原嘉孝が力士役を主演、鍛えた肉体でセンターに立つ 「もう細マッチョには戻らない!」
関西ウォーカー
演劇ライター・はーこが不定期で配信するWEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.84をお届け!
「ファンシイダンス」「陰陽師」などで知られる漫画家・岡野玲子が、1989年から90年にかけてビッグコミック スピリッツ(小学館)で連載した、人気相撲漫画『両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)』。汗と根性は少なめにロマンス多めで描かれた、ポップな相撲コメディだ。それを、歌あり、ダンスあり、笑いありの相撲エンターテインメントに仕立て上げたのが今回の舞台。相撲を知らない(だろう)若い観客たちをも熱狂させた東京公演を経て、いよいよ大阪で開幕する。東京の観客席数は50%、大阪公演は70%で上演。
ここまで来るのは大変だった。コロナ感染拡大により上演延期、さらに東京公演の約1か月前に主演が降板。あわや公演中止か!?の危機を乗り越え、カンパニーは一致団結して東京公演の幕を開けた。24ステージを無事に終え、次は大阪、さらに福岡の28ステージへ。
この公演は、明治座、東宝、ヴィレッヂの40歳前の男子3人が発足させ、次世代の劇団☆新感線を、という思いで立ち上げた“三銃士”企画の第1弾。若いプロデューサーたち、そしてキャストも新人開発をにらんだ次世代の俳優陣。「とにかくおもしろいものを作りたい」という三銃士たちの心意気に、上演を祈る気持ちだった。だからメッチャうれしい!
脚本・演出に劇団☆新感線などでおなじみの青木豪、主題歌に熱狂的相撲ファンのデーモン閣下。どう、この作品にこのセンス。おもしろくないわけないやん!キャストにも相撲好きが集まり、主演の昇龍役には「偶然にも体を鍛え始めていた」原嘉孝(ジャニーズJr.)。もとは昇龍の兄役として稽古していた原、その役を先輩・木村了に託し、カンパニー全員の思いを背負って、今センターに立つ。
23日に東京公演を終えた原は直後に来阪、三銃士の一人、ヴィレッヂの浅生博一と共に25日の取材会に臨んだ。「まず東京公演を無事に終了できたということで、今ちょっとひと安心です」というその思いと、大阪への意気込みを東京公演の舞台写真と共に紹介する。
あらすじ
力士たちの花舞台・国技館。土俵の上では、宿命のライバルの取り組みが始まろうとしている。東はソップ(やせ)型で美形の昇龍(原嘉孝)。西はアンコ(ぽっちゃり)型の雪乃童(大鶴佐助)。すべて正反対の2人だが思いは同じ。「コイツにだけは負けたくない!」。
熱戦を取材するのは、相撲取りが大嫌いな相撲雑誌の記者・橋谷淳子(大原櫻子)だった。ある日、稽古の合間に訪れたディスコ。雪乃童は密かに思いを寄せる部屋の一人娘・紗耶香(加藤梨里香)と鉢合わせするが…。昇龍はそこで大手芸能事務所の女社長・渡部桜子(りょう)の愛のターゲットとなる。勝利も美女も手に入れるかに見えた昇龍だが、桜子の歪んだ愛に翻弄されて調子を狂わせ、不調の力士に惨敗するしまつ。果たして彼は桜子の欲望に呑まれてしまうのか、さらに雪乃童との勝負の行方は?
