「おかえり」「ただいま」が聞こえてくる居心地のよい場所 スターバックスが担う「サードプレイス」の価値

東京ウォーカー(全国版)

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常連客でにぎわうスターバックス コーヒー イオン北千里店

高度経済成長期に、大阪府北部の千里丘陵に誕生した千里ニュータウン。昭和、平成、令和と時代の移り変わりとともに変化してきたニュータウンには、当時からこの町に暮らすシニア世代も多い。そうした地元の人々とともに歩んでいるのが、ニュータウンの北の玄関口・北千里駅前にある「スターバックス コーヒー イオン北千里店」。2003年4月の開業以来、地域の人たちの“日常”を彩る場として欠かせない場所になっている。

「家族のよう」と客の笑顔と会話が絶えない憩いの場所

バスターミナルに面して店があり、テラス席も備える


大阪中心部から電車で約30分、大型複合施設ビルを併設する北千里駅。スターバックス コーヒー イオン北千里店は7階建てのビルの1階、スーパーマーケットの中にあり、早朝から地元客でにぎわう。午前はシニア世代、午後は主婦層、夕方は近隣の高校に通う学生など、時間帯によってさまざまな世代が訪れている。

「ここへ来るとホッとする」と声をそろえるのは、見田光雄さん(79歳)と江口朗さん(78歳)。同じビルの7階にあるスポーツクラブに通う友人同士だ。お二人とも結婚後に界隈に住み始め、現在は一人暮らし。妻に先立たれてから健康のためにジムに通うようになり、こちらの店にも立ち寄るようになったという。

この町で暮らして50年以上だという(左から)見田さんと江口さん


ほぼ毎日、朝8時のオープンと同時に来店し、手を振る店舗スタッフと「おはよう」と挨拶を交わす。「量が多いと胃がもたれるから」と、ドリップコーヒーをあえてデミタスカップに入れてもらい、紙コップに水ももらうのがお決まり。そして店中央の定位置に座り、語らうのだ。ひとしきり会話を楽しんだ後はスポーツクラブで汗を流す。

オーダーは決まってドリップコーヒーをデミタスカップに


「ここに来だして4~5年かな。コーヒーを飲みながらね、スポーツ関係の話やらなんてことない世間話をするんですよ。自宅から20分ほど歩いてくるんです。いい運動やから、それで帰ってもええんやけどね(笑)」(見田さん)

「正直言うて、家を出るとき今日はしんどいなぁいう時もあるじゃないですか。でも、ここ来たら、元気もらって、それでスポーツクラブにも行けるんですよ。さぁ、これから頑張るかぁって」(江口さん)

こちらに通う理由は、居心地の良さだというお二人。

「田中店長さんはじめね、スタッフさんの人がいいんですよ。なんか家族みたいな感じなんですよ、冗談言ってもね、楽しく返してくれるし。僕らから見たら孫や娘みたいな感じやね」(見田さん)

「顔なじみも多いしね、言葉を交わしたり。わしらも含めて年寄りばっかやから、しばらく来なくなると心配になったりね」(江口さん)

店舗スタッフには親しみを込めて名前で呼びかけ、新人スタッフの成長を見るのも「うれしい」と顔をほころばす。二人の話にスタッフが耳を傾け、談笑している様子を見ていると、心の距離の近さがうかがえる。自宅で一人の時間が増えているシニア世代には、仲間やスタッフと語らうこの場所が憩いの場となっているようだ。

日常のささやかな喜びを、毎日、少しずつ、コーヒーとともに届ける

【写真】午前中はシニア世代が多いが、午後はパパママ世代や近隣の高校に通う学生客が多くなる


客にとって居心地の良い場所。それはスターバックス コーヒーが日本上陸以来提唱するサードプレイスという概念に通じる。サードプレイスとは、自宅でも職場でもない、第3のリラックスできる場所のこと。4割が常連客だという同店のストアマネージャー(店長)の田中さやかさんは、サードプレイスとしての店の存在価値を感じているという。

「大手チェーン店が減って町自体の元気が少しなくなってきているなか、話をしに来てくださってるんだなぁ…と感じる高齢のお客様がたくさんいらっしゃいます。午後は子供の送迎の合間などにほっと一息つきに来てくださる主婦の方も多いです。私たちがここにいることで、孤独にならない場所としての意味があるのだと感じています」

ストアマネージャーの田中さん。「最近いらっしゃらなかったから心配したんですよー」など、客一人ひとりの様子を見ながら声をかける


だからこそ、オーダー1つをとっても客とのコミュニケーションを大切にしている。週3、4回、ほうじ茶ラテを注文する女性客とカスタマイズをブラッシュアップしたのは印象深いという。甘さ控えめから始まり、豆乳の量や熱さを変えていき、現在は「ソイのほうじ茶ラテ、シロップ少なめ、ソイ多め、ぬるめ」の完成形が「いつもの」のひと言でわかる。

コーヒー豆は、いつ、だれと、何と一緒に飲むのか…客とそんな話をしながら飲むシーンを想像し、ともに選ぶ。2週間に1回、夫と飲むコーヒー豆を買いに来る女性客は、毎回、前回プレゼントしたコーヒー豆のサンプルの感想を聞かせてくれる。「お客様と一緒に選ぶことの楽しさを教えてくださった方」。そんなやり取りに田中さんは喜びを感じている。

パートナーの多喜さんは、見田さんと江口さんにも「はるちゃん」とかわいがられている存在


「お客様とのつながりが生まれる瞬間が大好き」だと言うパートナー(従業員)の多喜春華さんは、プレゼントを買いに来た女性客に、「うちのお嫁さんと同じ歳ごろだから」と相談を受けた。息子さん夫婦の好みを聞いて一緒にペアマグカップを選んで以来、「あぁ、あの時の!」と、店で会うと言葉を交わすようになった。

「ここに来るとホッとすると言っていただくと、サードプレイスとしての役割があるんだと感じてうれしい。横のつながりが薄くなっている社会の中で、そういう存在でありたいと思います」

多喜さんがお客のために選んだスターバックスのマグカップ


この店からは、『おかえり』『ただいま』という声が聞こえてくる。「自分の家族のようにお客様に接するというのがこの店舗の伝統です。自分たちがかけた言葉、行動でお客様の1日が豊かになる。それを意識して相手の立場に立ったコミュニケーションを心掛けています」と田中さん。

「今日、奥さんの命日でね」(江口さん)
「あれ?この前チーズケーキ買って帰らはったやん」(田中さん)
「あれは誕生日や。チーズケーキ好きやったからね。田中店長に相談して買うたん」(江口さん)
「奥さんのこと愛されているんですよね~」(田中さん)

こうした会話が日常としてあるからこそ、コーヒーだけでなく心を豊かにする時間を求めて、客が訪れているのだろう。多くの人がコーヒーとともに、誰かと共有する時間を楽しんでいる北千里店。これからも地域の変化を見守りながらともに歩んでいく。

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