環境問題などに積極的に取り組む星野リゾートが、SDGsを前面に“打ち出さない”ワケ
東京ウォーカー(全国版)
地域の人々との信頼関係から生まれる新しい取り組み
—— こうした取り組みをおこなって、地域の方からはどのような反響がありましたか?
【福本氏】最初は必ずしもいい反応ばかりではありませんでした。たとえば、「星のや竹富島」では、住民の方々との合意形成に3年、運営開始までに2年ほどかかりました。その間は弊社代表(星野佳路氏)が何度も竹富島に足を運び、住民の皆さまと話し合いを重ねています。
しかし、実際に運営を始めて地域の方といい関係性ができると、ほかの施設や自治体に注目していただくことも増えました。その結果、より広い範囲での連携ができるようになったり、施設を超えて取り組みが広がったりすることもあります。
その1つの事例として、「界」の取り組みがあります。2021年4月から職人や生産者とおこなうご当地文化体験「手業(てわざ)のひととき」を提供していますが、これは「界」が発足して10年間、地域の職人の方々との信頼関係を地道に築き上げてきたからこそ実現したものです。たとえば「界 日光」(栃木県)では、「日光東照宮」をはじめとする歴史的建造物の修理に携わってきた女性伝統工芸士の指導のもと、日光の社寺に実際に使われている岩絵の具などを使った工芸品づくりが体験できます。

—— 宿泊客からの反応はいかがですか?
【福本氏】同じく「界」の「ご当地部屋」では、地元の焼き物の茶器を用意していることが多いのですが、見るだけではわからない、使ってみて初めてわかる魅力をお伝えできているかと思います。実際に、ホテル内の売店で茶器を買われていく方も多いですし、チェックアウト後に「もともと旅程にはなかったけれど工房に行きたい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
旅をして文化を知ることは、平和維持につながっていく
—— SDGsで設定された17のゴールに当てはまらないもので、CSVを重視しているからこそ取り組んでいる事例を教えてください。
【福本氏】「星野リゾート トマム」で取り組んでいる農業プロジェクト「ファーム星野」はその1つだと考えています。このエリアは、リゾート開発される以前は約700頭の牛が飼われていました。「ファーム星野」では、そのころの美しい原風景に戻していく活動に取り組んでいます。7頭の牛の飼育から始まり、現在は約30頭を飼育しています。

2022年までに全国10施設の開業を予定している都市観光ホテルブランド「OMO(おも)」の取り組みも、弊社ならではだと思います。「OMO」の立地は駅の近くなどの利便性の高い場所ではなく、あえて少し外れたディープなところを選んでいます。また、全国的なガイドブックには載っていないようなお店も積極的にご紹介をしています。そうすることで、その土地を盛り上げていくことにつながると考えています。

—— こうした取り組みの先に目指す社会を教えてください。
【福本氏】弊社代表の星野も申しておりますが、旅をして文化を知ることは平和維持につながると考えています。現状の活動は変わらずに続けていくと同時に、「こんな文化があったんだ!」とその国や地域の文化に気付いていただけるような取り組みをしていきたいと考えています。
—— ありがとうございました。
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