い、スケートが楽しくない、という時期がありました。ただ今季で引退と決めてからは、もやもやした気持ちがなくなり、練習も楽しく滑れるようになりました。自分のペースでゆっくり戻していければ、と気持ちの面で楽になりました。調子も戻ってきて、今は充実しています」

引退後について、以前からのプランに変更はないようだ。

「引退後は、教える側もやってみたいと思っていたんですが、ひとまずスケートから離れて、社会のことを勉強してから考えたいと思っています」

とはいえいつかはスケートの世界に戻ってきてくれることを楽しみに待ちたい。フリーの“エクソジェネシス”は素晴らしいプログラムだ。満員の観客を沸かせる演技が楽しみでならない。

山田さくら


山田さくら、西日本選手権でのショートプログラムの演技


近年、さほど活躍している印象がなかった山田さくらだが、今季の充実振りには目を見張るものがある。近畿ブロック、西日本選手権と2戦続けての表彰台。特に西日本選手権のフリーは感動ものの演技だった。私も撮影しながら涙を抑えられなかったのだが、大西コーチはまさに号泣していた。あの演技を全日本の舞台でも再現してほしいものだ。

スケートを始めたきっかけを聞いたところ、14年前、2005年に代々木第一体育館で開催された全日本なのだという。「浅田真央さんの演技を観たい、と母にお願いしたのがきっかけです」。奇しくも今年、同じ代々木第一体育館の舞台で最後の全日本に出場することとなった。今年の活躍ぶりについては、「“最後”という気持ちが大きいこと」だという。

「1つ上の人たちが引退して実感が湧いてきて、私もあと1年で引退なんだと思うと、しんどかった練習も頑張ろうという気になりました」

彼女も多分に漏れず、怪我やスランプを経験してきたが、「続けてきて良かった」との思いでラストシーズンに臨めているとのことだ。

大西コーチに師事して4シーズン目だというが、「すごく親身になってくれる」と全幅の信頼を寄せる。西日本選手権では「先生に恩返しができました。フリーの後の涙を見て、先生のところに来て良かったと心の底から思いました」という。

大西コーチについて何かエピソードを、と尋ねたところ、

「私が休んだ次の日に『昨日なんでこやんかったんや。寂しかってんぞ』って言ってくる可愛い一面もある、尊敬できる偉大で大好きな先生です」

と話してくれた。

「全日本での目標は、過去に達成できなかったフリー進出です」

との控え目なコメントだが、フリー進出に留まらず、西日本選手権の圧巻の演技の再現を是非期待したい。

中村康一(Image Works)

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