フィギュアスケート、今季の飛躍が期待されるシニア女子選手【後編】
東京ウォーカー(全国版)
大きな飛躍が期待される加藤利緒菜

極めて高い潜在能力を持つ加藤利緒菜。今春、中京大学へと進学し、新たな環境でシーズンに臨むこととなった。この試合でのパフォーマンスからは、充実した練習振りと、精神面での成長を垣間見ることが出来た。
ショートプログラムの6分練習中、3トウループ+3トウループのタイミングが合わない。今までの加藤選手はこういった場合、本番でも失敗することが多かったのだが、この日はきっちりと修正し、本番では成功させることが出来た。
「普段、ショートは曲を通して練習をすることが多く、ジャンプを単独で練習することがあまりなかったんです。なので6分練習で調子の悪かったジャンプも、曲に入ったら多分できるかな、と思っていました。一度氷から上がったことで、練習を忘れて曲に入れたのが良かったと思います」
昨シーズンと同じショートプログラムだが、ステップの内容を変えたという。
「ステップは、毎週ちょっとずつ変えて、先週ようやく仕上がったところです。去年よりも大分難しいものになりました。ただ今日も曲に遅れていました。仕上がりはまだまだです。これから滑り込んでいきたい」
他の選手達が高難度の構成で挑む中、難度を落とした構成が気になったのだが、
「今日はトウループ+トウループで臨みましたが、これから先、大きな大会ではこの構成では勝負できない。なのでフリップ+トウループにする予定です」

ショートを1位で終え、迎えた翌日のフリースケーティングだったが、思うような演技は出来なかった。
「昨日と氷の感触が違いました。整氷後、3グループ目だったこともあり、氷くずが積もっている状態だったことでジャンプのタイミングが合いませんでした」
確かに氷のコンディションは悪かった。しかし同じ条件の下、優勝した新田谷選手は素晴らしい演技を披露していた。加藤選手には、そういった力強さがわずかに欠けている印象だ。それでも、昨シーズンに比べて進歩していると感じる場面があった。コンビネーションを予定していた一つ目のフリップジャンプが単発となり、ふたつ目のフリップもコンビネーションに出来なかった。そこで加藤選手は一瞬の間に全体の構成を考え、最善のリカバリー策としてダブルアクセルをシークエンスで付けたのだ。貪欲にミスを挽回しようという姿勢は、昨シーズンまでは見られなかったものだ。
「最低限のことは出来たかな、と思います。今季は同じミスはしないように、と心掛けています。ここまで3戦滑ってきて、前に悪かったところは改善してきています。今回のミスも一つずつ直していきたい」
フィリップ・ミルズの振付による“ピアノ協奏曲(グリーグ)”は、シーズン序盤の割には馴染んでいるように見える。最近、ようやく練習でノーミスが出来るようになったという。
「今、自分にできるMAXの構成で組んでいるので、それをいかにノーミスで出来るかが重要になってきます。フィリップ・ミルズ先生とは今まで4、5年、一緒にプログラムを作ってきていて、曲も自分の滑り、雰囲気とマッチしていると感じます。先生からも今までで一番良いプログラムになったと言われています。しっかり自分のものにしたい」
今季の目標について尋ねると、
「インカレで中京大学のメンバーになること、派遣の決まったチャレンジャーシリーズ、ワルシャワ大会でシーズンズベストを取って来季のグランプリシリーズに派遣されること、そしてユニバシアードへ出場すること。これらが今季の目標です。今は自分のもらった試合を一つ一つ大事にして、良い演技を続けていきたい」
ワルシャワ大会は11月17日から。その前に、中部ブロック、西日本選手権、西日本インカレがある。今季はハードスケジュールだ。
「一つずつ悪いところを直していって、ワルシャワ、全日本までには良いものに仕上げたい。今は学校の授業との両立が大変です。体を壊さないように、怪我のないようにしていきたい」
環境が変わり、初めての経験も多く大変なシーズンだが、同時に充実している印象を受けた。そのポテンシャルの高さは誰しもが認めるところ。今季こそ、大きな飛躍を期待したい。
環境を一新して今季に挑む中塩美悠

インターハイ優勝後、迎えた昨シーズンは更なる活躍が期待されたが、全日本直前に負傷、棄権を余儀なくされた。環境を一新して臨む今季への意気込みを聞いた。
「昨年の12月、全日本の前日に怪我をしました。その結果、全日本とインカレに出られませんでした。国体には出られたんですが、その後、西宮に練習環境を変えた直後に再び怪我をしてしまいました」
怪我は既に癒えたが、まだ新しい環境に慣れることで大変なようだ。
「3月中旬から林先生に指導をお願いし、今は西宮で一人暮らしをしています。練習環境が変わり、ジャンプの改造、肉体改造もしているので対応するのが大変です」
今まで力で跳んでいたジャンプを、なるべく力を使わずに跳べるように改造中だという。反り腰気味に跳んでいたジャンプを直すため、腹筋をつけるところから取り組んでいるそうだ。確かにこの試合では、ルッツの入り方が以前とは大分変わっていた。
現在は林先生、長光先生が指導してくれているとのこと。中塩選手の姉が神戸に住んでおり、遊びに行ったときに西宮の貸切練習に入れてもらったことがきっかけで移籍をお願いする決断をしたという。
ショートプログラムは昨シーズンからの持ち越しだが、フリープログラムは新作、“ラプソディー・イン・ブルー”を選んだ。振付は佐藤操先生だ。
「佐藤操先生の振付は初めて。以前から一度お願いしたいと思っていました。振付では先生は終始笑顔で、私も楽しかった。妥協しないタイプなのだと思います。難しい部分もレベルを落としてくれないので大変なところもあります。競技用プログラムとしてだけではなく、作品としての振付が佐藤操先生の特徴だと思います」

中塩選手は今季、チャレンジャーシリーズ、ワルシャワ大会に派遣されることが決まった。このサマーカップではあまり良い演技ではなかったので、怪我の影響が続いているのかと心配したのだが、「選考会に向けて一生懸命練習し、ピークにまで仕上げたんです。その反動で今は調子が落ちているだけです。シーズンに向けてもう一度仕上げていきます」と問題ない様子だった。
いよいよ本格的なフィギュアスケートシーズンが到来する。今回取り上げた選手達はもちろんのこと、多くの選手達がその練習の成果を披露する時に備えている。素晴らしい演技を多数観られることを楽しみに待ちたい。

【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】
編集部
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