ポスターのこと
ポスター撮影は、東京・六本木のディスコ“マハラジャ”で朝6時から。「6時からよく笑えたな、こんなに歯を見せて(笑)。でも、ほんとにポップな舞台なので、相撲が題材ですけど歌もあってダンスもあって、いろんなエンタメが入ってるので、この感じがすごくそれを象徴してるなと。このポップさがすごく舞台に合ってるなと思います」。
主役抜擢のポイント
本番まであとひと月と迫った中で主役が降板。関西で会見が開かれて5日後のことだった。プロデューサーの浅生は「僕の腹の中では、もう原嘉孝の主演でいくしかないと感じていました」と、当時の心境を話す。原とはプライベートで2年間の付き合いがあったが、仕事で組むのは初めて。しかも原は、これほどの規模の興行での主演は初めてだ。でも「嘉孝くんは、芝居もダンスも歌も覚えるのがすごく早いんですよね。その上に性格もいい。このカンパニーなら、彼を総勢100名近いキャストとスタッフが支えてくれるだろうって直感で決めて、お願いしました。作品として彼を主演にしたことは間違いなかったと思っています」。
約1か月で体を作った
「トレーニングは20年の2月ぐらいからプライベートで始めていて、それが役に生きました。ジャニーズって細マッチョなイメージですけど、そのイメ-ジが僕の性格と合わなくて、なぜかムキムキになりたいと、仕事に関係なく鍛えていたんです。コロナで時間もできて、運動しとかなきゃなというので始めました。事務所やファンの人たちからは『もうやめてくれ』『大きくなりすぎないで』って言われてましたけど、続けてて。今回役に生きたので、こういうことだぞって言いたいですね、ファンの人に。仕事につながっただろって(笑)」
体重のこと
「トレーニングジムで2月にトレーニング始めてから、7、8キロは増えました。主演に決まってからは2キロぐらい絞ったんですけど、東京公演の24回で3キロまた落ちちゃって。ずっと踊ったりしてるハードな舞台なので体重維持が大変なんです。滝沢くんからは春に『そんなに鍛えてどうするの?』みたいに言われていたんですけど、今回楽屋に来てくれた時に『仕上がってるね』っていう言葉を聞いて安心しました」
1番大変だったこと
「1か月あったので準備はいろいろできましたけど、大変だったのは相撲の所作ですね。毎日の立ち稽古前に力士役の男子が集まって、まわし一丁で1時間稽古をするんです。股割りからしこ踏んだり、いろいろな所作も教えてもらって、それを自分の体に落とし込むのは時間かかりましたね。本物の力士さんから見たらまだまだですけど」
相撲の所作指導には、元幕下力士が担当。相撲有識者会議に参加しているメンバーの1人で、今作の共演者の紺野美沙子がその稽古を見て、プロ力士になるための相撲教習所で行われる内容とほとんど変わらないと驚いていたほど。
カンパニーの良さ
「若い人が中心のカンパニーなので、稽古期間は最初から中学校2年生のようなわきあいあいとした雰囲気でやっていました。主演になってからも変わらずいてくれて。でも、やる時は皆やる、メリハリをちゃんとつける。りょうさんや紺野さん、新しく入った木村了くんとかがカンパニー全体を見てくれたので、自分の役のことに集中できました。監督みたいなキャストもいる、すごくバランスの取れたカンパニーだと思います。僕はこのカンパニーを引っ張るという座長ではなく、みんなでこの作品を支えているという意識がありましたね」
センターに立って
「初日前にメインキャスト4人と木村了くんにもメールして『いろいろ支えられました。明日からは自信を持って僕はセンターに立ちます』って伝えました。千秋楽は感動しましたね。コロナ禍の中、役の変更やいろいろ大変なことがありましたけど、キャスト陣だけじゃなくてスタッフを含めた102人全員が、絶対に成功させようと黙々と自分にできることをやっていた。その姿勢があったから、僕は本当に助けられたし支えられて、今、胸を張ってセンタ-に立てている。ありがたいですね、周りに感謝です」
仲間たちの感想
