実は第三勢力もいた!?20年続く「きのこの山派vsたけのこの里派」の議論が白熱するワケを明治に直撃!
東京ウォーカー(全国版)
スーパーやコンビニのお菓子売り場の定番である「きのこの山」と「たけのこの里」。子供から大人まで多くの人に愛されているロングセラー商品だが、時に人々の心に火をつけることも。それが「きのこの山派vsたけのこの里派」の議論だ。
消費者間やSNSでたびたび行われている「きのこの山とたけのこの里、どっち派?」という議論。ひとたび火がつけば「きのこのほうがおいしい!」「たけのこのほうが好き!」とつい白熱してしまうことも。そして発売元である株式会社明治(以下、明治)も、ファンの熱い愛をさらに加熱させるべく、2001年より「きのこ党」「たけのこ党」と分かれての“国民総選挙”を行うなど、激しい派閥争いを繰り広げている。
かわいいフォルムとは裏腹に切磋琢磨して互いを高め合い、しのぎを削っている「きのこの山」と「たけのこの里」だが、なぜこんなにも議論が盛り上がるのだろうか。そして何より、発売元である明治はこの議論についてどう思っているのだろうか。今回はマーケティング担当の船山慶さんに、論争が始まったきっかけや現時点ではどちらのほうが人気なのか、そして社内ではどのような意見があるのかを聞いた。
誕生秘話と自然発生した「どっち派?」問題
きのこの山が生まれたのは1975年。同じく明治のロングセラー菓子「アポロ」を作っている工場で、たまたま従業員がアポロにカシューナッツを刺して、キノコ状のお菓子の試作品を作ったのが始まり。そこから試行錯誤を繰り返し、5年の歳月をかけてできあがったのが「きのこの山」だった。
そして4年後の1979年に、兄弟ブランドとして「たけのこの里」が発売。きのこの山は柄の部分にクラッカーが使用されているのに対し、たけのこの里は根本部分がクッキー生地で作られているのが大きな違いだった。
「この2つが発売された当時は高度経済成長期の真っ只中でした。そんななか日本人がふるさとを思い出せるような、里山の風景がコンセプトになりました。また『キノコ』『タケノコ』は、昔から日本に馴染みがあるというのも理由です」
「日本を代表するお菓子になってほしい」という明治の思いが込められた2つのお菓子は、どちらも発売後すぐに大ヒット。明治のトップブランドとして君臨することになった。発売以来お菓子売り場にいつも隣同士で並んでいる「きのこの山」と「たけのこの里」だが、それが要因なのか、いつしか消費者の間で「きのことたけのこ、どちらのほうが好きか」という議論がされるようになっていたという。
「このような議論はお客様の間で自然に生まれたように感じています。それを受けて当社では、2001年には『きのこ党』と『たけのこ党』を結成し、それぞれが人気を競う『きのこ・たけのこ総選挙キャンペーン』を実施しました」
激しい選挙戦の結果、勝利を果たしたのはたけのこ党。2002年には負けたきのこ党による「追い越せ『たけのこの里』きのこの山100万人党員募集キャンペーン」が開催されるなど、きのこ党・たけのこ党の派閥争いはこの頃から熾烈を極めるようになった。
どっちが好き?地域差よりも年齢差にあり!
公式としては2001年に始まったきのこ党・たけのこ党の派閥争い。2018年に行われた2回目の国民総選挙では、前回に引き続きたけのこ党が勝利。翌年の2019年にはきのこ党がおよそ146万票もの大差をつけて初勝利を飾った。
しかし2020年に行われた「きのこの山たけのこの里国民大調査・愛こそニッポンの元気プロジェクト」では「どれだけ好きか」という愛の深さを測る調査になり、「どちらが好きか」という両党の戦いは一時休戦となった。
「これまでは『きのこ党』と『たけのこ党』に分かれて戦っていたのですが、コロナ禍で世界中が大変になっているなか『争っている場合じゃない』と思い、それぞれの愛を確かめ合う調査になりました。ちなみに2020年には国勢調査もあったので、それにも乗っかりました(笑)」
日本全国からアンケートの回答が集まり「日本で最もきのこ愛、たけのこ愛の量が多かったのは千葉県」、「47都道府県のうち、福島県以外の46都道府県でたけのこ愛がきのこ愛を上回った」という結果に。全国的な偏差はあまり見られず、トータルでたけのこの里が僅かに人気が高い、ということがわかった。
というのも、きのこの山とたけのこの里、実は好みが大きく分かれるのは地域の違いではなく年齢差という説もある。きのこはチョコレートが少しビターで柄の部分が軽めのクラッカーなため、40代以上によく好まれる傾向にあるという。逆にたけのこはチョコレートが甘めでクッキー生地のため、子供から20〜30代くらいの若者がたけのこを好むことが多いそうだ。
「きのこは昔からの熱狂的なファンが多いです。たけのこはどちらかといえば間口が広く、チョコレートの選択肢の1つとして買われる傾向があります。いわゆるライトなファンが多いイメージですね。そのため、売上はやたけのこのほうがやや大きいですが、きのこは1人の方にごっそりとまとめて買われることもよくあります」
きのこ党員の中には「うちは代々きのこしか食べません」「たけのこなんて認めない」という過激派もいるという。マニアから根強い人気を誇るきのこと、子供から大人まで幅広く愛されるたけのこ。それぞれ支持層が違うからこそ、国民総選挙や論争が白熱すると言える。
また、きのこたけのこの派閥争いは明治社内でも行われている。社長をはじめ経営層はきのこ党が多いが、会社全体での党員数ではたけのこ党が多いんだとか。その大きな理由としては年齢層の高さが関係していると考えられている。また、社員間でもよく「どっち派?」という話題が持ち上がるそうで、社員は1人1枚「党員証」を所持している。
ちなみに社内での通称名は「きのたけ」。きのこの山・たけのこの里を縮めたこの呼び方は社内での会議などで連発されるという。船山さんは「たけのこを認めないきのこ過激派には『同列に扱うな!』と許しがたい呼び名かもしれないですね(笑)」と話す。
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