「Snow Manの目黒蓮と中山優馬くん、滝沢くんも観に来てくれました。『ずっと笑ってた』って言ってくれて、『いい作品に出会えたね』とか『いいカンパニーだね』とか、3人共カンパニーの良さがわかるって言ってくれたことがすごくうれしいことでした。優馬くんはメールで『間違いなく、お前の代表作になるな、これは』と言ってくださいました。あと、ふぉ~ゆ~の辰巳雄大くん。僕が舞台で初めてお芝居した2018年の春、仕事が決まって初めて辰巳くんに連絡して『お芝居を教えてください』と言ったところから、今でもプライベートで会っています。だから辰巳くんは、僕にとって自分のお芝居を観てほしい先輩の1位かもしれない。辰巳くんも『良かったなぁ』って褒めてくれました」
東京公演は古田新太、いのうえひでのりも観劇。「いろいろ叱られるかなと思ったけど、開口一番『おもしろかった』っておっしゃってくださったので、少しだけ安心しました」と浅生。
観てほしいところ
「僕の肉体美は見てほしいです。でも、僕だけじゃなくて、総勢24名のキャストのうち20名近い男たちが裸で、まわし1枚で歌って踊るオープニング。そんな光景は他では見られないと思います。そのオープニングから、お客さんがストーリーの中にグッとのめり込んじゃう。もう最初から目が離せないと思いますよ」
映像を多く活用した、スペクタクルと外連味満載の次世代の劇団☆新感線的舞台。新感線ファンも観に行かねば!「新感線ファンに絶対愛してもらえるような作品だって信じています。絶対、大丈夫です!」。
大阪公演に向けて
「年末年始の暴飲暴食に注意して体型を維持したいのと、あとは大阪の方と東京の方との違いがすごく楽しみで。小ネタがすごく多いので、どのネタが大阪の方のツボにハマるのかとか、今からすごく楽しみですね。僕ら、胸を張ってみんなで大阪行きますよ。東京公演では最後に舞台上からお客さんの顔を見ることができるんですけど、みんな満面の笑みで拍手してくれたりとか、スタンディングオベーションしてくれたり。あの姿を見ているので、やっぱり自分たちのやって来たことは間違いじゃなかったという自信があるので、大阪の方にもぶつけたいです、全力で。もちろん感染対策はバッチリやるので、安心していらしていただければと思います」
そしてこの先には
原「相撲という、神事であり神にささげるスポーツを年末年始にできることが、すごく縁起のいいことだと思っていて、無事、博多公演まで完走できると信じています。舞台の上には24人だけですが、総勢102人のキャスト・スタッフの思いも背負ってセンターに立っているという意識はずっと持つようにしていますし。今後、博多公演終わった先には、何か別に形に残るわけじゃないですけど、どこかに自信が持てる自分がいたらな、とは思います。僕、本当に“豆腐メンタル”なので」
浅生「うん、すぐ泣く、ほんっとに泣き虫で(笑)」
原「“豆腐メンタル”だから、自分が自信を持てるようになるには経験を積むしかないと思っているので、今回はまた一歩成長できる自分がいてほしいですね」
浅生「そう言って、けっこう生意気なんですよ(笑)」
今後のトレーニングは
「この芝居が終わってもトレーニングは続けますし、もっともっと大きくなりたいです。細マッチョには戻りたくないですね~。目指すところは…『職業、消防士?』って言われるぐらい(笑)」
■STAGE チケット発売中
『両国(りょうごく)花錦(おしゃれ)闘士(りきし)』
期間:2021年1月5日(火)~13日(水)
会場:新歌舞伎座
原作:岡野玲子(小学館クリエイティブ「両国花錦闘士」)
作・演出:青木豪
主題歌:デーモン閣下
出演:原嘉孝(ジャニーズJr.)/大鶴佐助 大原櫻子/木村了(特別出演)
入江甚儀 徳永ゆうき 岸本慎太郎(ジャニーズJr.) 根岸葵海(ジャニーズJr.)
大山真志 橘花梨 加藤梨里香/市川しんぺー 福田転球 伊達暁/紺野美沙子/りょう ほか
料金:S席12000円、A席7000円、B席6000円
問:新歌舞伎座テレホン予約センター
電話:06-7730-2222
http://www.ryogoku-oshare-rikishi.com
取材・文=演劇ライター・はーこ
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。
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